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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第二章 動乱編

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モノローグ 過去編1

「嵐隊長――――! ……はっ!」

 

 私は跳ね起きて目を覚ましました。また、うなされていたようです。

 隊長のことが忘れられず、眠りに落ちるたびに悪夢に苛まれます。


 ここは宇宙船の中で薄暗い自室には誰もおらず、優しく声をかけて起こしてくれる人はもういません……悲しい。


 私は枕元の3Dフォトフレームを手に取り、微笑む隊長を見ては昔を思い出します。


 今こうしていられるのも、隊長が私達を助けてくれたからです。


 ……もう十年前のことですが、一度足りとも忘れたことはありません。



 私達姉妹は優しい父と母に見守られ、貧しくも温かい家庭の中で、楽しい日々を過ごしていました。



 ――それが突然奪われました。



 逃げてきた反政府ゲリラが街を占拠し、日常は一夜にして地獄に変わりました。

 当時十歳だった私は、何が起きているのか分からないまま、怪我を負ったルナをリジーと一緒に抱きしめ、ただ泣き叫ぶことしかできませんでした。


 私達を守ろうとしてくれた父と母は銃で撃たれ、その場に倒れ伏したままになり、もう動きません…………。


「へっへへへ、旨そうなガキがいるじゃねーか」

「おいおい、ヤるのはいいが殺すなよ。他の奴らにも回さんとな」

 

 両親を撃った男達が舌なめずりをしながら、私達に近づいてきます。

 気持ち悪い顔を見て、私は恐くて怖くてしかたなかった。

 リジーは肩を震わせて怯え、ルナは苦しそうに呻いています。


 そして男達の手が伸びてくる。私は目をつむって叫ぶしかありません。


「誰か助けて!」


「神拳」


「ぐほっ!」


 何が起きたのだろう? 


 恐る恐る目を開けてみると、私達の前に戦闘服を着た、男の人が立っていました。

 手を出そうとしてきた男達は倒れ、体がピクピクと動いてました。

 首が変な方向に曲がっていたので、もうすぐ死ぬでしょう。


 両親の仇なので、いい気味だと私は思いました。でも危機が去ったわけではありません。


「どうした⁈ うっ!」

「てめえがやったのか⁈ ぶっ殺してやる!」


 仲間のゲリラが駆けつけてきて、助けてくれた男の人は囲まれてしまいます。

 大人数が現れて私は絶望しかけますが、それはいらぬ心配でした。


「神影走」


「消えた! ぐわっ!」

「クソッ! これでも食らいやがれ‼」


 ゲリラは銃を乱射しますが、男の人に当たることはありません。

 動きが早すぎて、どこにいるかさえわかりませんでした。


「折神」


「ぎゃああああああ!」


 銃が突然壊れて暴発しました。そして男の人はあっという間に、次々とゲリラを倒していきます。

 何をしているのかサッパリわかりませんでしたが、


「き、貴様! エスパーか⁈」


 一人残った指揮官が震えながら、必死の形相で叫びました。

 男の人は答えず、淡々と近寄っていきます。


「く、来るな! コイツらがどうなってもいいのか⁈」


 軍帽を被った指揮官が、私達に拳銃を向けてきました。

 この卑怯者! 私は激しく怒ると同時に、申し訳なく思ってしまいます。

 ここで男の人が言いました。


「分かった、分かった。まあ落ち着けよ」


 両手を上にゆっくりと上げていくのですが、宙に弾が浮かんでいるのが見えました。


「神鉄砲」


 いきなり指揮官は倒れ、穴の開いた額からは血が流れていました。

 浮いていた弾が命中したようです。見えなかったのはもちろん、音が全くしませんでした。


 男の人は私に声をかけてきます。


「大丈夫か? むっ! 怪我をしてるな、治療しよう」

「は、はい」


 私はルナを任せます。男の人は医療キットを取り出して、治療をしてくれました。

 ルナは目を覚ましませんが、少し落ち着いたように見えました。


 しかし男の人は険しい表情です。


「……傷が深い、血が足りん。応急処置はしたが早く医者に診せんと……この子の血液型は分かるか?」


「は、はい! B型です」


「よし、ならば俺の血をやろう」


 男の人は輸血用チューブを取り出して、自分の腕に針を差しました。

 血が流れてくると、反対側の針ををルナの腕に刺してテープで止めました。

 輸血しながら男の人はルナを抱きかかえます。


「これから、急いで野戦病院にいくぞ」

「はい、ついて行きます! えっ⁈」


 走るのかと思ったら、私とリジーの体が光に包まれて浮かび上がりました。


「神風船、舌を噛まないようにな」


「えええええ!」


 男の人は風のように走りだし、浮いた私達も引っ張られるように運ばれていきます。

 ただただ驚くしかありません。超能力という不思議な力を知ったのはこの時でした。


 あっという間に白い天幕がある場所にきて、ルナはすぐにお医者さんに診てもらい、私達もボランティアの人達に保護されました。


 いつの間にか男の人の姿は消えてました。聞いてみると、他の人達の救助に向かったそうです。


「助けていただいた、お礼を言わないと」


 そう思っていましたが、なかなか会えませんでした。

 彼がたった一人でゲリラを倒して回っていたからです。これでみんなの安全が守られました。本当に強くて凄い方です。

 ようやく会えたのは合同葬儀の時で、犠牲になった人は数知れず、その中には私達の両親も含まれていました。


「うえええん!」


 リジーとルナは大声で泣いていました。私も涙を流します。

 遺体を集めて運んでくれたのも彼です。命を助けてもらい、仇も討ってくれたので感謝しかありません。

 お別れが済んで、彼が立ち去ろうとしたので、私は近づいて声をかけます。


「あの! ありがとうございました!」


「ん? ああ、気にするな。俺は仕事をしただけだ。生きるのは大変かもしれんが、命があるなら頑張れ」


「はい! あの、お名前は?」


「天馬嵐だ。じゃあな」


 彼は私に背を向け、手をふって去っていきました。

 私は見送りながら、彼の名前を何度もつぶやいていました。妹達も同じです。


 命の恩人を忘れないように。

お読みいただきありがとうございます。この作品がお気に召しましたら


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