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「学食での再会」

  眠れはしなかったものの痛みが大分治まってきたので救護室を出ると先ほど昼休憩を告げる鐘がなったのを思い出し食堂へ向かう。今まではトーナメントが午前前に終わっていたため縁がなかったものの基本は昼休みは食堂で食べることになる。この食堂はオレにとっては楽しみなもので何と他の寮のメニューも注文することができるのだ。

  首尾よく列に並ぶと前方にでかでかと書かれたメニューを眺める、フレイムからは辛さを抑えたピリ辛鍋、ガイアからはガイアハン・バーグにチップス、ウィンディからはたっぷりのサラダにロー・ストビーフが入ったパワーサラダ、ブリザードからは具材たっぷりの冷やし麺、どれも美味しそうだ。


「どれにするかなあ」


  悩んだ末にパワーサラダに決定する。そしてふと並んでいる人が多いことから席がどうなっているのかが気になりテーブルを眺める。問題はなさそうだ。席には既に座っているものに加えてここに並んでいる生徒全員が並んでも余るであろう程の長テーブルと長椅子が四か所に設置されていた。ディーネの姿を探すも前方には見当たらない。もしかすると奥の方で女子に囲まれて食べているのかもしれない。

  ならわざわざ見つけても気まずいな。いや、そもそも一人できてその場で一人でいる知り合いを見つけるというのが奇跡的だ。

  などと考えて注文したパワーサラダを受け取ると不意に背後から肩をトントンと叩かれ振り返る。そこにはフウトが立っていた。


「久しぶりだね」

「ああ、本当に。入学試験以来か、しかし緑だな」


  言葉通りで彼は手に持っているトレーとピリ辛鍋を除き緑髪にウィンディのクラスを示す緑色の上着と上半身が緑尽くしだった。


「はは、まあね。よく言われるよ」

「ウィンディの首席としては正しいのかもな」

「やめてくれよ」


  恥ずかしくなったのか声が上擦っている。首席というのに確信はなく予想にすぎなかったけれど反応を見るに的中していたようだ。「首席おめでとう」と称賛の言葉を贈ると手短な席に着席する。


「そういう君も、光のソウルなんていうのが目覚めたそうじゃないか」

「まあ……一応な」

「それで、勿論クラス対抗戦に出るんだろ? 楽しみだよ」

「あ……いや……まあ……」


  目が泳ぐ。

  流れから彼はその髪色に恥じぬ成績から代表にも選ばれたのだろう。でも、オレは……。

  言うべきか言わざるべきか。

  一瞬の葛藤、しかしここで誤魔化してもいずれ判明することでその時にあの思わせぶりな態度は何だったのかと思われるのも嫌なので正直に話すことにした。


「代表は、オレじゃないんだ」

「なんだって! 」


  余程意外だったのか彼がガタンと音を立て突然立ち上がる。その音で大勢の生徒の視線が彼に集まる。それを感じたのが彼は気まずそうに周りに微笑むと落ち着いて座りなおした。


「いや、すまなかった。でも、君が代表じゃないというのはどういうわけだい? フレイムにはクラスの代表なのだから実力があっても光のソウル使いは出さないという頭の固い奴しかいないのかい? 」


  その頭の固い提案をしたのはオレなんだ。

  思わず体を縮める。彼は他にもオレを想ってか憤慨した様子で色々と口にするも実際のフレイムの人々とはかけ離れていることが多く気恥ずかしくなる。


「違うんだ」


  余りの恥ずかしさに耐え兼ねて口を開く。


「え? 」

「オレは…………負けたんだ」


  そう告げると彼は信じられないという顔をして固まった。


「今朝、代表を賭けた試合をして、オレは負けた」

「…………そうか、まさか君が負けるなんて」

「凄い強いのがいてさ、参ったよ」


  ディーネを思い浮かべながら言う。実際に隙を見せたとはいえそこを突けたのは彼女の実力なのだ。気の毒そうにオレを見つめる彼に向かい微笑む。


「客席から見せて学ばせてもらうよ。それと……オレの仇を取ってくれよな」


  冗談交じりに付け加えると彼は首を縦に振り力強く言う。


「任せてくれ」


  彼は覚悟を決めたように鍋の中のフォークを突きさすと口に入れた。

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