モノローグ 過去編2
その後、身寄りのない私達姉妹は施設で過ごすことになります。
そこで私は勉学に励んで体も鍛えました。強くならなくては生きられない。
養子に迎えたいと言ってくれた方もいましたが、すべて断りました。
妹達も思いは一つ。
「嵐さんに、恩を返したい」
そして私が16歳になった時に、体に異変が起きました。
「これは――――氷⁈」
ルナが熱を出したので、取りに行こうとした矢先、手から現れたのです。
これが超能力の発現でした。しばらくするとリジーとルナも能力に目覚めました。
宇宙でエスパーの数は少なく情報もないので、私達が後天的に目覚めた理由は分かりません。
……たぶん、嵐さんの力に触れたからでしょう。もう普通の人間ではなくなりました。
となれば私達はみんなに恐れられるか、利用されるだけでしょう。
妹達と話し合って、これからのことを決めました。もう覚悟はできています。
それから私達はお世話になった人達に、礼を言ってから施設を去りました。
向かった先は嵐さんのいる戦場。彼は傭兵として各惑星を転戦していました。
いつか、愛……会いに行くために私は居場所をずっと調べていたのです。
危険な星への直行便はなく、私達は医療ボランティアの宇宙船に紛れ込んで、向かう事にします。
ちょうど知り合いがいたおかげで、無事に乗船することができました。
私達は惑星に到着し、野戦病院で嵐さんと再会することができました。
私は嬉しくてたまりません。でも喜んでばかりはいられず気持ちを引き締め、声をかけようとしますが、嵐さんの方から近づいてきました。
「すまない、この子を頼む」
見れば、12歳くらいの女の子が震えていました。よほど怖い目にあったようです。
私達も同じ目に遭っているので、すぐにルナが声をかけて少女を慰めます。
年齢が近そうだったから、嵐さんは私達に任せたのでしょう。
その嵐さんは、ベットに寝ているメイドさんを前にして、お医者さんと何やら話をしていました。
会話が終わり、ホッとした嵐さんを見て私は急いで大声をかけます。
このままだと、すぐに消えてしまうので。
「嵐さん! お話があります‼」
嵐さんは驚いて私を見ました。私達の事は成長したので覚えていないでしょうが、名前を呼ばれたことでビックリしたようです。氏名を知ってる人は少ないのでしょう。
周りの人の迷惑になるので、私達は外に出て話します。
「初めまして……ではありませんが、私はサラ・イシュタールと申します。嵐さん、6年前に妹達と一緒に助けていただき、本当にありがとうございました」
すると嵐さんは、困った顔で謝ってきました。
「すまん……覚えてない」
「末の妹には輸血をしていただいて、合同葬儀の時に嵐さんのお名前をお聞きしました」
「あー、あの時の三姉妹か? 思い出した。ずいぶん大きくなったな、もう昔の話だ、礼なんて気にしなくていい」
「いえ、もう一つお願いがあって、嵐さんに会いに来たのです。私達を部下にしてください!」
「はああああ⁈ お前何を言ってる? 俺の仕事は傭兵だぞ! 子供がするような甘い稼業じゃない。命がいくつあっても足らんぞ。エスパーならともかく、ただの人間じゃ――――!」
大きな氷を出した私の手を見て、嵐さんは目を丸くして驚いていました。
そして静かな声で言います。
「……目覚めたのか?」
「はい、姉妹全員です」
「そうか……この仕事が終わってから話そう」
嵐さんは察してくれたようです。
私は肯いてボランティアの仕事に戻りました。いつまでも、サボってるわけにはいきません。仕事は山のようにあります。
保護された少女はクラリスと名乗り、ルナと仲良くなって、すっかり元気を取り戻しました。
お付きのメイドさんが大怪我を負っていましたが、一命を取りとめたようです。
これもお医者さんと、嵐さんが助けてくれたおかげです。なので二人は嵐さんがくると、取り合いを始めてしまいます。クスクス。
ここでの戦いが終わる頃、クラリスの元に迎えがきました。これで私達とはお別れです。
たぶん住む世界が違うので、もう会うことはないでしょう。
同じ歳のルナは涙を流して親友との別れを惜しみ、車に乗り込んだクラリスはいつまでも手を振っていました。
そして嵐さんは私達に言いました。
「……軍は信用ならんからな、このままだと利用されるのが目に見えている。とりあえず俺と一緒に暮らすか? 身の振り方は後から考えよう」
「はい」「これからズッと」「お世話になります」
嵐さんは私達の保護者になるのを、国に申請して認められました。
宇宙には戦争孤児が多いので、審査などはなかったようです。
最初のうちは身の回りの世話や雑用と、サバイバルと超能力の訓練などをしてましたが、一年が経過したところで私達も戦場に出ることにしました。
もちろん、嵐さんには猛反対されました。
「おまえ達はもう十分強い。だが、敵の血を見て耐えられるわけがない! 命を奪ったことを後で悔やむことになる。エスパーと言っても女なんだぞ!」
気遣ってくれる嵐さんに感謝しながら私は言いました。妹達は笑っています。
「嵐さんと一緒に戦場を巡って、その惨さは嫌というほど知りました。そして踏みにじられた人達の叫びを何度も耳にしました。だからこそ、少しでも弱き人達の力になるために、私達は戦います。嵐さんのように……すみません、それにもう手を汚しちゃってます。てへ」
「なにっ⁈」
嵐さんが別の場所へ行ってる間に、腕試しがてら私達は悪党を倒していました。
無抵抗の人達を撃ってるのを見たら、自分達と重なって怒りしか沸かず、良心の呵責に苛まれることは全くありませんでした。
悪人更生? なにそれ、おいしいの?
両親の仇はもういませんが、悪党に対する憎しみは残ったままで、守れなかった後悔もあるのでしょう。
「悪党をぶち殺すより、獣をさばく方がしんどかった」
「蛇は勘弁してほしいです。お兄ちゃん」
「……はあ、なんてこった」
嵐さんは空を見上げ、深く息を吐きました。私達を怒ったりはせず諦めたようです。
「なら、しゃあねえな。これから俺達は神力傭兵団を名乗り、人を助けて守ることにする。ただ無理はするなよ」
「はい、隊長!」
こうして私達は隊長と一緒に戦場を駆け巡りました。
時々、キレて暴走しかける時もありましたが、隊長が念力で押さえてくれました。
あらゆる意味で私達を止められるのは、優しい隊長しかいません。
だからこそ、私達姉妹は隊長を深く愛していました。いつか平和に暮らすのを夢見て……無残に打ち砕かれましたが。
ビイ――――!
船内に警報が鳴り響きます。どうやら敵を発見したようです。
私はすぐに宇宙服に着替えて格納庫に向かいます。この船の名はファミリー号。
私達の拠点で家でもあります。船種としては輸送艦に近いですが、航宙母艦で小型戦闘艇を数機搭載しています。
今回の敵は宇宙海賊。これまた軍隊くずれ……嫌になります。
宇宙災害の中、援助物資を積んだ船を襲っているクソ野郎共です。
依頼を受けて私達は海賊退治にきました。数隻の戦艦が相手です。
「姉貴、おせえぞ。あたいはもう出る!」
「ええ」
気の短いリジーは、戦闘艇に乗り込んで発進しました。
やや遅れて私とルナも出撃します。ファミリー号から離れると、そこは星の海。
そしてミサイルとレーザーが飛び交う戦場です。
私は操縦桿を握り、スロットルレバーを上げて海賊船へと向かいます。
戦ってるリジーは敵艦の射撃を躱しながら、レーザー砲で攻撃してダメージを与えていました。
接近戦に持ち込めば、速さと機動力で勝る戦闘艇が圧倒的に有利です。
もっとも、身一つで戦艦を沈めてくる隊長には敵いませんでした。
私達の出番はほとんどありませんでしたが、敵艦を無力化する時はルナの力が必要でした。
準備が完了するまで、私とリジーは露払いをするだけ。
「いけるわ、お姉ちゃん!」
「やっちゃいなさい、ルナ!」
「いっちまえ!」
「電脳支配!」
これで全ての海賊艦が沈黙しました。ルナのハッキング能力によって、艦の制御が奪われたからです。
あとは艦に乗り込んで、しらみつぶしに掃討するだけです。海賊達の抵抗は無意味。
こうして無事に依頼を果たすことができました。奪われた物資は本来の届け先へ送り、残った海賊艦は私達が貰って売りさばきます。
大抵の依頼者は貧乏なので料金は安くしてます。なので天馬団の活動資金として、大切に使わせていただいております。
毎度おおきに。
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