モノローグ サラ1
時は星紀末、宇宙は混迷の最中にあった……
「フリージング」
「つ、冷たい! 体が凍…………」
「フレイムバースト!」
「うわああああっ! 焼ける――――!」
私の名前はサラ・イシュタール、年齢は20歳。
今は姉妹達と害獣駆除の真っ最中、悪党相手に容赦はせず、淡々と依頼をこなすだけである
たとえそれが軍隊で、独立連合共和国の兵士達だとしても……。
「お姉ちゃん、ドアロックを解除したわ」
「良くやったわ、ルナ。こっちも今終わったとこよ」
「さっさと、子供らを助け出そうぜ」
私達は依頼をうけ、拉致された子供の救助にやってきたのだ。
場所は軍が所有しているビルで、暴力で連れ去った犯人は兵士達だ。
マフィアと結託し武器の横流しや営利誘拐をしてるので、軍人の皮をかぶった犯罪者にすぎない。
殺人と強姦も息を吸うように行い、良心の欠片もない外道の野獣だ。
もはや人間ではなく、人と思いたくもない。
そんな者達に情けは無用で、ビルにいた獣らは超能力で全てなぎ払った。
動かなくなった者には目もくれず、私達は地下室へと向かう。
大扉を開けて見ると、薄暗い空間の奥に連れ去られた子供達がいて、狭い場所で身動きもできずに震えていた。
リジーがしゃがんで声をかける。
「もう大丈夫だぞ。悪いやつらは、あたい達が片付けた。これから、パパとママのところに連れてってやるからな」
「……ほんとう?」
「ああ、もちろんだ!」
妹のブリジットは優しい笑顔で語りかけ、子供らを安心させてから、外のトラックへと誘導する。
ふだんは男勝りで乱暴なのに、子供の心をつかむのが異様に上手く、真似できない私は少し嫉妬してしまう。
……ああ、隊長が言ってたな。
「サラはお堅いからな。もっと力を抜いた方がいい」
その笑顔を思い出すと辛い。嵐隊長がいなくなってからというもの、私達は毎日のように涙を流した。
それでも、人を守るという隊長の思いを継ぐことにしたのだ。
神力傭兵団はなくなった……。
しかし今、私達姉妹は天馬団を名乗っている。隊長の姓にあやかってのことだ。
弱き人々の願いに応え、救いの手を差し伸べる集団。たった三人しかいないけどね。
それでも依頼は山のように舞い込んでくる。それだけ誰もが困っていた。
現在の宇宙は人々の嘆きと怨嗟の声に満ちていた。
二大国の力は弱まり、暴力と混沌が支配する世の中になってしまった。わずかな期間で滅茶苦茶である。
こうなったのも、あの事件が引き金である。そしてこの言葉を聞く度に、腸が煮えくり返ってくる。
時空歪曲事変
嵐隊長を倒すために、共和国軍は禁断の兵器である「次元破壊弾」を使ったのだ。
その威力は戦場宙域だけに留まらず、銀河全体にまで及んでしまう。
星系同士の距離は狂ってしまい、宇宙航路が使えなくなって、あらゆる船が迷子となる。
こんなのはまだ序の口。
一番の災害は時空断裂現象だった。大地に断層があるように、宇宙そのものに亀裂が走って空間が裂けてしまうのだ。
一度これに巻き込まれれば、人も星も原型を失って跡形もなく消え去る。
人の科学力など何の意味ももたず、ただ神に祈るしかなかった。
宇宙災害は三か月ほど続き、ようやく収まってきた。それでも突発的に発生するので、まだ宇宙は危険に満ちていた。
一体、何百億の人間が死んだのだろう? 調べようもなく数えようもない。
非難の矛先は独立連合共和国の、最高評議長アカスリに向けられたが、知らぬ存ぜぬを決め込み、すべてを帝国のせいにした。
しかし現地に調査団が派遣されて、中心部には近づけなかったが異常な形に捻れた戦艦や、人の形を失って変わり果てた哀れな兵士が発見された。
重力エネルギーの残滓も計測され、最狂兵器が使用されたのが明白になる。
こうなるとアカスリは前言を翻して、軍部のせいにした。
「軍上層部が勝手にしたことだ。私と政府は一切関知していない! 責任は総司令官にある!」
他人になすりつけようとしたが、すぐに嘘がバレる。
「あの兵器を無断使用したのは、一人の将官で出世を餌に、最高評議長にたぶらかされたからだ。司令部は一切関わってはいない。これは証拠の一つである」
ある録音データが公開される。総司令官と議長の会話だ。
『おい、これで奴を仕留められるんだろうな?』
『難しいですね。彼に勝てる者は宇宙に存在しないでしょう』
『ならばアレを使え。帝国に渡すくらいなら、消してしまえ』
『その命令は拒否します。あまりにも危険すぎる』
『いいからやれ!』
押し問答が続いたが、兵器は使わないことになった。
しかしアカスリは個人的にある将官と接触して、最狂兵器を使用させたのだ。
さらに一人だけ生き証人がいた。それは嵐隊長と戦った艦隊司令で、あの現場から奇跡的に助かった女である。
「私は命令を受けてターゲットと戦闘になりました。その最中、後方から旗艦に向けて、一発のミサイルが放たれました。証拠隠滅のため、私を含めてすべてを消す算段だったのでしょう。しかし、戦闘記録は残っています。撃った実行犯は時空歪曲に巻き込まれましたが、私は議長を絶対に許さない! 死んだ部下に謝れ!」
私からすればどっちもドッチだ。決して軍を許しはしない!
私達の愛する隊長を殺そうとしたのだから、理由などは関係ない。
その軍部ももはやガタガタで、各惑星にいた部隊は補給を絶たれ軍閥化し、指揮系統は完全に崩壊している。
暴力集団は各地でやりたい放題。だからこそ私達は立ち上がったのだ。
そして垢……アカスリは、
「あれは軍部のねつ造だ! こっちにも証拠はある! 事実無根なので、私は最後まで闘う‼」
とほざいた後、身の危険が及ぶのを日に日に感じ、愛人をつれて姿をくらましてしまう。
執務室に辞表だけが置かれていた。もし、見つけたらただじゃおかない!
これで独立連合共和国は大混乱に陥り、他の政治家達も責任をとろうとしなかったので、無政府状態になってしまう。
帝国の方も音沙汰がなくなったので大変なのだろう。
この世は星紀末、混沌の時代になってしまった。
戦争してた頃の方が良かったのは皮肉だ。風聞を気にして、両軍とも民間人には少しは配慮していたから。
……未来に希望は見えない。
こんな時に嵐隊長がいてくれたらと、常に思ってしまう。
遺体は発見されていないが、あの状況下では絶望的だ……本当に悔しくて悲しい。
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