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悪の種子  作者: ひよこ1号


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悪女の更なる罪

シヴィアのする心配は、王太子妃も王妃も感じていた。

そして、用意されたのがフローレンスの専属護衛。


「初めまして、フローレンス嬢。私はミカエルと申します」


金の髪に深い緑の瞳の護衛は、優し気な笑顔を浮かべてフローレンスの前に跪いた。

彼の眼に涙が薄らと浮かんでいるようで、シヴィアは小首を傾げる。


(この方、何処かで拝見したような……そう、1年前くらいかしら……?)


思い当たってハッとした顔になるシヴィアにも、ミカエルは目を向けて会釈した。


「この身に変えても妹君の御身はお守り致しますので、どうぞ安心なさって下さい」


「ええ。どうか、妹をよろしくお願い致しますわ。……それと、お悔やみを」


「……お小さいのに覚えてらっしゃいましたか」


悲し気な顔のミカエルに、シヴィアは静かに頷く。

1年ほど前に、出席した葬式で見かけたのだ。

多少の縁があった、アーリソン子爵家の葬式。

何故覚えていたかと言えば、叔父と叔母夫妻と同じ馬車の事故で家族を亡くしていたからだ。

それ以外にも、何故か心に引っかかっていた。


多少の縁、というのは父が言っていた言葉だ。

物思いに耽るシヴィアを見て、ルディーシャが目を細める。

そして、フローレンスに優しく声をかけた。


「フローレンス、折角だからミカエルにお庭を案内してあげて。まだ王宮には不慣れなのよ」


「はい、ルディ様」


ちょこん、と座っていた長椅子ソファーから降りて、フローレンスは小さく膝を屈した。

それから、小さな手を護衛に差し出す。


「一緒に参りましょう」


「はい。お供します」


二人はのんびりとした足取りで開け放たれた硝子の扉から内庭へと出て行く。

声の届かない範囲に二人が歩み去ったのを見て、ルディーシャがシヴィアに言った。


「お葬式で彼と会った事があるのですね?」


「はい。父から縁が在ったと聞いたのですが、どんな縁だったのかと今考えていたのです」


「……そう。ではわたくしから説明するわね」


アーリソン家は子爵家であり、ハルキス伯爵家に婿入りの話が出ていたという。

幸い妹のミーシャはまだ幼く、跡継ぎとしての教育を施せば、将来婿を取ってアーリソン子爵家も安泰である、はずだった。

ところがその婚姻に待ったがかかったのである。

横槍を入れたのは、ディアドラ。

彼女が後見を務め、寄子にもしたロメイン男爵の娘、キャサリンがミカエルに恋をした。

たったそれだけの理由。

既にまとまっていた婚姻話に強引に割り込まれて、当初はアーリソン子爵もハルキス伯爵も困惑したという。

両家は穏やかに交流し、婚約する二人も見知った仲であり親しい。

かといって提携が必要な事業だとか、激しい恋愛などが理由ではない、故にハルキス伯爵は婚姻の撤回には反対しなかった。

何より公爵夫人という身分を振り翳す悪女の目に留まれば、何をされるかという恐ろしさもあったのだろう。

更に良家との縁談をチラつかされれば、伯爵家としても悪い話ではない。

結局ハルキス伯爵家とアーリソン子爵家の婚約は白紙に戻された。

だが、破談となったとしても、縁談が纏まる訳ではない。

アーリソン子爵は、ロメイン男爵からの婚約の申し出を断ったのである。

まるで交換条件の様に、ミーシャの婚約相手は格上の伯爵家からと言われても、子供思いの夫妻は首を縦に振らず。

そんな最中に起きた事故。


「まさか……」


シヴィアは事のあらましを聞いて、形の良い眉を顰めた。

権力と身分に拘るディアドラが、子爵家に面子を潰されたのである。

アーリソン子爵一家の馬車の事故は、あっという間に社交界を席巻した。

ディアドラがまた邪魔者を消したのだ、という密やかな噂と共に。


「本当は、夫妻だけを亡き者にしようとしていたのかもしれないけれど、その日だけは聞き分けの良いミーシャ嬢が、一緒に行きたいと駄々をこねたらしいわ。そして夫妻と共に……」


幼い女の子の死を悼むように、ルディーシャは少しだけ目を閉じる。


「証拠はね、何もなかったわ。隈なく調べさせたけど、崖から馬車ごと落ちてしまったのもあって、痕跡があったとしても消えてしまっていたのでしょう。折悪しく、その夜は雨だったのよ」


悪い者に天罰は下らないのだろうか?

悪しき者にも神がついているのか、悪運が強いのか。


シヴィアは悲し気に、膝の上に揃えて置いた手に目線を落とした。

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ここまで一気読み うわぁータイトルぅぅぅ フローの種子など枯れてしまえ〜 味方になったサイコパスほど心強いものはないけど悪女ゴジラvs悪女ガメラ地上最古の決戦…フローの悪の種子の行方が気になる…とい…
 ディアドラ婆さん包囲網がさらに強度マシマシ… 復讐するは我にあり。いいお顔、しているのでしょうね… 
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