「ジェシーの選択」
キマイラの骨を見つめているとマリエッタがオレの手を引く。
「帰りましょ、気持ちは分かるけど意識を失っている者が一人いる状態でここにいるのはマズいわ」
「……どうしてキマイラがここに」
「分からない、仮にガイトが狙われているのだとしたらいつ追手が来るのが分からない、行きましょう」
「ああ」
答えるともう少し滞在したい気持ちを堪えて光の翼を出現させ三人を背負い飛び立つ、どの道もうあそこにフウトの遺品はない。あるとすればそれはポケットにしまったクリスタルだ。今日奪った剣に内蔵されていた物だから遺品と呼ぶには弱いと思ったが、それでもここで逆らったりして機嫌を損ねた末に見つかって没収、となるのは嫌だった。
「ん? ここは……」
「……ジェシー、気が付いたの? 」
「ええ、私は確か眠らされて……そうよ、ジュリアが……」
「彼女は死んだよ、それからフウトも」
「嘘、フウトまで! ? どうして……私を助けるために? 」
「半分正解だ、助けるところまでは生きていた、いきなりキマイラが出て来たんだ」
「何でキマイラなんて出てくるのよ」
「さあな、オレのせいかもしれない。オレがここにいるのがバレたからヘルナイツが放ったのかも、それにオレがもっと早く『光子化』を体得していれば……」
「……ガイト」
「もし貴方が『光子化』を使えるようになっても状況は変わらなかったでしょうね、フウトは助からなかった」
「……マリエッタ! 」
ディーネが声を荒げるもマリエッタは止めない。
「冷静に状況を分析しただけよ、彼のことを思うのなら自分を責めるのは止めるべきだわ。それは彼の判断も責めていることになるもの」
マリエッタの言葉はジェシーにも刺さったのだろう。沈黙が訪れる。
「そうか……それなら今後の話をしよう。ジェシーは今後どうしたいんだ? もしまだ学園にいたかったら攫われた理由に関しては誤魔化しておくぞ」
「ガイトはどうすればいいと思う? 」
……丸投げか。
「そうだな、オレは……剣士としていて欲しいかな。今までは何もなかったわけだし今ジェシーまでいなくなるのは辛い」
「そう、それなら残るわ。私もまだまだ学園でやりたいことがあるし」
「それじゃ決まりだな。舌嚙むなよ」
そう言うとひたすらホテル目掛けて加速した。




