「学園対抗戦開幕」
「……ガイト、起きて」
突然声が響き渡る。ディーネ? いやディーネがここにいるはずが……というかここはどこだ……?
頭が回らない状況でうっすらと目を開けると飛び込んでくるのは見慣れない天井と見慣れたディーネの顔。
はて、オレはまだ夢を見ているのだろうか?
もう一睡、と瞼を閉じようとしたところでディーネの口が動く。
「……学園対抗戦、遅刻する」
「学園対抗戦! ? 」
たちまち脳が覚醒する。そうだ、オレはホテルに泊まっていて今日は学園対抗戦当日だ。こんなこともあろうかと制服のまま眠っていたので自前の剣がないため昨日借りた剣を腰に差すと素早く部屋を出ようとして立ち止まる。
「何でディーネがここに? 」
「……昨日の夜遅くに到着して、さっき先生に起こしてくるように頼まれた」
合点がいった。寮だと異性の棟に行くのは原則禁止でこうはいかないからな。
「……皆、観客席で応援しているから頑張って」
「おう! 」
ドアに手をかけながら力強く答えた。
~~
開会式が終わり試合へと移る初戦の場所は第一修練場とあるコロシアムだった。先行と後行があり後行となったオレ達は一番前の席で試合を観戦することになった。
「それでは選手入場! 」
大歓声とともにノーブル学園の五人の選手が入場して数メートル上にある観客席よりも空に高い十メートル程ある壁を睨みながら剣を構える。そこには昨日煽ってきた二人の姿があった。
しかし、背丈は五人中トップを争うのと一番右側に陣取っていることを考えるとあの二人は……
「ウォルバーストさん、あの二人ってもしかして」
「ああ、三期生だ」
予想が当たり愕然とする。あんな態度の人が三期生とはノーブル学園の生徒とはあまり仲良くできないかもしれない。
「それでは、ルドラ学園とノーブル学園の指輪をかけた学園対抗戦、その初戦を飾るのは……この生物との戦いだああああああああああああああ! 」
司会の叫び声と共に壁が徐々に沈んでいき中の生物が姿を現す。それは鎖につながれながらも圧倒的な迫力を放つ鱗に覆われた強靭な体に恐ろしい牙を持った巨大な生物……ドラゴンだった。
「ルールは簡単、両学園の生徒達がそれぞれ二体のドラゴンと戦い倒すか全滅するかを競います。両チームとも撃破した場合は試合の内容で評価、ギブアップをするときは出口に入り試合放棄をすることもできます」
一応鎖で動きが制限されているとはいえドラゴンが相手とは完全に予想外だが、驚いている暇はなく間髪入れずに淡々とルールが説明される。
「それでは、試合開始! 」
グオオオオオオというドラゴンの雄たけびとともに試合開始が宣言される。とはいえ、いきなりドラゴンを見せられて戦ってくださいといわれて戦えるだろうか?
そんなオレの心配とは裏腹にノーブル学園の生徒達は示し合わせたかのように五人がそれぞれの位置に着いた。どうやらオレ達の制服とは異なり彼らはズボンの色がソウルの属性となっているようで水色のズボンの三人が背後に回り氷で地面伝いにドラゴンを凍らせている。それを援護するかのように緑のズボンの二人は正面から斬撃を放ちドラゴンの気を逸らしていた。
そうして戦うこと数十分、遂にその作戦が実りドラゴンは首以外が凍ってしまい動かなくなる。
ギ、ギ、ギァァァ……
そんな断末魔の叫びと共に遂にドラゴンは全身が凍結して動かなくなった。
「お見事、我らがノーブル学園が誇る代表達が見事にドラゴンを捕獲したあああああああああ! 」
司会の声とともに歓声が上がる。
一期以外はバランスよく代表をソウルに入れなければならない中、内容を予測していたのか偏った戦力で戦法を組み立て成功させるのは悔しいが実力は本物のようだ。
「さあ、次は俺達の番のようだな」
ウォルバーストさんが立ちあがる。
そうだ、感心している場合じゃない、次はオレ達の番なんだ。
気を引き締めながら彼に倣い立ちあがった。




