「予想外の結末」
「勝者、ディーネ」
先生が宣言するとともに歓声が上がり生徒達がディーネに群がる。その様子をボーっと眺めながら何が起こったのかを改めて把握する。
……オレは、負けたのか?
その事実を知るのに数秒もかからなかった。悔やむべきは一瞬の隙、いやそれもオレが勝利への執念がなかった故の結果なのかもしれない。
そんなことを考えていると何人かの生徒がこちらに近付いてくるのが見えた。彼らはオレに手を差し伸べて言う。
「まあ、こんなこともあるさ。元気出せよ」
遠慮がちなその言い方が妙に引っかかって改めてオレは状況を整理する。オレは負けたのだ、代表を賭けた試合で……いやそれでは正確ではない。
……そうだ、オレは自分からこの試合をやりたいと申し出たんだ。
たちまち顔が熱くなる、自分から申し込んだ試合で負ける。それは申し込んだ側からすれば恥ずべき行為だ。だから彼らもこんなに遠慮がちになっているのだろう。
「ありがとう」
彼らの手を取って体を起こす。正直なところ余りにも恥ずかしくてここからダッシュでどこか穴を見つけて入りたい気分だ。でも、そうはいかない。まだやることが残っていた。
「まあ、来年もあるから気にすんなよ」
「というか、お前でも負けるんだな」
励ましの言葉をかけてくれる彼らにお礼の言葉を述べると腹部に手を当てながらディーネの元へと向かう。すると彼女もこちらに気が付いたようで固まる。突然シンとする場内でオレは彼女の元へ近づくと手を差し伸べる。
「負けたよ、凄い腕だった。まさかあそこまで成長してるなんて思わなかったよ」
この言葉に嘘はない。確かにオレに隙が生まれたのは事実だけれどその僅かな隙を活かしたのは紛れもない彼女の実力だからだ。
「……でも私は」
強引に彼女の手を取って握手をした。緊張しているであろう彼女の手は湿っていた。
「ほら、代表戦も頑張れよ、別に外からでも学べることはあるんだし、応援してる」
「……でも」
「それでは、素晴らしい試合も終わったのでこれより講義を行いますが、ガイト君。貴方はちょっと今は無理そうね。医務室に行って手当を受けていらっしゃい」
先生が言い出しっぺの癖に負けたのかとでも言いたげな呆れたような顔をしてそう告げる。
「そうさせていただきます」
なんだかんだあったけれど、ディーネどころかオレも少しクラスに溶け込めたしこれで良かったのかな
と思いながらオレは医務室へと向かった。




