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「親子の再会」

 ガラガラという音が大きくなり音の正体が判明する。それには思わず面食らった、馬車は馬車でも一台ではなく三台だったのだ。一台の店員が六名として最大十八体のヘルソルジャー、これは流石に四人ではお手上げなので味方だと信じたくなる。そんな祈りが通じたのか馬車の窓から見慣れた顔が姿を現す。


「お~~い、ガイトく~ん、ディーネちゃ~ん、ジェシーちゃんにフウトく~ん」


 寮長だった。彼女が陽気に手を振っているのが目に入り剣を下ろす。どうやら助かったみたいだ、と安心していると馬車が目の前で止まり寮長がオレ達に駆け寄ってきた。


「寮長、どうしてここが? 」

「目を覚ましたメイソン先生からよ。彼女も行くって聞かなかったから眠ってもらったけれど……」


 さらりと恐ろしいことを口にする寮長、先生が気の毒に感じるも初激はオレなのだからあとでもう一度謝ろうと心に誓う。


「代わりに学園にいた先生達にも来ていただいたの」


 彼女が馬車から出てきた人達に視線を向けたのでそれに倣うと彼女の言う通り見慣れた先生達の姿があり会釈をする。


「皆無事で本当によかったわ。もしかしたら……なんてことを考えると居ても立っても居られなかったのだけれど流石は本職の剣士達ね、カルロス君にもお礼を言いたいのだけれど彼はどこかしら? 」


 キョロキョロとする彼女を見て言葉に詰まる。まだ彼女の中でカルロスさんは生きている、それを思うとずっと黙っていたい気持ちだった。しかし、もう少し探索をすればバレてしまうものなので覚悟を決めて口を開く。


「違うんです寮長、全員無事ではなくて。オレ達以外は……」


 寮長の顔が曇る。


「……何があったの。話してみて」


 優しく口にする彼女にオレは今までのことを話した。


「……そう、大変だったわね。カルロス君が……」

「はい、それで今から埋葬に行こうかと」

「その心配はいらないわ。これだけの人がいるのだから後は任せて、二人はあの女性と一緒に送ってもらって休んでね」

「二人? オレ達は四人ですが……」


 言いながら後ろを振り向くとそこにはディーネの姿しかなかった。おかしいなと周りを見回すとそれぞれ担当の先生であろう人にこっぴどく叱られているようで縮こまっていた。


「安心して、二人の担当はメイソン先生だから。私はそういうの苦手で……」


 寮長が申し訳なさそうに口にするも苦手な方が有難いのでは、と錯覚するくらい恐ろしい表情をしたメイソン先生の姿を想像し身震いする。二人の説教内容は出撃許可がオレだけにしかないのに付いていったことらしいけれどオレは当身なんてしてしまったため無事では済まないだろう。


「そういうことだから、彼女のことはお願いね」

「はい」


 返事をしディーネと共に馬車に乗り込むと話を聞いていた御者が直ぐに馬車を出発させてくれた。

 すっかり日が沈み暗くなった道を視界に入れる、同じ道なのに景色が違って見えた。


 ~~

 長い馬車での旅が終わりアルジャーノンさんの酒場前で馬車が停止した。まだ営業中の用で店の中からは賑やかな声と明かりが漏れている。


「着きました、この建物に見覚えはありますか? 」


 扉を開き尋ねると彼女は目を見開いた。


「はい……覚えています……私の家……」

「では、どうぞ。後で騎士団の人がお話を伺いに来るかもしれませんが、その時は正直に覚えていないとお答えください」


 そう告げると彼女は不安気にオレを見上げる。


「私、何年も経ってしまったのに……信じてくれるでしょうか? 」

 ハッとする。盲点だった、元の彼女は知らないけれど子供のころから十数年、一切姿が変わっていないというのはもしかするとアルジャーノンさんも信じないかもしれない。


「同行させて頂きます」

「はい……ありがとうございます」

「悪いけど、ここで待っていて、いや寮まで帰っていてもいいぞ。オレは歩いてでも大丈夫だから」


 ディーネに声をかけると彼女は首を横に振る。


「……ううん、待ってる」

「分かった」


 踵を返して馬車を降りると店の中へと入る。当然、アルジャーノンさんと目が合った。


「いらっしゃい……てガイトか? 店に来いとはいったが速すぎるぞ。なんでえこんな時間に異性と歩き回るなんてそんなことじゃこの先も知れて……」


 不意に彼が言葉を切る。視線はリラさんに向けられていた。


「あの、彼女は……」

「リラ……か? 」


 耳を疑った。今彼はこの女性がリラさんだと見抜いたのだ。


「お父さん! 」


 その言葉を合図に彼女が抱き着く。父もそれを迎え入れた。


「すまねえな、こんなに年食っちゃってよ」


 彼は娘を抱きしめながら視線をオレに向ける。


「ガイト、取り戻してくれたのか? ありがとうな、本当にありがとうな」


 正直、オレのやったことは正しかったのか? 真実を伝えた方がいいのではないか? とここに来るまで何度も考えた。けれど涙ながらに感謝を伝える彼を見て、これで良かったのだと思った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これは良い結末。 親子が無事に再会できて良かった!
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