表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪の種子  作者: ひよこ1号


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/69

復讐の天使の願いを叶える騎士

庭を歩きながら、小さな温もりを手にしたミカエルは優し気に微笑んでいた。

時折見上げて微笑むフローレンスは、天の使いの様に愛らしい。


「ミカエル、見て、ここのお花はお姉様とわたくしが選んだのよ」


「そうでしたか。綺麗ですね」


「ええ、お花の植え替えもお手伝いしたの。お姉様はね、フローレンスが困らないように何でも自分で出来るように、と一緒に何でもしてくださるわ」


にこにこと庭の一角にある花壇を指さして言うフローレンスに、ミカエルは微笑んで頷く。


「素晴らしい姉君ですね」


「ええ、そうなの。フローレンスはお姉様が大好き。いつも正しくて、優しいのよ」


「姉妹の仲が良いのは、喜ばしい事です。……私にも妹がおりましたが、とても可愛い子でした」


悲し気に目を伏せるミカエルを見上げて、フローレンスはこてん、と首を傾げた。


「今は、いないの?」


「事故で、亡くなりました」


本当は知っていた。

フローレンスは事前に王太子妃に、彼が妹を亡くしている事を聞いていた。

その事故がディアドラのせいかもしれないことも。


「代わりにはなれないけれど、フローレンスが新しい妹になるわ。だから、お祖母様からフローレンスを守ってくれる?」


大きくつぶらな眼で見上げられたミカエルは、そっと地面に膝を突いてフローレンスと目線を合わせた。

まるで妹に、今度は守ってくれるかと問われているようで、胸を軋ませながら。


「この命に代えても、必ず」


「私、お祖母様を許さないと決めたの。フローレンスもぶたれたし、使用人もお母様も鞭で打たれたわ」


お母様はいい気味だったけど、とフローレンスは沈痛な表情から明るく微笑む。


「お姉様は私を助けてくれたから、私もお姉様をお支えするのよ。お祖母様は色んな人に意地悪をして、苦しめる人だから誰かが止めないといけないの。でもお姉様はお優しいから」


出来ない、という言葉はフローレンスは言わなかった。

きっと時間さえかければ、賢い姉の事だから何かディアドラを追い込む方法を考える筈だ。


けれど、それでは足りない。

わたくしを傷つけた以上に、傷ついて、人生を台無しにしてさしあげなくては、とフローレンスは微笑む。


「大変な事をお願いしても、フローレンスを嫌ったりしない?お兄様」


「勿論です。必ずお傍にいてお守りし、お手伝い致します」


たとえ目の前にいるのが、復讐の天使だとしてもミカエルは構わなかった。

騎士の様な崇高な使命を、命の危険も顧みず行うと言っているのだから。

それに、自分の結婚や縁が壊されたことなど些事でしかない。

優しい家族を全て奪っていったディアドラを許した事は片時もなかった。


ミカエルは騎士仲間からフローレンスとシヴィア姉妹の話を聞いて、実際にフローレンスの怪我を目の当たりにして、まるで地獄に叩き落されたような気持になったのだ。

小さな妹の死骸は、彼女の様に傷がついていた。

怪我をした時にはまだ息があったのだ。

傷つき、血の巡りが阻害されて、痣や傷を作る。

両親が身体を寄せて守ろうとしたから、身体を欠損するに至らなかったのだろう。

思い出すだけで、怒りに胸が震える。


そんな風に死んでいい人達ではない。

神はいないのか、と。


だから、幼い子供の言う戯言だとしても、叶えてあげたかった。

フローレンスを守り、願いを叶える事がこの時、ミカエルの望みになったのだ。

ここに主従関係&共闘が始まりました。

今後ミカエルは物理的な脅威を排除する役目&汚れ仕事を負う事になっていく予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
フローレンスは改心して、幸せになって欲しい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ