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「チームプレー」

 五人並び目の前のケルベロスとヘルソルジャーに向かい合う。激闘が起こると告げるように風が吹き左右の木がざわざわと音を立てる。


「よし、チームプレイだ! 上から冷静にこちらの動きを読まれるのは良くねえ。まずは奴とケルベロスを離すぞ」

「「「「了解! 」」」」


 ウォルバーストさんの号令に倣い左右に散らばるのを見てドラゴン戦と異なり鎖は付いていないが連携は経験したので大丈夫だろうと確信し光の翼で空に上がり機会を(うかが)う。ヘルソルジャーばかりか皆のソウルも消してしまう以上、まずはこうして邪魔にならないようにヘルソルジャーよりも高い視点から相手の手の内を見るのがオレに出来ることだ。


「『フォースフリーズ』オラァ! 」

「『サモンロック』ふんっ! 」


 ウォルバーストさんがヘルソルジャーの剣を受けシェスティンさんがケルベロスの頭を引き付けている間にアントーンさんがケルベロスの前足に岩を出現させると同時にヴィルゲルさんが後ろ足を凍らせる。


「よっしゃァ」

「なるほど、幼い割には出来るようだ。だが……ふん! 」

「やらせるか! 何! ? 」

「嘘でしょ……」


 カバーに入った二人が愕然とする。男はウォルバーストさんを掃ったばかりかケルベロスの凍らされた足を切り裂いたのだ。


「これで動けるだろう。そして、諸君、怒りに燃える我がペットは手強いぞ」


 ケルベロスは解放された脚を蹴り上げヴィルゲルさんに血をかけると出現した岩を踏みつぶし三人の元へと突進する。


「終わりにしよう」


 ヘルソルジャーの大剣が邪悪なオーラを纏う。以前は鎧にして守りに使用していたがそれを剣に纏うとは。あれを食らったらどうなってしまうのだろうか……

 背筋がゾッとして彼等目掛けて空を駆ける。

 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


「……さらばだ『エターナルダーク』」

「いや、それはどうかな『フレイムスラッシュ』」

「ええ『マキシマムストーム』」


 シェスティンさんが巨大な竜巻を繰り出すと同時にウォルバーストさんも炎の剣を振るう。するとたちまち巨大な炎の竜巻がケルベロスを襲う。だが、恐ろしいことに黒焦げになりながらもケルベロスは三人に突進をしてきた。

 ケルベロスの突進を三人が右側に避けたのを見越して体を捻ると剣を振るう。

 ……間に合え!

 彼の剣が三人に触れる直前、なんとか間に入ったオレは三人を抱えると宙に上がった。


「ほう、先程より速いか」


 背後から見上げながら呟く。


「すまない、なんて生命力だ」

「ええ、危ないところだったわ」

「ありがとうな」

「いえ、このために一人浮いていたようなものですから。それより……」


 眼下を見下ろすとそこには先ほどまで森だったはずの場所が一部抉り取られて荒野になっているのが写る。


「なんてやつだ。あれを喰らったら一たまりもないな」

「ええ、どういう理屈かは分からないけれどケルベロスにはともかくさっきの竜巻は剣で防がれてヘルソルジャーには届いていなかったわ」

「森が消された。あのソウル……となるとアレしかないか」

「ウォルバーストさん? 」

「ああ、すまねえ。だが奴を倒せるかもしれない策が浮かんだ。とにかく急いで下ろしてくれ、ヴィルゲルがあぶねえ」

「落としてくれて構わないわ、着地は何とかするから」

「でもそれでは着地時を狙われて……そうだ」


 発想の転換だ。三人には悪いが囮になって貰えば良い。三人にそう説明をする。


「なるほど、やるようになったじゃねえか」

「今更疑うほどの実力でもあるまい、ワタシの命は預けたぞ」

「万が一失敗したら呪ってあげるから覚悟なさい」

「ありがとうございます」


 礼を言うと共に三人を離すとみるみるうちに小さくなっていくのを横目に全速力でヘルソルジャーの背後へ回ろうと移動を開始する。


「ほう、確かあの娘が風を操っていたな。とはいえ着地の時は動きが鈍るためそこを狙われるのは自明の理。仲間を見捨てるとは……いや、これは……そこか! 」


 なんという鋭さだろう。早くもオレ達の作戦に気が付いた。ヘルソルジャーが背後を振り向き目が合う。


「もうバレたか、でも終わりだ」

「『フレイムスラッシュ』」

 ウォルバーストさんとシェスティンさんが再び斬撃に炎を纏わせ放つ。そうだ、これこそがこの作戦の真骨頂! 作戦に気付かれようがどちらかに対応するしかないので防がれようがないのだ。


「どうかな」


 考えを見透かしたようにヘルソルジャーは口にするとケルベロスから飛び降りる。


「行ってこい! 」


 言葉のままにケルベロスが炎の斬撃に向かうと強力な炎を吐いた。

 炎! ? しまった、今まで隠していたのか。


「さあ、これで一対一だ、来い! 『エターナルダーク』」

「上等だ! その剣をへし折ってやる! 『ライトニングスラッシュ』」


 速度を緩めずに突撃する。残念ながら途中で翼を消して無効化の方を使うなんて器用な切り替えは検証しても出来なかったけれど問題ない。真っ向勝負だ!

 キィィィンと音を立てて剣がぶつかる。ここからはソウルの勝負、ということは意志の勝負だ!


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 」

「お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお……こ、これほどとは……」


 オーラを纏ったヘルソルジャーの剣が激しく揺れる。あと少しで押し切れる、そう思った時だった。


「……だが、残念だ」


 バキン! と音を立てて剣が折れる。

 ……え?


「その気迫に剣は付いてこれなかったようだ」


 ……嘘だろ、死ぬ! ?


「安物で宜しければ……」

「安物で宜しければ……」

「安物で宜しければ……」


 走馬灯のように脳内に剣を貸してくれた御者の言葉が浮かぶ。

 ……安物じゃ宜しくなかった。


「さらばだ」


 ヘルソルジャーの声が響いた直後背後に激しい激痛が走りディーネ、ウォルバーストさん、アローさんと次々と人々の顔が浮かぶ。

 ……すみません。

 最期にあの人の顔が浮かびオレの意識は途絶えた。

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