第64話 「ワタル、ピンチ!呪われし悪魔登場ッ!」
前回までのあらすじ! 呪われた遺物である“銀の心臓”を探し求めて、以前肝試しを行った洋館に再びやってきたワタルたち! そこで捜索を開始して早々に、鍵のかかった怪しい部屋を発見! ワタルは圧倒的筋肉を用いてドアをぶち破り、中へと進んでいくのであった!
「よし、最上階についたなッ! それじゃあ部屋を確認していこうッ!」
そう叫びながら、最上階の部屋を時速60キロの安全運転で一つ一つ確認していくワタルッ!
「ここは問題なしッ! ここも問題なしッ! ここは……武ッッッ!!!??? 鍵がかかっているッッッ!?!?」
ワタルはそう言いながら、ドアノブをガチャガチャと動かしたッッ!!
「大丈夫ですか? もしかしてその部屋、また前みたいに魔法の力で鍵がかかっているんですか?」
心配そうな声で駆け寄ってくるアリアッ!
「いや、今回は大丈夫だッッ!!」
バキバキバキッッッ!!!
そして彼は、鍵のかかったドアを片手で引きちぎるッッッ!!!
「よし、入るぞッ!」
鍛え上げられた肉体こそがマスターキーッッ!! それが熱血武闘派高校生ワタルの信条であるッッッ!!!
「それにしても……随分と奇妙な空間だな……」
部屋に入るなり、神妙な面持ちで言うリベリオンッ!
彼女の言う通り、その部屋は異質な構造になっていたッ!
部屋の面積はかなり広く、ちょっとした広間ぐらいのスペースはあるッ! しかし家具が一切置いていない空き部屋で、中央にポツンと木造の“祠”が置かれていたッ!
その祠は四角い箱をいくつか積み重ねたような形状をしており、見るかに“ヤバイ”オーラを醸し出しているッッッ!!!
「気を付けろ、ワタル。祠とは神聖なものだ。下手に扱うとバチが当たるかも知れん」
「うむ、たしかにそうだなッッ!!」
リベリオンの忠告に素直に頷くワタルッ!
すると彼はおもむろに祠の前へと歩み寄り、
「破ッッッッッ!!!!!」
ドゴオォォォォォンッッッッッ!!!!!
瓦割りの要領で祠を破壊ッッッッッ!!!!!
一瞬にして祠は無残な瓦礫の山へと変貌を遂げたッッッッッ!!!!!
「何やってるんですかワタルさん!!!!!!!!!!」
「銀の心臓の在処を探るためだッッ!! 神様も分かってくれるだろッッッ!!!」
一切悪びれずに言うワタルッッ!! これで彼は第36話に引き続き、2回祠を破壊したことになるッッ!!
「そんなことよりも……見ろッッッ!!! 祠の中に、妙なものがあるぞッッッ!!!」
彼はそう叫び、祠の残骸を指差したッ!
そこには確かに、木片に紛れて鈍い光を放つ“何か”があったッッッ!!!
「もしや……それが“銀の心臓”か? 気を付けろワタル、それには絶対に触れるな!」
リベリオンが眉間にしわを寄せて言うッ!
それに対してワタルはッッ!!
「えッ、何か言ったかッッッ???」
もう既に、触れていたッッッ!!!
その“何か”にッッッ!!!
聡明な読者の皆様であればお分りだと思うが、肝心な時に難聴になってしまうのはラノベ主人公の必須ステータスであるッッッ!!!
「それにしてもこれは……凄いッ! 本当に銀色だッ!」
ワタルはそう言いながら、手にとったものをまじまじと見つめたッ! それは成人女性の拳一つ分ほどある心臓で、色は鈍い銀ッ! そのため“臓器”というよりも“彫刻”の類のものに見えなくもないッ! 今にもドクンドクンと動き出しそうなそのリアルな造形は、素晴らしく見事であるッ!
「ワタルさん! 体の方は大丈夫なんですか!?」
アリアがすかさず声を上げた!!
「体ッ!? いや、なんともないぞッ!」
だがしかし、その時ッ!
彼の手中の心臓が、突如紫色に光りはじめたッッ!!
「武ッッ!?」
焦ったワタルは、たまらず心臓を地面に放り投げるッ! その心臓は徐々に光を増幅させていき、気が付けば目も開けていられないほどのまばゆさにッ!
「「「!」」」
慌てて目をふさぐ一同ッ!
そして数秒後ッ!
光が収まったので目を開けてみると、なんとそこには一人の人間が仁王立ちしていたッ! 代わりに心臓がなくなっているので、あれがこの人間に変化したと考えるのが妥当だろうかッ!?
いや、だがまだ“人間”かどうかは分からないッ! 全身は漆黒のローブで覆われており、顔も深くかぶったフードのせいでよく見えないのだッ!
「誰だお前は!」
リベリオンは鋭く言い放ち、慣れた手つきで懐から剣を抜いたッ!
すると相手が、厳かに口を開くッ!
「私の名はロータス……貴様らに力を与えてやろう……」
その声は、意外にも比較的若い男性の声であったッ!
「その前に、お前のことを教えろッ! お前は誰だッ!」
戦闘態勢に入りながら尋ねるワタルッ! その構えには一切の隙がないッ!
「私は悪魔……この世界とは違う、“冥界”から来た存在……私の心臓に触れたものに、無限の力を与えてやる……」
ロータスと名乗る者の発言は、全てが怪しかったッ! しかし彼のオーラは間違いなく異質であり、油断ならない相手なのは間違いないッ!
「どうする、ワタル……逃げるか?」
リベリオンはロータスに剣を向けたまま聞いてきたッ! 対するワタルは、拳をグッと握りしめて答えるッ!
「よくわからんから……倒すッッッ!!!」
そして彼は間髪入れずに地面をけり、ロータスに向かって走り出したッ!
「ほう、向かってくるというのか……何故だ? 私は貴様らに力を与えてやると言っているのだぞ? 悪い話ではあるまい」
「悪魔の言うことは聞いちゃいけないって、相場が決まってるんだよッ!」
“悪魔に耳を貸すは愚か者の所業なり”――これはかの有名な武人、宮本武蔵が言っていた言葉でもあるッッ!!(諸説あり)
仁王の形相で叫びつつ、ロータスに向けて正拳突きを放つワタルッ! すると相手は必要最小限の動きで左手を振り上げ ―― ワタルの拳を、受け止めたッ!
「~~~ッッッ!!!」
渾身の一撃を片手で止められてしまったということに、少なからずショックを受けるワタルッ!
「ほう、貴様……ただの人間風情にしては、強いな」
ロータスはそう言うと、空いた右手で自らのローブを掴み、脱ぎ捨てるッ!
こうしてあらわになった彼の姿は、一見すると一般的な成人男性であったッ! 彫りの深い整った顔立ちで、肌は病的なまでに白いッ!
しかし背中には黒い翼が、頭には山羊のような巻き角が生えており、確かに悪魔と言った風貌であるッッ!!
「私に歯向かったのだ、ただで帰れると思うな」
顔色一つ変えず、COOLに言い放つロータスッ! しかしワタルは、諦めないッッ!!
「奮ッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!」
体をその場でくるりと360度回転させ、敵の顔面目がけて回し蹴りッ! その最高時速は、なんと250キロにまで到達していたッ!
だがッ!
「おそいな……」
ロータスは素早く後ろに引き、ワタルの回し蹴りをいとも簡単に避けるッ!
「次は、こちらから行くぞ」
そして腰を低く落としたかと思うと、目にも止まらぬ速さでワタルの背後へと移動するロータスッ! その動きは、“高速移動”などといった生ぬるいものではなく“瞬間移動”のそれであるッ!
「魔法かッッ!?」
驚きながらも急いで振り向くワタルッ! しかし、ロータスの手刀の方が圧倒的に速いッ!
ワタル、危うしッ!
ロータスの手刀がワタルの喉を切り裂くかと思われた、その瞬間ッッ!!
「――はぁっ!」
ガキィィィンッッッッッ!!!!!
「り、リベリオンッ!」
ワタルとロータスの間に割って入ったリベリオンが、ロータスの手刀を剣で受け止めたッ!
「2対1か……久々に面白くなりそうだ」
ロータスはリベリオンの乱入に一瞬驚きながらも、口角を吊り上げ薄く笑うのであったッ!
次回、「やべえ!悪魔めっちゃやべえッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]宮本武蔵名言集……異世界転生出版
[2]悪魔にありがちな特徴一覧……異世界転生出版




