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「後輩達の激闘」

 夏休み前日、一期生の学園対抗戦選考のためのクラス対抗戦を見学するべくディーネと二人で第一修練場へと向かう。ジェシーとフウトとマリエッタは後から合流するとのことだ。


「おーおー賑わってる賑わってる」


 席は一期生の見学で前から順に埋まっていたので最後尾の席に座る。前列から埋まっている中好き好んで最後尾に座るのなんていないだろうから待ち合わせにも最適だろう。一応辺りを見回して怪しい人物がいないかの確認もする……大丈夫みたいだ。


「さて、まずはどのクラスが戦うんだ? ワクワクしてきた」

「……初戦はフレイムとブリザード、ウィンディとガイアみたい」

「そうなのか、よく分かったな」

「……入口に書いてあった」

「気付かなかったよ、ディーネがいて助かった」

「……良かった」


 彼女は嬉しそうに頷く。


「しかしこの組み合わせ去年と全く同じなんだがもしかして恒例なのか? 」

「……一応抽選はしたみたい」

「凄い偶然だな」


 会話をしているうちに一期生のフレイムとブリザードの代表が剣を構える。去年とは逆でフレイムが銀髪の女性でブリザードが黒髪の男性だった。

 試合開始と共に歓声が上がる。互いにソウルで剣に炎、氷をそれぞれ纏ったのだ。一期生にとってはそれぞれが見たことのないソウルとなるとこの歓声も無理はない。


「じゃあ見せてもらおうぜ、後輩の実力を」


 まるで代表の先輩が品定めをするかのような発言になった気もするがあながち間違いではないから良いだろう。

 去年の戦いを思い出す、あの時は随分とジェシーのジワジワと覚めてくる氷に苦しめられたものだ。

 だが今回はあの時とは異なり相手は本物の炎使いだ、どんな戦いになるのかと期待に胸を膨らませていると同時に両者が突撃を始める。


「あれ、ジェシーみたいにやらないのか? 」

「……相手がフレイムで溶かされてしまうから? 」

「もしくは、出来ないかね」


 声がして顔を上げるとジェシーが立っていた。


「ジェシー、用事はもういいのか」

「シフトに変更があってね、快く引き受けてくれたわよ」


 それは何よりだ、しかし一年も学園に内緒でバイトをしてよくバレないものだ。


「それで出来ないっていうのは」

「一期生であれだけ出来るのは珍しい! なんて感動していたからね」

「なるほど、ジェシーが優秀だったのか」

「そうみたいね……負けちゃったけど」

「咄嗟の閃きのおかげでだな」


 二人が激しい剣戟を繰り広げるのを見ながら答える。この前のジェシーとディーネの戦いとは異なり女性の炎により男性の氷の剣は煙と共にほとんど溶けていた。


「これはマズいわね」


 ジェシーが額に手を当てて間もなく女性は男性の身体に炎を移し判定勝利となった。


「凄いなあの子」

「……私より凄いかも」

「いやそれはまだ分からないだろう」

「そうね、三年間で教わることは一緒だから早いか遅いか位の違いでそこで優劣は決まらないと思うわ」

「そうだそうだ、ディーネはあの大技が使えるらしいからな」


 ジェシーのディーネへのフォローに対し対立してるイメージが強かったからか意外に思いながらも同調する。


「大技? 」

「先生が言ってたんだがバーンの兄貴が使っていたやつでさ、圧縮した炎を飛ばしてドカン! てやつらしい、ディーネはそれの適性があるんだってさ」

「凄いじゃない」

「……身に着けられれば、だけど」


 と弱気な返答。なんか最近のディーネは妙に自信無さげだ、いや気付かなかっただけで今までもそうだったのか?


「どうしたんだディーネ、最近……」


 思い切って尋ねようとすると「ハロー! 」と陽気な声、見上げるとマリエッタだった。


「あら、ガイト君の両隣は埋まっているのね、残念」


 としぶしぶ彼女はオレの前列の席に着く。

 ……そこに座るのか。

 と驚いているうちに次のガイアとウィンディの選手が入場し歓声が上がる。どちらも女性のようだ。

 試合開始の宣言と同時に風を剣に纏わせたウィンディの生徒が駆けていく。


「フウトみたいに飛ばさな……あーそうか」

「そう、そういうのはガイアには無駄だからね。岩をも操れるガイアに飛ぶ斬撃は意味がないわ」


 マリエッタが補足をする。


「……でもどうして動かないの? 」

「そうね、去年のイワン君は既に岩で周囲を固めていたけれど……」

「それは恐らく出来ないか、もしくは……見てのお楽しみね」


 不思議がる二人に対してマリエッタが意味深に言った直後だった、ウィンディの女性があと一歩で懐に入る寸前という時に彼女の身体を地面から現れた岩が貫通する。映像とはいえなかなかにショッキングな状況だ。


「しょ、勝者レベッカ! 」


 審判が勝者となった彼女の名を告げる。


「というわけ、向こうが斬撃を飛ばして来ないのならそれを利用しようって考えたのね」

「なるほどな、そういう駆け引きもあったのか」


 納得していると背後から肩をポンと叩かれる。


「そういうことだ」


 振り返るとフウトが立っていた。


「今回はしてやられたがな、間に合ってよかった」

「といってもこの後お昼休憩よ? 」

「食堂で探すのも一苦労だからね」

「そういう事なら、皆で食堂行こうぜ」


 立ち上がるといち早く席を確保しようと足早に食堂へ向かった。


 ~~

 食事を済ませてフレイムとガイアの決勝戦を見るべく再び席へ着く。


「それで、ソウルを使う二人から見てどちらが有利なの? 」

「そうねえ、あの奇襲はもう見せちゃったから警戒されるだろうし」

「……ソウルを纏った剣で岩を斬れるなら勝てると思う」


 ジェシーに尋ねられたマリエッタとディーネが答える。


「ソウルの勝負ってわけか」


 位置についた選手を眺める。


「それではフレイム、ジェシカ、ガイア、レベッカの試合開始! 」


 宣言と共に両者が動く。先程のようにフレイムの子は突撃するもガイアの子は動かない。代わりに彼女は巨大な一つの岩を出現させた、それに対してフレイムの子が剣を振ると剣は勢いよく彼女の身体に触れるも映像では出現した岩は斬れていなかった。


「勝者、レベッカ! 」


 審判が宣言をする。奇妙なことだけれど実際に斬られた方が勝者となったのだ。


「まあ、こんな感じでガイアはちょっと模造剣を使用した戦いだと微妙なことにもなっちゃうのよね」


 マリエッタが気まずそうに言う。


「いや、模造剣がある以上は立派な戦闘だ」


 フウトが口にする、フウトは同じ状況で斬って見せたのだから凄いものだ。


「これで代表は決まったな、ディーネ、ジェシー、フウト、頑張ってくれよ」

「何よいきなり」

「……頑張る」

「君に無様なところは見せられないさ」


 三人から頼もしい答えが返ってくる。本当に頼もしい仲間達だ。

 ……でも一番頑張らなきゃいけないのはイワンかもな。

 同じガイアの先輩として、イワンは異性の後輩と接しなければならない。彼にとっては労力のいることだろう、とここにはいない彼のことを考えた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最新話まで追い付きました! 続きも楽しみにしています♪
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