表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

119/164

「勝利の秘策」

「なんてことだ……」


 観客席に目をやると光の剣で岩毎選手が斬られたかもしれないと皆が呆然とする中、ただ一人無表情の人物がいた、ノーブル学園の学園長だ。オレが出るのにわざわざ真剣を申し出た彼が平気な顔をしているのなら敵はあの岩の中にはいないと確信する。恐らく地中にでも息を潜めているのだろう。


「いや、なんともありません、岩もなんとも! 一安心ですが……彼は何がしたかったのでしょう」


 皆が真意を図りかねてる中、再び光の翼で宙へと浮かぶ。

 ……敵が岩にいないとなるとどこにいるという話になるのだが、関係ない。向こうから出て来てもらえばいい。

つまり、今オレがやるべき事は……あの岩を斬ることだ。あの岩さえ切れば岩が地面に落ちた重さをオレが着地したと錯覚させることが出来る。通常なら不可能かもしれないが、相手はオレが着地するのを今か今かと待ちかねているのだ、しかもオレには翼で飛ぶという手段があるため落下した瞬間の迎撃(げいげき)の速さも必要とされる、それなら錯覚してしまってもおかしくはない。


「問題は……」


 そびえ立つ3メートル程の巨大な岩を見つめる。

 問題はあの岩をオレが斬ることが出来るかということだ、しかも地面に足を着けないために幾つもある岩を避け徐々に加速と上昇をしながら……

 ……いや、やってみせる。

 剣を握り締める、この剣は絶対に折れない。そしてオレはどんな状況にも対応できるように修練を積んできた、絶対に出来る!


「行くぞ! 」


 掛け声とともに移動を開始する。加速のためにできるだけギリギリで岩を避けひたすら目的の岩を目指す。辿り着くと思い切り剣を振るった。


「いっけええええええええ! 」


 力を込めて剣を振る、キィンという音ともに刃は岩の中に入り込み……貫通した。


「ガイト選手が斬りました……あの岩を加速だけで……」


 支えを失った岩が崩れ落ち低い位置にある先端が尖った岩に串刺しになりパラパラと落ちていく中一際大きな岩がドシンと地面に落ちた次の瞬間、地面がめり込んだかと思うと岩は大きな落とし穴に落ちていった。

 直後落ちる岩とは裏腹に地面から男性が出てくる。


「残念だったな光の剣士、岩を斬ろうとしたようだが剣と共に落下とは呆気ない。俺の勝ち……だ……え? 」


 すかさず彼の元へ移動して喉元に剣を突き付ける。


「オレの勝ちだ」


 宣言と同時にわああああああと歓声が上がった。


 ~~

「しょ、勝者ルドラ学園ガイトオオオオオオオオオ! これにより今回の学園対抗戦はルドラ学園の勝利いいいいいいいいいいいいいいいいい! 」


 ヴィリバリト先生が歓声に負けじと声を張り上げ叫ぶ。


「まさか……斬ったのか? あの岩を斬ったのか? 」

「一か八かの思いつきでしたけど、斬れないとオレが負けていました」


 恐る恐る振り返った彼はガックリと膝を着く。


「負けた……完敗だよ」


 そう告げると彼はベンチへと戻っていった。


「ガイト君! 」


 振り返るとベンチからアローさん、アントーンさん、ジェシー、ディーネの四人が出てきていた。


「やってくれたね、見事だったよ」

「ああ、探知を逆手に取ったのだろう? 」

「でも意外ね、よくそんな戦法思いついたわね」

「……剣のことになるとガイトは凄い」


 皆が次々と称賛の言葉を述べてくれる。

 ……でも、それは違う。


「これは皆のお陰だから、本当にありがとう」


 心からの言葉を彼等に返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ