第56話 「鍋が爆発!ワタル、逃げるッ!」
前回までのあらすじ! 無事に“ヌードリャレ・リブル・モテューテュ~シェフの気まぐれパーツを添えて~”を作ることに成功したワタルとリベリオン! そしてワタルは調子に乗って、5人分を一気に作るという暴挙に出た! 果たしてワタルの運命や如何に!
「うおおぉぉッッッ!!! 気合いだああぁぁぁッッッ!!!」
ワタルは叫び、熱血バイブレーションを開始ッ! そして、具材が入れられた寸胴鍋の側面に触れたッ!
圧倒的スピードッ! 圧倒的摩擦熱ッ! しかし鍋の中には先程の5倍の量の具材が入っているので、中々沸騰しないッッ!!
「お、おい、大丈夫なのか……?」
心配になったリベリオンが声をかけるッ!
「平気だッ! これぐらいなんてことねぇッ!」
白目をむきながら答えるワタルッ! 恐らく平気ではないッッ!!
おぞましい速度で振動する彼の両手は、もはや“あまりにも早すぎて逆にゆっくりに見える”というレベルにまで到達していたッ!
しかしその時、事件が起こるッッッ!!!
ボンッッッッッ!!!!!
な、なんとッ!
急激に熱を加えられて沸騰したスープがッッ!!
爆発したッッッ!!!
「ウゲーーーーーッッッ!!!」
衝撃によって吹き飛ばされるワタルッ!
「おい大丈夫かワタル!」
慌てて駆け寄るリベリオンッ!
「だ、大丈夫だ……ッ!」
だがしかし、料理の方は大丈夫ではなかったッ!
アツアツのスープが、キッチンの隅々までものすごい勢いで飛び散っていくッ!
そして、引火ッッッ!!! 厨房のあちこちで火の手が上がったッ!
「な、何イィィィィーーーッッ!?」
普段ろくに掃除もせず油まみれになっていた厨房が、一瞬にして火の海と化すッ!
「いや、いくらなんでもこれはおかしいだろ!」
「ちくしょうッ!! あのおっちゃん、全然厨房を掃除してなかったんだなッ!?」
燃え盛るキッチンを見て、店内の客たちは皆我先にと店を飛び出していったッ!
「ワタル! 私達も早く逃げるぞ!」
「お、応ッ!」
まさかの展開にあっけにとられながらも、ワタルとリベリオンはなんとか店から脱出することに成功ッ!
一方その頃ッ!
「いやー、ぎっくり腰がすぐに治ってよかったですね!」
「まったくだよ! それにしても、ワタル君たちはちゃんとやれているかな?」
病院でぎっくり腰を治したスケルトンの店主は、アリアと談笑しながら自分の店へと向かっていたッ!
「……あれ? なんか皆騒がしくないですか?」
アリアが周りを見渡しながら口を開くッ!
「ん? そうだねー、近くで何かトラブルでもあったのかなー?」
スケルトンの店主は、不審そうな表情で言ったッ! もっとも、スケルトンなので不審そうな表情なのかどうかわからないのだが!!!
「……あっ、あっちの方で煙あがってません?」
そう言って彼女は遠方を指さすッ!
「お、本当だね。……っていうかあっちって、僕の店の方じゃない!?」
そして数分後ッ! スケルトンの店主は、目撃したッッ!!
自分の店が――全焼している光景をッッッ!!!
「あ、あわわ、あわわわわ」
燃え盛るポイズン食堂を目にして、泡を吹いて倒れるスケルトン店主ッ! こうして彼は無残にも、病院へと再び向かうことになったッ!
ちなみに火は数時間後に無事鎮火! 賠償金についても、ワタルの圧倒的財力のおかげで簡単に解決したのであった!
めでたしめでたしッ! 圧倒的めでたしッッ!!
まあそれは置いといて数日後ッ!
ワタルがいつものようにスカイ王国を時速150キロでランニングしていると、前方に膝をついてがっくりとうなだれる人物を発見したッ!
歳は25程で、髪を茶色に染めた今風な出で立ちの青年であるッ! 黄色いパーカーに黄色いズボンと、とにかく派手な色合いの服装が特徴的だッ!
「おいどうしたお前ッ! 感染性胃腸炎にでもなったかッ!」
慌てて駆け寄るワタルッ! するとその人物はパッと顔を上げ、口を開いたッ!
「そんなんちゃいますわ! ワイは今、絶望してんねん!」
唐突な関西弁にワタルは面食らったッ! しかしそれも無理はないッ! ここは異世界ッ! 普通ならば、関西弁などあっていいはずがないッ! しかしこの世界に“普通”などという概念は不要ッッッッッ!!!!!
読者の皆様には、“常識”を捨ててこの小説にかかって来て欲しいッッ!!
「それで……一体何に絶望しているんだッ!?」
するとその関西弁の青年は、半泣きで話し始めたッ!
「ワイの名前は難波ボケル! 実はワイは、今度行われる“スカイ王国最強漫才王者決定戦”、通称“S-1グランプリ”にコンビで出場する予定やったんや! それなのに相方が突然盲腸になって、漫才の練習ができなくなってしまったんやー! うわーーーん!」
そして大声で泣き出すボケルッ!
「そうか……それじゃ、頑張れよッ!」
ワタルとしてはぶっちゃけどうでもいいので、そう言い残して早急に走り去ろうとしたッ!
が、しかしッ!
「うわーーん! 待ってくれやアンターーー!」
泣きじゃくりながら足にしがみついてくるボケルッ! 俊敏であるッ!
「な、なんだッッッッッ!!!!!」
「頼んますわ! 今回だけでええから、ワイの相方になってください!」
「いやでも俺漫才とかできないからッ!」
しかしボケルはあきらめないッ!!!!!
「ワイの目はごまかせません! アンタのその広い肩幅! 太い腕! でかい手のひら! アンタは間違いなく、漫才界の1000年に1人の逸材や!」
それを聞いて衝撃を受けるワタルッ!
「何ィィィーーーッッッ!? 一体なぜだッ! なぜガタイが漫才に関係あるんだッ!」
「関係おおアリやで! アンタのその恵まれた肉体は……鋭い“ツッコミ”をするためにあるんや!」
「ツッコミ……だと……ッ!?」
「そう! 漫才と言うのは、ツッコミとボケの調和で成り立っとる! どんなにおもろいボケをかましても、ツッコミにパワーがなかったら意味がないんや! でもアンタのその肉体やったら……えげつないぐらい力強いツッコミが出来るはずなんや!」
ボケル、力説ッ! それを聞くワタルも、段々まんざらではなくなってきたッッ!!
「そ、そうか……それじゃあ、やってみるかッ! 漫才ッ!」
「その調子や! ところでアンタ、名前は!?」
「俺はワタルッ! 伊藤ワタルだッッ!!」
それを聞いたボケルが、顔をぱぁっと輝かせて笑うッ!
「ワタル! ええ名前やないか! ほな、ボケルとワタルで、S-1グランプリ優勝を目指すで!」
「応ッッッ!!!」
こうしてッ! ワタルとボケルの漫才への挑戦がッッ!! 幕を開けたッッッ!!!
次回、「炸裂!ワタルの必殺ツッコミ拳ッ!」に続くッッッ!!!
・参考文献
[1]初心者向け・関西弁のしゃべり方……異世界転生出版




