「光の剣士」
時は流れ卒業式当日、いつものように食事を済ませるとディーネと二人で手を繋ぎながら学園へと向かう。
「長いこと歩いた道も今日が最後なんだな」
「……色々なことがあった」
「ああ、そうだな。でも良かった、ディーネとも会えたしな」
「……ガイト」
彼女が握る手を強める。
「痛っ」
「……ごめん」
「いや、元気になってくれて嬉しいよ」
そんな会話をしていると門の前で壁に寄りかかっているジェシーと目が合った。
「朝からなかなか見せつけてくれるじゃない」
「……ごめん」
「はは、誰か待っているのか? 」
「ええ、貴方達を待っていたのよ」
「オレ達を? 」
「最後くらい、競い合った人達で門をくぐりたくて」
「なるほどな、それなら四人で潜るか」
「……うん」
「そうね、私達三人とフウトで」
三人で顔を見合わせる。ここにいなくてもフウトはオレ達の中にいつまでもいるのだ。
「じゃあ行くぞ……せーの! 」
四人で門をくぐる。潜るのは一瞬で終わってしまい寂しさを覚えるけれどこういうものなのだろう。
「それじゃあまた」
やるだけやるとジェシーはそそくさと学園へと向かう。
「もう少しゆっくりしていけば良いのにな」
「……ジェシーは卒業試合に出るから忙しいのかも」
「なるほどな、最後の日まで忙しいなんて代表も大変だな」
ジェシーの後姿を見ながらオレ達はゆっくりと教室へと向かった。
~~
式が始まり学園長の挨拶が終わると卒業生との対抗戦が始まった。イワン、ジェシー、ウィンディの人、と順に試合が終了しフレイムの試合が始まる。
「『ツインカムフレイムスラッシュ』見たかライオ! 」
と開始早々ルーカスが突撃するとともに試合を決めてしまった。彼にも思うところがあったのだろう。それにしてもやりすぎな気がするが……ディーネならもっと一方的な試合になっていたかもしれない。
チラリと隣に座っているディーネを横目で見る。
「あーあ、ディーネが出ていたらもっと早く終わったのになあ……という顔ね」
何故かさらにその隣に座っていたマリエッタがそんなことを口にする。
「そんなわけないだろ、ていうかなんでここにいるんだよ一応ガイアの教師だろ? 」
「それがね、私は今日から配属が変わったの。聞いて驚きなさい? 何とディーネのボディーガードよ」
「は? ボディーガード? なんで? 」
「なんでじゃないでしょう? ディーネは今や光の剣士が惚れ込んでいる重要人物なのよ。彼女がいる限り光の剣士が闇に堕ちることはない、安心だ。なんて言われているんだからその逆を企んでディーネを狙う不届き物が出て来てもおかしくないだろうって話になったのよ」
「うっ……」
ディーネのためと考えると断るわけには行かない。それにしてもむず痒くなるような噂が広まったな……
「一応確認だけどディーネはそれでいいのか? 」
「……マリエッタとも一緒にいられるの、嬉しい」
「ありがとう助かるわ。安心しなさい、家賃は私の給料にガイトの給料に加えて騎士団からの補助もあるから二人のプライベートを保てるほどの広さの所に住めるはずよ」
「実質三人の家みたいなものだな」
三人で話をしているといつの間にかステージの中央に学園長が立っていた。
「前はここで学園長がエキシビションマッチとか言い出したんだよなあ、あれには驚いた」
「……その相手がガイトだからね」
「学園長もすごいことするのね」
思い出話に浸りながら閉会宣言を待つ。生徒達も終わりを確信して今にも立ち上がらんとばかりにソワソワしているようだった。
「それでは、只今よりエキシビションマッチを行います。ガイト君、こちらに来てください」
「はい? 」
あの時と同じように学園長が口にする。
「……ガイト、呼ばれてるよ」
「まさかディーネ、知っていたのか? 誰と戦うんだオレは」
「……秘密、でも今回だけだから」
意味深なことを言うディーネに背中を押されて席を立つと控室へと向かう。最後くらいは礼儀正しくと言う奴だ。
スタジアムへ続く通路を歩いているとメイソン先生が立っていた。
「姿が見えないと思ったら、やっぱり最後は先生ですか? 」
「まあ三年分の積もりに積もった恨みを晴らす絶好のチャンスかもしれないけれど貴方にはもっと適任がいるってディーネさんがね。悔いのない試合をしてきなさい」
メイソン先生が横に避ける、すると既にステージに立っていた対戦相手の姿が目に入った。
……なるほど、これは確かに悔いのない試合にしたい。
「それではガイト VS マリー ! 2人の光の剣士によるエキシビションマッチ、試合開始! 」
学園長の声とともにオレ達は一斉に動き出した。
今回で最終回となります。これまで読んで応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。皆様の応援があったからこそ、最後まで書ききる事が出来ました。またご縁がありましたらどこかでお会いしましょう。




