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26話『けれど安心して 再会の日は訪れるから』

 今、なんて言った。


 男か女か、大人か子供か、人間か神様かすらも定かではない、正体不明のこの声は。

 スピーカー越しで俺に……何を告げた……⁉


『私が誰だか分かるな? 近くに警察がいるだろう。この会話の内容を漏らしたら彼女を殺す。無論、気取られることも許さない。警察が動いた時点で美原夏野(みはらなつの)の命はない。理解したかな?』


「ぁ……え……」


『もっとも――彼女の頭部をプレゼントしてほしいというなら、話は別だがね』


 まさかこいつは……ホワイトキラー、なのか?


 一昨年の十二月二十五日に、十七夜月(かのう)夫妻とその娘であるさくらを殺した犯人。


 現場に一切の証拠を残さない完全犯罪をやってのけ、警察内に協力者を持ち、俺に執着する連続殺人鬼。


 決着を付けて過去の清算をしなければ、未来に進むことすらできない。

 冬馬白雪が――復讐を誓った宿命の対戦相手。


 それがわざわざ直接電話をかけてきて、夏野を誘拐したと言っているのか……⁉


『どうした? 理解したなら返事をしたまえ。でなければ宮下近衛(みやしたこのえ)に感づかれるぞ』


「っ……、あ、ああ……分かったよ……」


 声が震えているのが自分でも分かった。

 それだけじゃない。スマホを握る手も、体を支える足も――全身が、異常なほどに恐れ慄いている。

 

「どうかしましたか?」


 明らかに挙動不審になった俺を見て、宮下が聞いてくる。

 まずい――とにかく今は誤魔化さなければ。この電話を乗り越えるのが最優先だ。


「いや……何でも?」


 俺は必死に笑顔を浮かべて返事をした。


「……なぜ疑問形?」


 それから自然に振舞うことを念頭に、少しずつ宮下と距離を取る。

 とはいえここは地下駐車場、あらゆる音が響きやすい空間だ。

 つまり通話に応じる俺の声は、誤魔化せない。直接的な言葉を出せばすぐに気づかれるだろう。


 視線、声、体の動かし方、言葉、些細な仕草、呼吸の間――すべてを完璧に偽らなければ。


「……ッ……」


 手汗が滲む。落ち着け。できることを考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。

 ッ……そうだ。まずは前提の確認だ。


「ああ、ところで近くに夏野がいるのかな? 声が聞こえた気がしたんだけど」


 夏野が攫われたのかどうか、まだ疑問の余地が残されている。

 相手のでっちあげだという可能性が。

 この電話がただの悪戯電話だという可能性が……!


『彼女は気を失っている。代わりに写真を送ろう。私が彼女を預かっているという確固たる証拠だ。誰にも見られるなよ? 死体が増えるのは存外に面倒だ。それともう一つ、念のために提示しておこうか。『白雪、私はいつまでも待っているよ』――」


「ッ――――」


 それは以前、神無月(かんなづき)経由で受け取ったホワイトキラーからのメッセージ。

 一般人やマスコミには公表されていない、警察と俺、そしてホワイトキラー本人しか知り得ない情報。


 間違いない、ヤツ本人だ――。


 ドクンと、鼓動がいっそう早まるのを感じた。


 神無月のときのようなタイムリミットや特別なルールはおそらく、ホワイトキラーには存在しない。


 強いて言えば、ホワイトキラーの動機が俺を通じての冬馬夫妻への復讐なら、それがルールだ。


 つまりこいつは、殺すと言ったら本当に殺す。

 僅かでも選択肢をミスすれば、何の躊躇もなく即座に夏野が殺されてしまうんだ……!


「……そうか……それで?」


 震えてカチカチと音を立てそうになる奥歯を、必死に噛み締めながら言う。


『そろそろ君と直接会おうと思ってね。この電話は招待状というわけだ。しかし、私は自らの茶会に招かれざる客が訪れることを絶対に認めない。美原夏野はそのための保険だよ』


 不気味だ。スピーカーから聞こえてくる声は、ボイスチェンジャーほど露骨なものではないが、おそらく加工されている。

 声色を変え、特徴を消し、人間のフリをしている機械が紡いでいるような音。


 だというのにヤツからは余裕が滲んでいる。


 一刻も早くこの通話を終わらせたい――。


 世界を俯瞰する神様のような余裕。圧倒的強者の放つ覇気のようなものが、俺の復讐心を恐怖という鎖で縛りつけるのだ。


「っ……言われなくてもそっちに行く。それで場所は? 時間は決まってるのか?」


『ふふふ、急かすなよ。私としてはもう少し君の演技っぷりを見ていたい。が――まあいい。ボロを出されても困る。一度しか言わないから聞き逃さないようにな?』


 焦る俺をからかうように、ホワイトキラーが告げた。


水波(みななみ)市の北に教会がある。警察の監視を撒いて一人で来い。時間はそうだな、午後八時だ。それなら遅刻はしないだろう? ああ、予報では雨が降るようだ。体を濡らして風邪を引かないように気を付けろ。では――待っているよ、白雪』


 そう言って通話は切れた。

 重圧から解放された喜びも一瞬、すぐに夏野がホワイトキラーに攫われたという現実が、重く俺の前に立ちはだかる。


 何よりも――。


「どこかにお出かけですか? 場所を教えていただけると、こちらとしても助かるのですが」


 俺を監視する女警官、宮下の存在だ。

 彼女を撒いて教会に行く――後先を考えなければ可能だろう。


 しかしそれは――いや、やるしかない。夏野の命が掛かっているんだ。


「……織姫(おりひめ)先輩からウチでパーティーをしないかって。ほら、今日は夏休み最後の日だから。俺はこれからお菓子の買い出しとか、それと……夏野にプレゼントでも買いたいな、と」


「そうですか。よければ商店街まで乗せていきますが?」


「それじゃあお言葉に甘えて――ああ、でもせっかくならデパートのほうがいいかも。色々見て回れるし」


 それに――あなたを撒くのに好都合だからな。


 直後、俺のスマホには、目隠しをされた状態で椅子に座っている夏野の写真が送られてきた。


 暗闇の中、スマホの画面が発光した。

 着信――番号は宮下のものだ。内容は聞かずとも分かる。

 俺は現在、彼女の監視下を逃れて、教会の正面扉の前に居た。


 時刻は午後八時一分前。

 ここまで来るのは、思いのほか容易いことだった。


 トイレに行くと言って非常口からこっそりデパートの外に出るつもりが、彼女が入り口までついてきたことには少し焦りを覚えたが、その後、夏野にプレゼントする服を試着してみてくれないかと言いくるめ、試着室に閉じ込めている間に逃走は成功した。


 宮下はすぐ異変に気付いたが、ホワイトキラーが電話で告げた通り降り出した雨が、逃走の手助けとなった。


 そして今に至る――。

 

 額を流れる雨粒を払い、俺は濡れた手で教会の扉を開けた。


「――――」


 内部にはいたるところに、火を付けた蝋燭が立てられていた。

 まるでこれから、儀式でもおこなうんじゃないかと言わんばかりの光景だ。

 見たところ本来の照明は機能していないようだが、大量の蝋燭のおかげで視界は最低限確保されている。


 建物の大きさは、それなりに立派な部類ではなかろうか。

 幾何学模様が描かれた床に、吊り下げられた照明、壁の上層には万華鏡を覗いているかのような鮮やかなステンドグラスの窓があり、一際存在感を放っている。

 

 正面に目を向ければ、一度に七人は座れそうな椅子が何列も並び、それを左右に分断するようにレッドカーペットが敷かれている。

 その先にある祭壇には燭台が置かれ、さらに奥には巨大な十字架がそびえている。


 ……誰もいない。少なくとも見える範囲に人の気配はない。

 場所を間違えた?

 いや水波市の北にある教会はここだけだ。だとすればホワイトキラーは……、攫われた夏野はどこに?

 

 ごくりと唾を飲みこんで、俺は足を動かした。



《よく来てくれた――白雪》



 正体不明の声は、天井から降り注ぐようにして俺の耳に届いた。


「ッ――――」


 とっさに振り返る。

 すると教会の入り口の真上に、踊り場のようなスペースが見えた。

 壁に沿うように建築された螺旋階段――あれを使い、踊り場、そして教会のバルコニーへと行ける構造だろう。


 その中層、ちょうど俺が見上げる形になっている二階の空間に、二つの人影があった。


 片方は夏野だ。近くに光を放つ蝋燭があったおかげで判別できた。

 彼女は目を閉じて、椅子に座っている。おそらく眠らされているのだろう。


 ならばもう一方の影は、と眼差しを向けるが、蝋燭の小さな明かりでは光量が足りず、ぼんやりと誰かが椅子に座っているということしか分からない。


「ホワイトキラー……本人なのか……!」


 震えそうになる声を怒りでねじ伏せ、叫ぶように声を上げた。


《ああ。いかにも》


 スピーカー越しに聞いた声と同じだ。

 

「証拠は? 本当にお前が、十七夜月事件を起こした犯人なのか……!」

 

 暗闇に佇む人影に目を凝らしながら俺は一歩、二歩と後ろに下がる。

 ダメだ、この位置でも見えない……。


《ふ、ふふ――会話で時間を稼ごうとしても無駄だ。そのフロアから私の姿が見えることはない。私が自ら素顔を晒そうと思わない限りは、ね。まあ落ち着きたまえよ、白雪》


 どうにも、俺を挑発しているようにしか聞こえない。

 先ほどの通話では恐怖に支配されかけたが、こうして目の前にすると――ああ、安心するよ。


 俺の中の復讐心は、怒りは、業火は一片たりとも衰えちゃいない。


「……ッ、落ち着いていられるか! お前が! お前が……‼ 義父さんと義母さん、そしてさくらを殺したんだ! 俺の大切な家族をなァ……ッ‼」


 近くの椅子の側面に拳を叩きつけ、この感情を余すことなく解き放った。

 夏野が眠っていてくれてよかった。こんな姿、彼女には見せたくない。


《君が激昂する姿は珍しい。動画に収めたいところだよ。しかし水を差すようで恐縮だがね、白雪。――君は、私のほうから正体を明かしてもらうために、候補者を五人にまで絞り込んだわけではないだろう?》


「なッ……どうして……、それを知っている……!」


 反射的に俺は内ポケットに意識を向けた。

 そこには五枚の写真が入っている。ホワイトキラー候補者の写真が。


 写真のことは誰にも話していない。家には誰も来ていない。誰かに盗み見られることはない。

 だとすれば、なぜだ――。


《私は君の理解者だ。ゆえに、君のことは何でも知っている。君が事件後に精神病院に入れられていたことも、そこで精神科医の権威から教えを受けたことも、今年の四月に桔梗高校に入学したことも、そこで美原夏野、琴平花灯、風見織姫と出会い、数々の問題と対面したことも――神無月秋夜の事件で友である高砂楓を殺人者にしてしまったことも、すべて、知っているとも》


「……ふざけるな! 神無月を殺すよう楓に暗示をかけたのはお前だ! 神無月を殺人鬼にしたのもお前が事件を起こしたからじゃないか……‼」


《いかにも。あの事件はすべて私が仕組んだ》


 あっさりと、ホワイトキラーは言った。


「は、はあ――ッ?」


 自分が黒幕だと。大勢の人間の人生をこの手で狂わせたのだと。

 何者かも分からない声で、あっけらかんと言ったのだ。


「おッ……お前は……何なんだ……ッ。何が目的でこんなことするんだ! 今度は……今度は俺の前で夏野を殺してみせるのか⁉ それでお前は何が楽しいんだ! 何が満たされるんだ! なあ……ッ‼」


《やれやれ。君はこれまで多くの人間の心を紐解き、時と場合によっては利用してきたじゃないか。ポケットに入れている五枚の写真はなんだい?》


 パチン、と指を鳴らす音が聞こえた。


《これはゲームだ。私が出題し、君が問題を解き明かす。そして今、君の手札は揃ったと私は判断した。時が来たのだよ。答え合わせの時間だ――冬馬白雪》


「答え……合わせ……?」

 

《ああ、君は持っている写真の人物の名前を言うだけで構わない。チャンスは五回。そのうちのどれかが正解すれば合格というわけだ。そう――たとえ四度間違えても、最後の解答が真実ならば私は自らの正体を明かそう》


 俺の解答が正しかった場合、ホワイトキラーはそれを誤魔化さず認める――嘘偽りなく、正体を晒す。

 乗らない手はない。

 いやそもそも俺に選択肢なんてあってないようなものだ。


 なぜなら俺は、夏野を人質に取られているのだから。


「一つだけ、聞いておきたい。お前は夏野を殺すつもりなのか?」


《ふふっ――いいや。君がこの場で真実に辿り着いたのなら、彼女は無傷で君に返そう。彼女が生還できる道筋は存在している。逆もまた然りだがね》


 俺は力強く奥歯を噛みながら、内ポケットの写真に手をかけた。

 覚悟を決めるしかない。


 武器は己の頭脳のみ――。


 それでも必ず真実を暴き、ホワイトキラーへの復讐を果たす。

 その果てに待つ未来へ、胸を張って歩き出すために――!


「分かった。答え合わせを始めよう!」


《よい返事だ。では、冬馬白雪――君が連続殺人鬼ホワイトキラーだと思う人物の名を述べよ!》


 パチンと、ホワイトキラーが指を鳴らした。

 それこそが、このふざけたゲームを終わらせる号砲。


 一枚目の写真を取り出し、俺を見下ろす人影へと突きつける。


「一人目――悪いがゲームはこれで終わりだ! ホワイトキラーの正体は富樫伊織(とがしいおり)! 五年前に詐欺師である俺の両親によって人生を狂わされた男、健三(けんぞう)の娘だ! 彼女は冬馬夫妻への復讐として俺に執着し、事件を起こした!」


 この説は、ここ数週間の間に調査を進め、一番可能性が高いと判断した推理だ。

 自信があると言ってもいい。

 だからこそ、この最初の一手でゲームを終わらせる――つもりだった。



《否定しよう。それは真実ではない》


 

「なッ……⁉」


 俺の推理はあっけなく切り捨てられる。


《安心したまえ。チャンスはあと四回もあるぞ? さあ――次の解答を言いたまえ》


 しかし迷い戸惑うこと、推理をやり直すことなど許されない。

 もう弾丸は装填されている。俺はそれを放つことしかできないんだ。


「ッ――二人目は三好暮十(みよしくれと)! 十七夜月事件で捜査を主導していた警官だ! 彼は当初、涼子さんの調べによって潔白だと思われていたが、涼子さん自身がホワイトキラーの協力者である可能性があるため、彼の潔白も証明できない! 動機は――」


《――否定だ。動機を語るまでもないぞ。それは真実ではない》


「だとすれば……三人目は名取愛衣(なとりあい)! 桔梗高校の職員で、勤務期間が二年未満なのは彼女だけだ! お前は俺に近づき、監視を行うために桔梗高校に――」


《――否定する。捨て石だな。それは真実ではない。おいおい、この程度か? それとも君は、お楽しみはあとに取っておくタイプなのか? あるいは貴重な一回を無駄にして逆境を演出しているつもりなのだろうか。ふふふ――》


 第一、第二、第三の推理は容赦なく打ち砕かれた。

 残された弾丸は二発――だがそのどちらもが、俺にとっては自分に銃口を向けるようなものだ。


「ぐッ……、なら……四人目は……ッ」


 この推理を口に出せば、もう二度と元の日常には戻れない。

 疑いを持った時点で、俺は既に彼女を信用できなくなっている。

 

 けれど――言わなければならない。


 真実がどれほど残酷なものだとしても、俺は受け止める。

 夏野との未来を守るために――俺は。


「ッ……、四人目は、桐野江涼子(きりのえりょうこ)だ――‼ 彼女にはホワイトキラーの協力者である疑いがあるが、ホワイトキラー本人である可能性は否定できない! 動機は冬馬夫妻と富樫健三の事件をきっかけとした夫の自殺――彼女は十七夜月家で俺を引き取る手筈を整えてくれたが、妹が自分とは違い、幸せな家庭を築いていることに対して嫉妬を覚えた! その積み重ねが事件を引き起こした! 違うか……‼」



《――――――》



 ――それは、これまでにない沈黙だった。

 窓を叩きつける雨の音だけが響き渡る。


 俺は、真実に辿り着いたのだろうか。

 だとすればそれは、喜ぶべきことなのか、悲しむべきことなのか。

 俺の中にはあらゆる感情が渦巻いていた。


「……はぁ……はぁ……」


 己の荒い呼吸が耳に届く。高鳴る鼓動が鼓膜を震わせる。

 どっちなんだ。正解なのか、不正解なのか。

 この永遠にも等しい静寂の拷問から、俺はいつ解放され――――、

 



《否定だ。それは、真実ではない》




「ぁ――――」

 

 膝から崩れ落ちた。覚えたのは安堵。涼子さんがホワイトキラーではないという喜び。

 しかし同時に襲ってきたのは、絶望だ。

 俺の解答権はあと一回。


 残った弾丸は、涼子さんが犯人であるという推理以上に恐ろしい推理――否、発想なのだ。


《どうした? 最初に言ったではないか。四度間違えたとしても、最後の一答が真実に辿り着いていれば合格だと。ほら言えよ。写真はもう一枚あるんだろう?》


「だ、ダメだ……、言えない。だってこれは、こんなものは……ッ⁉」

 

《ふふ、言ってしまえよ白雪。どれほど信じ難くても、事実を多角的に分析し、可能性を一つ一つ潰した結果残ったそれを――真実と呼ばず何と呼ぶ? 何を躊躇う。何を後悔する。なあ、白雪ィ――》


「…………ぐッ、……ああああああぁぁぁあ――ッ‼」


 刹那――一つの考えが組み上がった。


 ホワイトキラーは、俺が五枚の写真を持っていることを知っていた。

 だったら、それぞれの写真が誰を写したものなのかも、既に知っているんじゃないのか。


 これはゲームだ。俺とホワイトキラーの対戦。

 もし俺の解答が不正解であることを知りながら、ヤツが対戦を持ち掛けたとするなら。


 俺の勝ちはない。


 つまり俺の最後の発想は、間違っているということじゃないか。

 そうだ。そうじゃないとおかしい。

 ホワイトキラーが、俺に勝利を譲るためにゲームを用意する理由が分からない。


 だったら、俺は。

 

「五人目……ご、五人目はァ……‼」


 最後に残った写真の人物――その名を口にする。



























































「五人目は……十七夜月……さくら…………」






















































《ふ、ふふ、ふふふ――ふっふっふっふっ……‼ 「うふふふ、あはははははは! きひひひひ! ひひはははッ……クッハハハハハハハ‼ ハハハハハハハハハハ‼ アーハッハッハァァァ――――‼‼」


 静寂を切り裂く悪魔の如き高笑いが、教会中を駆け抜け、響き渡る。

 その声はこれまでの加工されたものなどでは、なかった。


 揺れる人影は手近な燭台を手に取り、ついにその正体を晒した。


 俺は涙で視界を滲ませながら、それを見上げる。



「ようやく――私に辿り着いてくれたな」



 銀髪碧眼――それはアルビノでありながらも、メラニン生成能力が僅かばかり残っていた影響で、白い髪が銀色へ、赤い瞳が青色へと変化を遂げた、まさしく"特別"な容姿だった。


 目も当てられないほど美しすぎると自称していたその姿を、俺はよく覚えている。


「そんな……ッ、……嘘だ……!」


 十七夜月さくら。あの運命の夜に死んだはずの少女が、そこにいた。

 彼女が十七夜月事件の犯人、ホワイトキラー。


 ――これこそが、真実。



「あまり残念そうな顔をするな。再会を喜べよォ、白雪ィィ――‼」



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