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「ドラゴンとの戦い」

 大歓声の中、薄暗い会場選手入場口で出番を待つ。どうやら経済的に優しいことで凍らせたドラゴンを使い回すらしく現在解凍作業中とのことだ。


「しかし、ドラゴンとはなァ」

「去年のタイガーが可愛く思えるな」

「それで、ウォルバースト君。何か策はあるのかしら? 」

「そうだな。ガイト、一つ聞きてえんだが」


 先輩達に急な流れで話を振られ驚く。


「なんでしょうか? 」

「……あのドラゴンを倒せるか? 」

「はい? 」


 耳を疑った。今彼はオレに倒せるかと口にした。三期生の彼が一期生のオレに。間が生まれる。突然彼がニコリと笑い冗談だと言うことはなかった。どうやら本気のようだ。それならば、オレも本気で答えなければならない。


「倒せます、口さえ開いてくれれば」

「わかった」


 彼がそう答えたところで声が響き渡る。


「それでは選手入場です」


 その声に従いオレ達は会場へと向かった。

 グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

 巨大なドラゴンの雄たけびがオレ達を迎える。観客席で見ているよりも凄い迫力だ。しかし、怯むわけにはいかない。剣を握る手に力を籠める。


「それでは、試合開始」

「よし、作戦を説明するぜ。まずは出方を見るために皆で立ち向かう」

「「「「了解! 」」」」


 良く分からないけれど他のメンバーが答えたので負けじと力強く答える。直後、ドラゴンが大きな前足で踏みつぶそうとしてきたので避けながら散らばった。

 今のオレにできることはいつでもトドメをさせるように分析をすることだ。その中でもオレの戦法の邪魔になるのは本で見たように炎を吐かれることだが、このドラゴンも本を吐けるのか? それを確かめる必要がある。


「はあっ! 『サモンロック』」


 アントーンさんがドラゴンの後ろ脚の下から岩を出現させドラゴンの足場を崩そうとするもドラゴンが力を籠め踏み止まるばかりか尾を振り彼を潰そうとする。


「危ない! 」


 光の翼で救援に向かおうとすると彼と目が合った。「手出し無用」とそう告げていた。次の瞬間、巨大な岩が彼とドラゴンの尾の間に出現する。尾は勢いよく岩に激突したが崩れることはなかった。

 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

 相当効いていたのだろう、ドラゴンが悲鳴を上げる。


「『フレイムスラッシュ』」


 その直後、ウォルバーストさんが炎を纏った剣でドラゴンの前足を切り裂いた。再び悲鳴を上げるドラゴン。しかし、ここまで追い詰められても炎を吐く気配はない。ということは……


「ガイト! こいつが炎を吐く心配はなさそうだ。合図を出したら突っ込めえ! 」


 ウォルバーストさんが叫ぶ。「はい」と答えると同時に光の翼を出現させて宙に舞う。


「な、なんだありゃ」


 観客席から驚きの声が上がった。しかし、パフォーマンスをする余裕はない。加速のために数メートル程距離を取るとドラゴンを見つめその時を待つ。


「今だ! 」


 再びウォルバーストさんが叫ぶのを聞いて加速を始める。しかし、その瞬間、バリン! という音とともに後ろ足に繋がれていた鎖が外れた。ドラゴンと共に凍らせられたとに温められる急な温度変化に耐えられなかったのだろうか?

 すかさずドラゴンが空中のオレを迎撃すべく翼を動かす。しかし、羽ばたくことは出来なかった。後ろ足片方が凍っていたのだ。


「やれやれェ、ガラにもなく大人しくしていて良かったぜェ……ってやべェ」


 ドラゴンが足を確認するために頭を後ろに向けたのを見てヴィルゲルさんが慌てる。

 このままだとオレはドラゴンの首に勢いよく激突してしまう。仕切りなおすべきだろうか?

 疑問が頭をよぎる。しかし、その疑問をすぐに頭から振り払った。今のオレに出来ることはチームメイトを信じてトドメを刺すことなのだから。加速はやめない。


「任せなさい『エアスラッシュ』」


 シェスティンさんが剣を一振りさせて斬撃を放つ。その一撃でドラゴンの頭はオレの正面に戻った。それを確認したウォルバーストさんがジャンプしドラゴンの頭に思いきり剣を振る。

 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

 再びドラゴンが悲鳴を上げるべく大きく口を開けた。


「行け、ガイトおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

「『ライトニングスラスト』」


 その声に応えるべく最大速度でオレはドラゴンの口の中に入り込むと思いきり剣を突き刺す。

 グオ……グオ……オオ……

 最期にそんな悲鳴を残すとドラゴンは力なく倒れた。


「き、決まったああああああああああルドラ学園、何とドラゴンを倒してしまったあああああああああああああああああああああ」


 司会の驚きの声とともに歓声が響き渡った。

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