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悪の種子  作者: ひよこ1号


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団欒と領地見学

談話室へシヴィアと祖父が入ってくると、何だか妙な沈黙に支配されていて、シヴィアは少し眉根を寄せる。


「何かございましたの?」

「いや……うん、少し難しい話をしていただけだよ」


カッツェは誤魔化すように言い、フローレンスは焼き菓子を口に運んで微笑んでいる。

その横のミカエルは何も聞いていないというように、紅茶を飲んでいた。

シヴィアはそれ以上問い質そうとはしない。

カッツェが誤魔化した以上、この場で話すべき事でもないと判断したのだ。


「そう……でしたら宜しいのですけれど。明日はお祖父様と一緒に近くの村を巡る予定ですの。フローレンスは一番近い村に寄った時に残して行くので、ミカエル様、お願いいたしますね」

「はい。お任せください」


言いながら、シヴィアは祖父とミカエルを簡単に紹介する。

そして、空いているカッツェの隣に座って紅茶を飲み始めた。


「俺も同行して構わないか?」

「ええ、勿論。一緒に参りましょう」


カッツェの遠慮がちな質問に、シヴィアは昔の様に少女らしい顔で笑みを浮かべた。

やっと、あの一緒に過ごしたシヴィアが戻って来たようで、カッツェも胸をほっと撫で下ろす。

胸にはまだ、フローレンスの言葉がつかえていたが、その棘の様なもやもやは、これから解消していかねばならない。

シヴィアと話し、同じ時間を過ごして。

彼女自身の言葉でその気持ちを聞いて、カッツェ自身の言葉で返すのだ。


「領地の話を聞くかい?」

「ええ、是非、聞きたいわ」


言葉を崩したシヴィアに、カッツェも自然と笑みが漏れる。

ずっと丁寧な言葉づかいでは距離を感じてしまうのだ。

フローレンスも興味深そうに二人を見比べてにっこりと微笑む。

そんなフローレンスを見て、幼い彼女にも分かりやすい様にカッツェはシヴィアが不在だった間の領地の事を話し始めた。

シヴィアが質問し、カッツェが答える。

穏やかに紡がれる時間。

偶に祖父がカッツェの言葉に補足を入れ、フローレンスも疑問に思った事があれば口にした。

最初からひとまとめの家族の様に、満ち足りた時間を過ごす。



翌朝、フローレンスはネセル村に居た。

村人が集められ、公爵が直々に紹介した小さなお姫様を、子供達は眩しそうに見つめる。

年上のシヴィアとカッツェはそのまま公爵に同道して、残されたのはフローレンスだ。

村人は丁寧な言葉になれていないだろうから、と簡素な言葉で話しかける。


「仲良くしてね」


可愛らしい笑顔を向けられて、子供達は皆頬を染める。

お人形の様に可愛らしい女の子だ。

金の髪はふわふわしていて、瞳は空を写し取ったかのような清らかな青。

ふっくらとしたミルク色の肌は、ほんのりと薔薇色を載せていて。

だが、どこの村にもいるガキ大将が強がりを言った。


「ふん、お前みたいなブス、仲良くしねぇよ!」


途端に周囲の大人達が真っ青になった。


「こら、謝れディーク!」

「公爵家のお姫様に何て事をっ!」


「お待ちになって」


頭をべしりと殴られた挙句、無理矢理頭を下げさせようとする大人を止めたのは、罵られたフローレンスである。

大人達は青い顔をしたまま、何を言われるのかと委縮した。


「わたくしは、お祖父様…公爵様の孫ですが、伯爵家の娘なので、そんなに脅えなくて大丈夫です。子供の言う事ですもの、気にしませんわ」


村人たちにとっては貴族というだけで雲の上の存在だが、小さな少女が庇うのであればとディークは解放された。


「皆さんもお仕事に戻って大丈夫です。不敬だなんて問いません」


にこにこと気にしないようにと笑うフローレンスに、大人達はほっと胸を撫でおろしてその場を後にする。

彼女の後ろに立っている美しい騎士も、笑みを浮かべて見守っているだけで怒りだしたりはしなかったので。


「その……ありがとう」


庇ってくれた事に対してディークが礼を言う。

けれど、フローレンスは一瞥もせず、他の子供達に話しかけた。


「皆さんはいつも、どんな遊びをしているの?」



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― 新着の感想 ―
可愛いから気を引きたかったんだねぇ。でもフローレンスにはそれは効かないんだよなぁ
だって「仲良くしない」って言ったのはそっちだもんねぇ…?
ありがとうの前にごめんなさいなんだよなあ… 今ならまだ謝ればもしかしたらかろうじて許されるかもしれない…多分。
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