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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第二章 動乱編

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モノローグ サラ1

時は星紀末、宇宙は混迷の最中にあった……

「フリージング」

「つ、冷たい! 体が凍…………」


「フレイムバースト!」

「うわああああっ! 焼ける――――!」


 私の名前はサラ・イシュタール、年齢は20歳。


 今は姉妹達と害獣・・駆除の真っ最中、悪党相手に容赦はせず、淡々と依頼をこなすだけである

 たとえそれが軍隊で、独立連合共和国の兵士達だとしても……。


「お姉ちゃん、ドアロックを解除したわ」

「良くやったわ、ルナ。こっちも今終わったとこよ」

「さっさと、子供らを助け出そうぜ」


 私達は依頼をうけ、拉致された子供の救助にやってきたのだ。

 場所は軍が所有しているビルで、暴力で連れ去った犯人は兵士達だ。


 マフィアと結託し武器の横流しや営利誘拐をしてるので、軍人の皮をかぶった犯罪者にすぎない。

 殺人と強姦も息を吸うように行い、良心の欠片もない外道の野獣だ。

 もはや人間ではなく、人と思いたくもない。


 そんな者達に情けは無用で、ビルにいた獣らは超能力で全てなぎ払った。

 動かなくなった者には目もくれず、私達は地下室へと向かう。


 大扉を開けて見ると、薄暗い空間の奥に連れ去られた子供達がいて、狭い場所で身動きもできずに震えていた。


 リジーがしゃがんで声をかける。


「もう大丈夫だぞ。悪いやつらは、あたい達が片付けた。これから、パパとママのところに連れてってやるからな」


「……ほんとう?」


「ああ、もちろんだ!」


 妹のブリジットは優しい笑顔で語りかけ、子供らを安心させてから、外のトラックへと誘導する。

 ふだんは男勝りで乱暴なのに、子供の心をつかむのが異様に上手く、真似できない私は少し嫉妬してしまう。


 ……ああ、隊長が言ってたな。


「サラはお堅いからな。もっと力を抜いた方がいい」


 その笑顔を思い出すと辛い。嵐隊長がいなくなってからというもの、私達は毎日のように涙を流した。

 それでも、人を守るという隊長の思いを継ぐことにしたのだ。


 神力傭兵団はなくなった……。


 しかし今、私達姉妹は天馬団ペガサスを名乗っている。隊長の姓にあやかってのことだ。


 弱き人々の願いに応え、救いの手を差し伸べる集団。たった三人しかいないけどね。

 それでも依頼は山のように舞い込んでくる。それだけ誰もが困っていた。

 


 現在の宇宙は人々の嘆きと怨嗟の声に満ちていた。

 二大国の力は弱まり、暴力と混沌が支配する世の中になってしまった。わずかな期間で滅茶苦茶である。

 こうなったのも、あの事件が引き金である。そしてこの言葉を聞く度に、腸が煮えくり返ってくる。


 時空歪曲事変スペース・ディストーション


 嵐隊長を倒すために、共和国軍は禁断の兵器である「次元破壊弾アストラル・ブレイカー」を使ったのだ。


 その威力は戦場宙域だけに留まらず、銀河全体にまで及んでしまう。

 星系同士の距離は狂ってしまい、宇宙航路が使えなくなって、あらゆる船が迷子となる。


 こんなのはまだ序の口。


 一番の災害は時空断裂現象だった。大地に断層があるように、宇宙そのものに亀裂が走って空間が裂けてしまうのだ。


 一度ひとたびこれに巻き込まれれば、人も星も原型を失って跡形もなく消え去る。

 人の科学力など何の意味ももたず、ただ神に祈るしかなかった。


 宇宙災害は三か月ほど続き、ようやく収まってきた。それでも突発的に発生するので、まだ宇宙は危険に満ちていた。


 一体、何百億の人間が死んだのだろう? 調べようもなく数えようもない。



 非難の矛先は独立連合共和国の、最高評議長アカスリに向けられたが、知らぬ存ぜぬを決め込み、すべてを帝国のせいにした。


 しかし現地に調査団が派遣されて、中心部には近づけなかったが異常な形に捻れた戦艦や、人の形を失って変わり果てた哀れな兵士が発見された。


 重力エネルギーの残滓も計測され、最狂兵器が使用されたのが明白になる。


 こうなるとアカスリは前言を翻して、軍部のせいにした。


「軍上層部が勝手にしたことだ。私と政府は一切関知していない! 責任は総司令官にある!」


 他人になすりつけようとしたが、すぐに嘘がバレる。


「あの兵器を無断使用したのは、一人の将官で出世を餌に、最高評議長にたぶらかされたからだ。司令部は一切関わってはいない。これは証拠の一つである」


 ある録音データが公開される。総司令官と議長の会話だ。


『おい、これで奴を仕留められるんだろうな?』


『難しいですね。彼に勝てる者は宇宙に存在しないでしょう』


『ならばアレを使え。帝国に渡すくらいなら、消してしまえ』


『その命令は拒否します。あまりにも危険すぎる』


『いいからやれ!』


 押し問答が続いたが、兵器は使わないことになった。

 しかしアカスリは個人的にある将官と接触して、最狂兵器を使用させたのだ。


 さらに一人だけ生き証人がいた。それは嵐隊長と戦った艦隊司令で、あの現場から奇跡的に助かった女である。


「私は命令を受けてターゲットと戦闘になりました。その最中、後方から旗艦に向けて、一発のミサイルが放たれました。証拠隠滅のため、私を含めてすべてを消す算段だったのでしょう。しかし、戦闘記録データは残っています。撃った実行犯は時空歪曲に巻き込まれましたが、私は議長を絶対に許さない! 死んだ部下に謝れ!」


 私からすればどっちもドッチだ。決して軍を許しはしない!


 私達の愛する隊長を殺そうとしたのだから、理由などは関係ない。


 その軍部ももはやガタガタで、各惑星にいた部隊は補給を絶たれ軍閥化し、指揮系統は完全に崩壊している。

 暴力集団は各地でやりたい放題。だからこそ私達は立ち上がったのだ。


 そして垢……アカスリは、


「あれは軍部のねつ造だ! こっちにも証拠はある! 事実無根なので、私は最後まで闘う‼」


 とほざいた後、身の危険が及ぶのを日に日に感じ、愛人をつれて姿をくらましてしまう。


 執務室に辞表だけが置かれていた。もし、見つけたらただじゃおかない!


 これで独立連合共和国は大混乱に陥り、他の政治家達も責任をとろうとしなかったので、無政府状態になってしまう。

 帝国の方も音沙汰がなくなったので大変なのだろう。


 この世は星紀末、混沌の時代になってしまった。


 戦争してた頃の方が良かったのは皮肉だ。風聞を気にして、両軍とも民間人には少しは配慮していたから。


 ……未来に希望は見えない。


 こんな時に嵐隊長がいてくれたらと、常に思ってしまう。

 遺体は発見されていないが、あの状況下では絶望的だ……本当に悔しくて悲しい。

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