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#ガールズ&トーク

 8時間43分。

 俺と夜斗がゲームを始めてから経った時間だ。

 耐久でもなければチャレンジでもない、なんなら配信ですらない。

 ただのプライベートゲームだ。

 この前の配信でテトリスで負け越しなのが悔しかったらしく、昼からぶっ続けでミノを積んでいる。

 廃人かよ。

 そして隣のゲーマーはテンションが高い。

 何かしらをキメてる可能性感じるんだが。


「つーか、今何時だよ」

「もうすぐ9時だな。ん?じゃああれか!桜達の配信始まるんじゃねぇか?」

「知らんが」

「知らねぇのかよ!」

「たち、ってことはコラボなのか」

「ああ、そうそう。四人で、つってたし、多分ツバキ含めてだと思うぜ」

「へぇ」

「ちょっと見とこうぜ」

「興味ないね」

「……兄者って声真似うめぇよな」

「急になんだよ」


 あと、興味ねぇって言ってんだが?

 なに当然のようにタブレット準備してんだよこいつ。














【男子禁制】ガールズトークでオフコラボ〜マシュマロを添えて〜【春風桜、吹雪菫、八重咲紅葉、甘鳥椿】


 コメント:兄者不在

 コメント:ツッコミ不在

 コメント:アホと天然とオタクとサイコ

 コメント:カオス過ぎるw


「はいはい〜ってことでね〜、色々食べながらね、何か色々話してくよ〜」

「もうちょっと説明した方がいいんじゃないかな、春ちゃん」

「え〜、あ、マシュマロ読むよ〜」

「あぁ……うん、そうだね」

「さすが桜先輩!進行係なのに雑ッスね〜!」

「いえ〜い!」

「イエーイ!」

「……つばきち、それ褒めてる〜?」


 褒めてないな。

 つかよ、男子禁制つってんのにもろ見ちゃってるけどいいのか?

 まぁ、配信しとるわけだし問題はないか。


「シュークリーム持って来たんッスよ」

「あ、これ、美味しいって評判のだよね」

「そうッス!ちょっといいお値段ッスけど、めっちゃくちゃ美味いんッスよ〜」

「わかる〜」

「ホントだ、美味しい!そういえば、この四人で雑談って、思えば初めてなんですよね。大体コラボする時って、何故か兄者さんがいますし」

「何故かって、私たちが呼んでるからだと思うけれど」

「このグループ自体が兄者先輩中心ッスしね〜」

「兄者の方が何でだ〜とか言ってそ〜」

「兄者さんといえば、この前デビュー一周年でしたよね」

「いや〜、もう一年経ったんッスね。なんか、いちリスナーだった頃が懐かしいッスよ」

「甘鳥ちゃんは、そっか、兄者くんが出て来てからP.Sに来たんだもんね」

「そうッスよ。初配信の時から見てたッス」

「兄者がス〇ブラやったやつ〜?や〜、次の日やばかったよあれ〜」

「切り抜きめっちゃバズりましたもんね、桜先輩」

「ほんとに〜。あとね〜、なんかボスが面白いことになってんな〜とか言うの」

「まぁ、ボスですし」

「ボスさんだもんね」

「うちのボスってそんなヤバいんッスか?」

「普通は、放送事故の張本人を配信に出したりしないと思うよ」

「しかもこの頻度ですし」

「確かに……」


 うん、だよな。

 やべぇ奴らをまとめるボスは、やはりやべぇ奴なんだ。


 コメント:ボスナイス

 コメント:P.Sのトップは違ぇな

 コメント:これがP.Sのボスよ

 コメント:さすがや

 コメント:ライバーに引けを取らない個性

 コメント:ほぼラスボス

 コメント:兄者とどっちがすげぇのか

 コメント:兄者は裏ボスだから


「じゃあそろそろマシュマロ読んでいきますか」

「そうだね。八重ちゃん、お願いしていいかな?」

「任されました!えーっと──」


 マシュマロ

『兄者とパイセンの夫婦認定についてどう思う?』


「てぇてぇッスね!」

「完全にリスナー目線じゃねぇか!」

「紅葉ちゃん、兄者みたいなツッコミ〜」

「意識しました」

「ぶっちゃけ、パイセンはどうおもってんの〜?」

「えぇ?あ、うん……。一応ほら、兄者くんも立場とかあるから、基本はスルーってことにしてるんだけどね」

「兄者と話したん〜?」

「前にちょっとね」

「てぇてぇッスね〜」

「椿、ちょっと黙ってね」

「サキサキ先輩こわっ!」

「あ、でもね、兄者くんの立ち絵って油取り神さんが描いてるでしょう?」

「アタシのママ〜」

「確か、桜先輩のママってスミスミ先輩と同じじゃなかったッスか?」

「そうだよ。だからね、私と春ちゃんは姉妹だから、兄者くんとは夫婦、みたいな話を聞いたんだよね。雪精さんから」

「なるほど、その手があったッスね……これはもう既成事実ッス!」

「おい黙れ甘鳥」

「サキサキ先輩!?兄者先輩が憑依してるッスよ!?」

「まぁ、でもほら、兄者くんはそういうの嫌がりそうだから」

「あ〜、ま〜ね〜」


 コメント:雪精公認夫婦てぇてぇ

 コメント:さっさとくっつけよこのやろう

 コメント:パイセン義姉理論ニキまじ天才

 コメント:発端は姫の言い間違いだけどな

 コメント:兄者って結構パイセンのこと避けてるイメージあるの俺だけ?

 コメント:晩酌の時だけだぞ

 コメント:パイセンは酔うとめんどくさいらしい

 コメント:一方……


「あのですね、これのせいでわたしが負けヒロイン扱い受けるんですよ!」

「だって、負けヒロインじゃないッスか」

「まだ負けてないから!というか、兄者さんそういうの全部はぐらかしますよね」

「あはは……多分、私たちの配信がしやすいようにって気遣ってるんじゃないかな」

「パイセン、どゆこと〜?」

「ほら、兄者くん優しいから」

「「それはない(ッス)〜」」

「即答なんだ!?」

「まー、カップリングって否定派が必ず一定数はいるものですし」

「そうそう。だから、できるだけそういうのはスルーした方がいいって、兄者くんも言ってたんだよね」

「そう!まだカップリングは成立してないんです!つまりわたしも負けてない!分かりましたか?」

「それだと別のカップリングになるんじゃ……」

「サキサキ先輩、甘いッスよ。チョコかけたシュークリームくらい甘々ッスよ」

「なにぃ?」

「気付かないんッスか?これは正妻の余裕ッスよ」

「正、妻っ……」

「もはや否定も肯定もする必要がないという、スミスミ先輩の無言の意思表示ってことッス!」

「えっと……違うよ?」

「つまり、既にサキサキ先輩は負けてるんッス!兄者先輩とそういう話が出てくることすらない時点で、お友達ルート確定なんッスよ!」

「なん、だと……?」

「あ、私の話は聞いてない?」


 コメント:正妻戦争始まってて草

 コメント:姫だけ蚊帳の外

 コメント:つばきちも負けてね?

 コメント:パイセンの一人勝ちなんだよなー

 コメント:パイセンのヒロイン力が高すぎる

 コメント:なんでや!八重咲かわええやろ!

 コメント:落ち葉がなんか言っとるぞ

 コメント:八重咲がお友達は解釈一致すぎて笑う


 俺の知らんところで知らん戦争が始まってるんだが。

 なんだよこれ。

 ポケットの中で終わらせてくれよこんな下らん戦争。

 つか争う価値がねぇよ。

 兄者のメインヒロインになって得るもんとか舎弟リスナーのおめでとうくらいだぞ。

 ……あぁ、それで赤いスパチャが飛んでそう。

 めっちゃ得るもんあったわ。

 何その優勝賞金。

 貰っていいもんじゃなくね?


「……いや、わたしはまだ負けてない」

「往生際が悪いッスね、サキサキ先輩」

「二人とも、テンションおかしくないかな?」

「二人では遊ぶ時大体こうだよ〜」

「そうなんだ……」

「なぜなら!スミレ先輩はお友達以下だからです!」

「矛先が私に向いたんだけど!?」

「いやいや〜、どう見たって以上ッスよ〜」

「じゃあ、スミレ先輩が兄者さんとどれだけリアルで会いました?」

「え?あぁ、うーん、みんなでお泊まりしたのと、事務所でオフコラボした時とかかな?」

「そう!所詮スミレ先輩と兄者さんはビジネスパートナー!一方わたしは、一緒にゲームしたり、アニメや漫画の話で盛り上がる仲!スミレ先輩よりはるか先にいると言っても過言じゃないんですよ!」

「私、今ひどいこと言われてる?」

「さ〜?パイセン、ビジネスパートナーってなに?」

「えっとね──」

「サキサキ先輩、それがお友達ルートって言ってるんッスよ」

「なに?」

「そういう小さなマウントを取らないと優位性を見いだせないのが、もう負けヒロインじゃないッスか」

「誰が……」

「どうしたんッスか?サキサキ先輩。あ、サキサキって原作でも主人公に煽られるだけ煽られてヒロイン戦争に参加すら──」

「うるせえ!!!まだ負けてないんじゃあ!!!」


 コメント:草

 コメント:甘鳥の煽りスキル高すぎw

 コメント:イラつかせることに関しては天才

 コメント:人の嫌がることを進んでやる

 コメント:舎弟なだけはあるドSムーブ

 コメント:パイセン何も言ってないのに勝ってる

 コメント:そりゃ正妻やから

 コメント:すでに決着ついてるやんw



 なんだこれは。

 メンツだけでもカオスなのに、状況まで混沌極めちゃってるんだが。

 流石のニャル子さんも這い寄るの躊躇するレベル。


「おもしれぇなこれ!」

「どこがだ」

「プロレス芸ってのはこういうこと言うんだよ」

「知らんが」

「兄者の場合、プロレスってか一方的な暴力になるからな!」

「褒めてねぇな。今からしてやろうか物理的に」

「やめろやめろ、悪かったって」


 まぁ、つまりはそういう事だ。

 配信ってのは1つのエンタメだからな。

 これはそういう演出ってわけ。

 八重咲の叫びが迫真過ぎて引かれそうだが。

 てか現在進行形で俺が引いてんだけど。



「大体、それなら椿ちゃんも負けヒロイン枠でしょ!」

「ツバキは基本兄スミてぇてぇってスタンスなんで。あとツバキは正妻ってより愛人枠ッス」

「それはそれで違うくない!?」

「どうしてこんな事に……」

「あ〜、夜斗くん見てるよ〜」

「夜斗君?」


 サイサリス・夜斗・グランツ:兄者の嫁になったらDVされるぞ

 コメント:夜斗w

 コメント:関白宣言

 コメント:亭主関白で済まないだろw

 コメント:ほぼ犯罪予告w

 コメント:男子禁制どこいった

 コメント:俺らも見とるし


「あ〜、しそ〜」

「暴力振るうの?」

「兄者ふつ〜に殴るよ」

「兄者先輩、まじッスか」

「兄者さんって、身内にだけは厳しいですよね」

「そうかも。春ちゃんになら何しても良いくらい思ってたりするのかな」

「あるッスね。あの超ドS鬼畜DV大魔王ッスし」

「ほんとひどいよ〜あのクソ兄者〜」



 言いたい放題だなこいつら。



「じゃあ次いきますか」


 マシュマロ

『兄者Vデビュー求む』


「もうトークテーマじゃないね」

「ただの目安箱になってますよねこれ」

「兄者先輩は絶対にやだって言うッスよねやっぱり」

「だと思うよ」

「今の仕事が大好きとかッスかね?」

「ん〜、それはないと思う〜」

「兄者くん、自分が主役になるのが嫌だって前に言ってたかな」

「どういうことですか?」

「私もちゃんとは聞けなかったんだけど……照れくさいとか?」

「俺の配信を見ろ!って感じじゃないッスよね兄者先輩って」

「でも兄者さんがデビューしたら、一瞬で追い抜かれたりしそうですよ」

「すごい人気だもんね、兄者くん」

「兄者先輩がデビューしたら、まずはリスナーの呼び名からッスね」

「あれ、舎弟じゃなかったっけ〜?」

「一番マシとは言ってたッスけど、公認じゃないッスよ」

「何がいいですかね」

「春ちゃんが付き人さんで、そのお兄ちゃんだから……」

「家臣、とか?」

「それだと偉そうッスね〜」


 コメント:外様大名

 コメント:大名じゃねぇか

 コメント:魔王軍兵士

 コメント:それどっかの魔王から盗んでね?

 コメント:あっちの魔王はもう滅びた

 コメント:新魔王軍

 コメント:魔王軍でよくね?

 コメント:四天王もおるし


 なんか見るに耐えねぇ話題になって来たな。

 大喜利始まってるまであるぞこれ。

 あと夜斗のコメントなかったらどうオチをつける気だったんだか。

 まぁ何でもいいが。


「兄者、コメント送ったらなんか兄者が責められてんな!」

「話題に出た時点で既にだるいっての」

「まぁ杞憂民が湧く前に引くのがベストだしなこういうのは。ちょうど良かったんじゃね?」

「知らんっての。つか夜斗、腹減ってねぇ?」

「プリンは要らねぇぞ!」

「いや、もっといいもんがある」

「ほう」


 思えば俺が出てない配信を見るのはかなり久しぶりだ。

 いつもはエゴサがてらに流し見してた程度だし。

 まぁ、だからなんだって話だが。

 こういうのを見て学ぼうとか思ってねぇし、まず配信者じゃねぇわけで。

 ただ、楽しそうにしてんなと、人並みな感想しか出てこんわ。





















「あれ?兄者〜、アタシのシュークリームは〜?」

「夜斗が食った」

「はァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?」


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― 新着の感想 ―
[一言] 兄者の、ファンの名前、愚民共とかでいいんじゃね?
[一言] サキサキ(俺ガイル)はあの立場だから良いんだ。もっと絡んできてたら推してなかったもしれない。(でも、もうちょっと絡んでも良かったんじゃないかなぁとも思う自分がいるけどpixivで我慢する)
[一言] 姫虐助かる
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