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聖魔の救済者  作者: 港瀬つかさ


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18/52

18.嘘を数えて

 幾つ嘘をついてきただろう。物心つく頃から、嘘をついてきた。自分を偽って、全てを騙して。生きてきた時間を振り返るという事は、俺のついてきた嘘を数えるという行為に、等しい。



 今この時でさえも、俺は偽りを口にする。



 真実を知った時、お前はどうする?かつて精霊神達によって封じられた、最強の邪神。俺の傍らにいる時のお前は、とてもそうは見えないが。口喧しくて、お節介で、妙に常識的で。まるで、年の離れた兄か親のように小言を言う。

 おかしな事だな、アズル。俺は勇者で、お前は邪神で。俺はお前を叩き起こして、お前は無理矢理連れられている。それなのにお前は、不思議な程、俺に心を砕いている。知らないとでも思っているのかもしれないが、俺はこれでも、結構聡い方なんだぞ?

 だが、絶対に言ってはやらない。口にしてなど、やるモノか。お前のそれが優しさだと解っているが、そんなモノは俺には、必要ない。

 俺が欲しいのは、ただ一つだけ。その為なら俺は、世界すら救ってみせる。欲しいモノを手に入れる為。ただそれだけの為に、俺は世界を救うだろう。それ以外の方法を、俺は知らないのだから。

 人々の前では、心優しい勇者を。お前の前では、性格の捻くれた子供を。けれどそれすら、全部嘘なのかもしれない。偽りで飾り立てる事に慣れた俺には、どれが真実か解らない。既に、俺自身がどんな存在であるのかすら、曖昧で。それは時折、痛みを伴って俺を苛む。

 欲しいモノがあった。子供の頃から、ずっとずっと欲しいモノがあった。だから、その為だけに、俺は勇者になった。それだけの為に。他の理由は、俺にはなかった。



 一体幾つ嘘をつけば、全てが終わるのだろうか…………?

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