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「無口な二人」

「ガイト様ってすごいのね」

「ガイト君、先輩達とも仲良くなったんだ」

「対抗戦でお世話になったからな」


 先輩達がいなくなるや否や女子生徒に囲まれる。どうやら先輩達は寮は違えど憧れの的のようだ。


「まあまあ、それより先輩達は来てくれたけどそれだけじゃ変わらない。とにかく呼び込みに行ってくる」

「……その前に、さっき先輩に出した半分のミニサイズを作ろうと思うけれど……どう? 」


 ディーネの提案に女性陣が賛成の声を上げる。やはり小柄ということは余り量が食べられないのだろう。


「じゃあ、それも込みで宣伝してくる、オレ一人で」


 念のため最後のを強調して屋上から移動しようとした時だった。


「ここで合っていたようで良かったよ」

「本当ね」

「うむ、先程炎が上がったときは何事かと思ったが……」

「ご無沙汰しております」


 今度は学園対抗戦を共に戦った二期生のアローさんにヘルガさん、アントーンさんだった。だが、一人足りない。


「ヴィルゲルさんは……」

「彼は、ちょっと急用ができたようでな」

「本当は皆で来たかったんだけどね」

「そういえば、二期生は収穫祭の間は何をなされて」

「申し訳ないけれど、もうすぐ修学旅行だからね。その準備ってことで何もしてないんだ」


 修学旅行、どこかに数日遠出するようだ。そういえば二期生になるとあるらしい。


「そうでしたか、楽しんできてください」

「ありがとう、それじゃあ三つお願いするよ」

「ありがとうございます」


 踵を返し屋台に戻ると注文を伝えた。


 ~~

「美味しかったよ、ありがとうガイト君」

「フランベも良かった」

「優勝間違いなしだよ、期待してるね~」

「ありがとうございました」


 三人が帰宅した後、再び屋上から出ようとした時だった。同期の男子達とぶつかる。


「いてて、なんだどうした? 」

「どうしたも何も交代の時間だから来たんだが……」

「もう? 」


 早いものでもう交代時間のようだ、その間売り上げは六……いや実質五人分というのはよく考えても少ない方だろう。とはいえ、呼び込みに専念できるとなるとこれはこれで良かったのかもしれない。


「それじゃあ、後は頼む」


 引継ぎを終えるとやってきた男子達に代わって屋上を後にした。


「それでこのあとは……」

「皆で回ろう! 」


 女子生徒の一人が声を上げる。


「いや、宣伝をすることを考えると少数で動きたい」


 正直、こんなに女子引き連れて歩くのは落ち着かないし……

 と心の中で呟く。


「……なら、バディで動くのは? 」

「それで行こう」


 ディーネの提案に即乗っかる、何だかんだディーネと二人きりなのが一番動きやすい。


「そんな~」

「またね……」

「やっぱりディーネちゃんかあ」


 残念がって手を振りながら離れていく彼女達を見て心が痛むも今のオレの目的は優勝だと自分に言い聞かせ耐える。


「それじゃあ、宣伝がてら偵察を兼ねて他の屋台を見に行こうか」

「……うん」


 ディーネが頷く。話は決まった。オレ達は屋台のある正門へと向かった。


 ~~

 先生方が体験教室や学園三期生の模擬戦が行われているステージを通り過ぎ正門に辿り着く。三色の垂れ幕と本来オレ達の屋台があるべき場所であろう所に設置された簡易的な飲食ブースとともに並べられた屋台にはそれぞれ数名程の列が形成されていた。

 ここで宣伝……は流石にやめた方がいいよなあ。

 自重して代わりにディーネを見る。


「どこから並ぶ? 」

「……良いの? 」

「何も食べてなかったし仕方ないだろ、楽しまないと」

「……分かった、じゃあガイアから」

「了解」


 答えるとガイアの列に並ぶ。ガイアと言えば大地、地面、それを連想するメニューと言うと一体何なのだろうか?

 考えているうちに列が進み解答が出現する。

 ハン・バーグとポ・テトを販売していた。いつか食堂でみたメニューだ。オレ達とは異なり寮の特性メニューで勝負と言う訳か。


「はい、いらっしゃい……あ」


 ライバルが来るのは嫌なのかオレの顔を見た接客担当の女子生徒が目を見開く。


「しまった、上着は脱ぐべきだった」

「天下の光の剣士ガイト君はそれでも無駄ですよ」

「じゃあ、ディーネに二つ任せれば良かったのか」

「それも多分不可能かと」


 ……難しいものだ。


「とりあえず、二つ」

「はい、少々お待ちください」


 そう答えると彼女はキャーと声を上げて引っ込んでいった。


「おいおい、後ろに人が……」


 振り返ると背後に人は誰もいない。休憩時間になったのだろうか?


「……お待たせ」


 程なくしてイワンが皿に乗せて二つのセットを持ってくる。


「イワンって料理できるんだな」

「……まあ、少しは」

「凄いな。そうだ、彼女はディーネ。確か初めてだったな、それでこちらの店員がイワンだ。静かな奴なんだ」

「……宜しく」

「……よろしく」


 紹介を受けた二人が挨拶を交わす。

 二人とも静かなタイプだ。どんな会話をするのだろう?

 ふと気になり口を閉じること数分。


「…………」

「…………ごめん、お客さん来たからまた」


 会話はなかった。去り行くイワンに「またな」と手を振る。そういえば、ディーネは人見知りだった。

「悪かった、急に黙ったりして」

「……ううん、私こそせっかく紹介してくれたのにごめん、喋れなくて。でも、ガイトが彼と仲が良いのは知らなかった」

「ああ……え……ん? 」


 そう言えばオレもイワンとは二言くらい喋っただけのような……まあ向こうも話してくれたしいいか。

 自分でも予想外だったがそうプラスに考えると食器を手に取り席を探した。

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