モノローグ サラ2
トラックから外を眺めてみれば道路はひび割れ、薄汚れた車が無造作に打ち捨てられている。信号機は停止したままで、行き交う人も車もいない。
糧を得るだけでも大変で、どこにいても生活は厳しい……いつになったら終わるのか?
思い煩ってるうちに、依頼者である親達の元に到着した。
「おとうさーん!」
「ママ!」
親子は涙を流して抱き合っていた。
見ている私達も嬉しいが、現実はあまりにも厳しいので、これから嫌なことを口にしなくてはならなかった。
親達の代表が私に近づいてくる。
「本当にありがとうございました。お陰様で子供と会うことができました。感謝の言葉もございません。それで、この地に留まってはいただけないでしょうか? もちろん御礼は……」
私は話の途中で口を挟む。
「私達は依頼を受けただけで、用心棒ではない。他の星でも助けを求めてる人達がいるので、向かわねばならない。悪いが後のことまで面倒は見きれない。だから戦え! 自分達で!」
「えっ⁈」
私は軍から奪った銃を手渡す。
「もはや国も軍も守ってはくれない。だったら自分と家族は、自分自身で守るしかないんだ。盗賊は何度でも奪いにくるぞ。抗わねば全てを失うだけだ……財産も命さえも。だから仲間を集めて自警団を作るといい。生きるために!」
「……やれるでしょうか?」
「やるしかないんですよ」
不安そうな男性に私は優しく声をかけ、たくさんの銃器を置いていく。
動画マニュアルもつけてあるし、銃の扱いはそんなに難しくない。あとは彼ら次第だ。
ゴロツキどもは弱いとみれば奪いにくるが、いざ抵抗されると尻尾を巻いて逃げる根性なしだ。
撃たなくても武装してるだけで二の足を踏むだろう。銃が抑止力となる。
もはや、話し合いで解決できる時代ではない。武力を否定できるのは、まだ平和を失っていない世界だけだ。
「さようなら」
「ありがとう、お姉ちゃん達!」
私達は手を振って子供達と別れ、ある場所へと向かう。
そこは、ここら一帯を支配している軍の本部基地。
野盗の根城を潰さねばこの街に平穏は戻らず、悪党はいくらでも湧いて出てくる。
自動運転トラックの中で、私達は話し合う。
妹のサラはタブレット端末をいじって、基地内部をみていた。偵察である。
「中の様子はどう? ルナ」
「……ひどいわ。兵士達は酒を飲んで酔っ払い、奪った食べ物を食い散らかしてる。あと裸の女の人が一杯いるわ。司令官の側にもたくさん……泣いてるわ」
サラの超能力は電気を扱えるので、基地のカメラをハッキングして見ることができた。
16歳の妹は顔をしかめていたが、もうこんなのは慣れっこで、もっと酷い惨状を私達は見たことがある。
だからこそ、そんな人の不幸を少しでも減らしたい。
「……そう、ならいつも通りに跡形もなく潰しましょう」
「皆殺しにしてやる!」
リジーは息巻く。女性達を助け出すのが先決と注意はしておく。
言わなくてもその辺は弁えているだろう。
ただブリジットは正義感が強く、カッとなりやすいので押さえておかないとマズい。
火の超能力を使うので、本気になると街中が火の海になってしまい、私達が極悪人になっては意味がない。
軍の悪行はルナがローカルネットに動画を投稿し、やがて市民の間に少しずつ知れ渡っていくだろう。
これを見れば誰もが反発し、大規模デモになれば軍は立ち行かなくなる。
それが私達の狙いだ。今時、御用マスコミなど誰も信じないからね。
やがてトラックは、軍基地として使われてる庁舎についた。
私達が車から降りると、見張りが嫌らしい笑みを浮かべてきたが、それが彼らの最後だった。
そのまま正面口から乗り込んで、目に入った兵士から順に駆除していく。
基地が襲撃されるなどとは夢にも思わず、彼らは享楽のかぎりを尽くしていて、警戒心は一切なかった。
それに連中は、私達を追加の玩具と勘違いしていて、まさか自分たちを狩りに来た刺客だとは思ってもみない。
まあ反撃してきたとしても、この宇宙で2番目に強いエスパーの私達を、止められる者などいない。
暴行されてた女性達を見つけ、宥めて安心させた後、ルナがトラックへ誘導していく。
いつものルーティンで、あとは私とリジーが軍管区の司令官を片付けるだけ。
他に立っている兵士はもういない。奥にある大扉をリジーが蹴飛ばす。
裸の司令官は大声で騒ぎだす。ベッドに女性がいなくて私はホッとした。
盾にされると面倒だからね。
「な、なんだ貴様らは⁈」
「始末屋ですよ。軍服を着た害獣を退治にきました」
「ま、まさか地獄の魔女! ま、待て話し合おう! 金ならいくらでも出す‼」
「いらねえよ! フレイムバースト!」
「フリージング」
私とリジーの同時攻撃で司令官の右半分は凍り付き、左半分は燃え上がった。
司令官は声も上げられずに絶命。
どこぞのモンスターのようになってしまうが、火と氷が打ち消しあって消火されるから、これで火事にならずに済む。
これで今回の仕事は完了。元凶である軍隊を潰さねば、悲劇は繰り返されるので、最後に基地を無力化している。
依頼者にはあえて言わない。頼りきられるのが嫌だから。
それにこれは独立連合共和国に対する、私達の復讐でもあるのだ。
軍の暴走も止められない国など滅べばいい!
「さあ、次の星に行きましょう」
「おう、姉貴!」
「うん、お姉ちゃん」
おっと、その前に宣伝をしておかないと。
エスパー姉妹が徹底駆除。安心・安全の害獣退治。
奪われた平穏を、もう一度あなたのもとへ。
みんなが安心して暮らせる日常を取り戻そう。
アフターサービスも万全。
お困りの際は、いつでも天馬団にご相談ください。
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