「思わぬ来客」
昼休憩が終わり決勝戦、形式は去年と同じ1vs1の三回戦二本先取したチームの勝利だ。
「待って、決勝戦に参加できるのは一回戦と二回戦の勝者から三人よね? 」
「ああ、正確には何か違ったような気もするけどそんな感じだ」
「だとしたらマズくない? 」
「なにがだ? 」
「向こうのチームは一回戦を一期生一人と三期生四人で勝ち抜いているのよ」
「あっ……」
言われて気が付く。マリエッタの言う通りでこれはマズい、五人の中から三人を出場させるとなると三期生が三人出場してくるのは明らかだ。対してオレ達のルドラ学園は二回戦のため決勝戦に出場できるのは三期生二人と二期生二人、三期生の数で負けている。
ノーブル学園は極端な編成で一回戦を勝ちに来ていた、それはこの決勝戦のためでもあったのだ。もし三期生のアントーンさんかアローさんが負けてしまうと圧倒的に不利になってしまう。
「まあでも、三期生だろうとこちらの二期生はディーネとジェシーだ、どっちが出るか知らないけど何とかなるんじゃないか? 」
「そうだといいけど」
マリエッタが呟く。それもそのはずで一回戦ではほとんど敵の情報が得られなかったのだ。楽観的過ぎたかも知れない、とはいえディーネとジェシーなら何とかしてくれる気がするのは本当だった。
「それでは、決勝戦の選手の入場です」
選手が入場し用意された待機用の席に腰掛ける。
「ルドラ学園、出場者は……」
開催校の司会として不利が無いようにしたのかヴィリバルト先生がまずルドラ学園側に尋ねるとアローさんが立ち上がった。
「アローさんか」
「ここで勝てばムードが変わるとはいえ、切り札をいきなり切るだなんて思い切ったわね。向こうは……」
「ノーブル学園からは……」
次の瞬間唖然とするようなことが起きた、何と立ち上がったのは一期生の生徒だったのだ。
「やられた、アローさんとみて勝負を捨てに来た」
マリエッタが悔しそうに口にした。
~~
「うおおおおおおおおおおおおお」
ノーブル学園から歓声が上がる。アローさんの勝利で終わった後に始まった二戦目、ウィンディの生徒がギリギリの駆け引きでアントーンさんのカウンターを読み彼を破ったのだ、これで一勝一敗、残すは三戦目のみとなった。
「まずい展開ね」
「ああ、一年の経験の差だけなら何とかできたかもしれないが後出しで有利なソウルを出されたら流石にな……」
先程とは打って変わってアントーンさんでさえ敗北をした事実に弱気になってしまう。
「となると次は一見不利なフレイムに対して互角に戦って見せたジェシーさんかしら」
「ディーネのフレイムはどうなんだ? 」
「フレイムは相性とかはないわね、どのソウルとも力比べが出来てそれ次第って所? ただし、ディーネの場合は強力な分巻き込まれないようにしないと引き分けになったりすることもあるわね」
「へー、詳しいんだな」
「ま、まあね……」
何故かマリエッタの目が泳ぐ。一体どうしたのか問い詰めようとしたその時だった。
「本当にいた! ? 」
突然背後で大声がしたので振り返るとそこには騎士団のグレーな制服に身を包んだシェスティンさん、マリレーナさん、シラさんの姿があった。
「まさか貴方が試合に出ないとはねえ」
「大きな声出してごめんね、外の警備をしていたんだけどびっくりさせようと空き時間に会いに行ったらいないからこっちがびっくりしちゃったよ」
「ガイト君なら絶対いるって話してたからね」
「まあ……」
三人に言葉を濁す。
「どうして出なかったの? 」
「それは……二年連続でフレイムじゃないのが出たらディーネにもフレイムにも悪いと思って」
「本当にいいいいい? 」
シラさんが顔をしかめてこちらに近付いてくる。
「ほ、本当ですよ」
「うん、嘘だね」
彼女は笑顔で断言する。
「大方、また襲撃されたらどうしようとか、考えていたんでしょ? 」
「そ、そんなことは……」
「その割には一回戦始まってからも指輪をチラチラ眺めてたわよね」
マリエッタが余計な一言を口にする。
「その件なら安心なさい、私達が見張っていてあげるから」
「出られるような口ぶりですがもう対抗戦も決勝まで来ているので」
「あら、出られるわよ? 決勝戦だからこそ」
とシェスティンさんが意外な言葉を口にした。




