17.小夜鳴鳥
昼夜問わずに泣き続ける、ナイチンゲール。その鳥の姿に、何を感じたのか。珍しくも、穏やかな笑みを浮かべて見詰めていた。思えば、初めて見る、静かな微笑ではなかっただろうか。
あの勇者は、俺には何も、語らない。
何処まで走り続けるのだろうか、この子供は。時折不意に、自虐的な瞳をする。先へ進むたびに、自嘲めいた笑みを浮かべる。己を憎んですらいるような、この勇者は、何なのだ。何を求めて、何を願っているのか。その些細な事すら、俺には解らなかった。
傍らにいるという、それだけでは解らぬ。けれど、それ以上を踏み込むという事は出来なかった。この少年は、頑なだ。心を覆う鎧の強固さは、俺の知るどの存在をも上回る。まるで、手負いの獣のように。
フーア。お前は何を見ている?お前の瞳は何を映し、お前は何を望んでいる?お前の願いは何処にある?それは本当に、世界救済と同じ道なのか?
俺は時折、思う。お前が望むモノは、もっと別の何かなのではないかと。或いは、手に入らぬモノであるのかもしれないと。詮無き事と解りつつも、思わざるを得ない。
お前はまだ子供だ。けれど世界を背負っている。その重圧に耐えられぬわけでは、あるまい。お前にとってそれは、決して重圧ではないのだろう。いや、その重圧すら、無いにも等しいのではないか。俺は、そのように思う。
時を問わず、ただ鳴き続ける鳥がいる。お前の姿は、それ似ている。休む事を知らぬようにも、見える。実際には眠り、休息を取っているにもかかわらず。お前の心は、安らぎも休息も知らぬのではないか?それが、俺の思い違いであればいいが。
……まったく、俺は何故、お前の身を案じているのだか……。




