「父と子」
「うわあああああああ」
「ぐっおおおおおおお」
信じられないことにオレ達のソウルは全くの互角だったようで衝撃波とともに吹き飛ばされる。幸運か一回転し真下のサタン城が見下ろせる態勢だったため立て直すと翼を利用して着地をするとサタンがこちら目掛けて飛んでくるのが見えた。
卑怯だがこれで終わらせてもらう!
剣を掲げ光のソウルの無効化を発動させ剣が輝いた。これでサタンのソウルにより出現した翼が消えなすすべなく落下を……とはならなかった。どういうわけかオレの剣の輝きが消えたのだ。
「なんだ、何が」
「フハハハハどうやらソウルを使い果たしたようだな。その年で私と同じ威力のソウルを放てることには驚いたが使用できるソウルの限界は私の方が上だったようだ」
勝ち誇ったサタンが笑いながら降りてくる。
なんてことだ、こんな時にソウルが使えなくなるなんて……回復するには時間を稼ぐしかない。でも、サタン相手に時間稼ぎは……
サタンを見据えながら打開するための考えを巡らせようとしたその時だった。どういうわけか地面まで二メートルというところでサタンの翼が消える。
「ぬ」
目を見開きながら着地するサタンを見て確信する。
「そっちもソウルを使い果たしたみたいだな」
「そのようだな、だが、状況は変わらぬ」
ニヤリと笑うと一瞬で距離を詰めて剣を振る。キィン! 間一髪防いだものの鋭い一撃だ。
「私が闇のソウルだけの人間だとでも思ったか、我はソウルを使えずに蔑まれていた間、剣技を磨いてきたのだ」
次々と剣を振りながらサタンは言う。
確かに、この剣技は本物だ……でも。
「それは……オレも同じだ……オレだって最初から光の剣士だったわけじゃない! 」
力を振り絞りサタンの剣に対して剣を当てそのまま刃をスライドさせ受け流すとそのままサタンの身体に突き刺した。瞬間、ブシャッと血が噴き出す。
「見事……そうか、我々は親子揃って同じだったのか」
「ああ、そうみたいだな」
「そうか……ならば」
サタンが剣に貫かれるのを気にせずに前進するとオレの身体に背後に手を回す。もう抵抗する力のないオレは親として最初で最後の息子に対しての抱擁だろうか、などと考えながらそれを受け入れた。
それが仇となった。
「ならば、共に逝くとしよう。プシーよ、今だ」
サタンが声を張り上げたかと思うとオレの視界の端の仕留めたはずのプシーが立ち上がるとどこかに隠していたのか短刀を構え雄叫びを上げながらこちらに向かってくる。
「くっ……」
抵抗しようにも身体は限界のようでサタンに掴まれた両肩を払う力も出ない。
ここまでか……
もう会えない、会ってはいけない人達の顔が次々に浮かぶ。
……そっか、ここで生き延びても皆に会ったら迷惑がかかる、いやマリエッタにあれだけのことをしてサタン復活の手伝いまでしたんだ。だからサタンを倒したらひっそりと暮らそうとしたけど、もうオレに行くところはなかった。それなら、親子仲良くここで死ぬのが一番良い……
迫りくる死を受け入れて瞼を動かすと次第に闇が広がっていき完全な闇が訪れるその直前、目の前に黄金の輝きが視界に入った。
……何だ?
慌てて目を開くと同時にブロンドヘアを靡かせた女性がプシーの首を斬り落とす。
「がっ……」
無残にも二等分にされたプシーは瞬く間に絶命した。
「何故だ、貴様は……そんなはずはない……」
サタンが目を見開く。恐らくあの人と間違っているのだろう。オレも一瞬そうではないかと見間違えた。でも今ならハッキリ違うと断言できる。
「ディーネ」
「……ガイト、無事で良かった」
名前を呼んだオレに対して振り向き様にディーネはそう答えるとサタンに剣を向ける、しかしもうその必要はなかった。
「別人……か、いやはや、奇妙なものだ……な……」
その言葉を最後にサタンの身体は崩れ落ちる。こうして長年この世界を苦しめていたサタンはこの世を去った。
「終わったな」
立つ力もなくなり腰を下ろす。
「……うん」
「でも、ディーネはどうしてここに? 下にいたヘルソルジャー達は? 」
彼女がオレに手を差し伸べる。
「……ガイトを迎えに来た。帰ろう」
「いや、無理だ。マリエッタから聞いただろ? オレはアイツを突き落としてサタンを復活させたんだ。それに、オレはサタンの息子で。帰ってもディーネに迷惑がかかる」
「……それなら大丈夫、皆覚悟は出来てるから」
「皆? 」
疑問に思ったその時だった。
「無事でよかったよガイト君! 」
というアローさんを先頭にシェスティンさん、シラさん、マリレーナさん、ヴィルゲルさん、アントーンさん、ヘルガさん、マリエッタ、ジェシー、ルーカスに三期生の生徒達、そして寮長、や先生達、学園長までいた。
「流石にこの数で行ったらヘルソルジャーも形無しですよ。それより、ガイト君、極秘任務お疲れ様です」
学園長が不意に奇妙なことを口にする。
「え? 」
「え、とはなんですか。サタンの勢力に潜入してスパイを炙り出し撃破する。そういう任務だったでしょう? まさかサタンを倒してしまうとは驚きましたが」
なるほど、そういうことにしてくれるってことか……
「……ガイト、帰ろう。サタンを倒したんだから誰も何も言わない。もしそんな人がいたら私が……皆が守るから」
改めてディーネがオレに手を伸ばす。
……バディにここまで言わせて引き下がる訳にはいかないか。
「ああ、帰ろう」
答えるとディーネの手を掴んだ。




