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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第40章 支離滅裂
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第314話 檜葉

 知らぬまに傷口は広がっていくもので。


「シエラ副会長の来年度会長就任に反対します!」

「「はんたーい!」」


 このように、デモまで起きる始末。


 僕や聖徒会のメンバーが行けば散るのだけれど、それではなんの解決にもなっていない。


「へんたーい」

「忍ちゃんは言いたいだけでしょう」

「私の一挙手一投足がお分かりになるなんて……これは、相思相愛……?」


 寝言は寝ている時に言ってほしい。




「しかし、シエラ君は本当に心当たりがないのか?」

「流石に犯罪者になったことは……」


 いや、そもそも女学園に男が通っている現状が既に犯罪者まがいなんだよね……。

 ってことはもしかして、犯人は僕の性別を知る人間……?


 でも僕より年下の貴族で僕の性別を知っているひとはほとんど……いや、多分いなかったと思うんだよね……。


 窓越しにデモ活動を覗くも、知っている人たちは一人としていない。


「一年生の二人は、あの中に知っている人いる?」

「「勿論でございます!」」


 忍ちゃんと神流ちゃんが待っていましたとばかりに僕のところに来る。

 彼女達は僕の意思を確認してから動いてくれる。

 言い換えれば、聖女である僕の嫌なことは絶対にしないために準備しているにも関わらず、わざわざ僕が意見するまで意見をしないんだ。

 ……まあ忍ちゃんに関しては意味のない下世話な会話が好きみたいだけれども。


「あの輪の中心にいるのが三枝木(さえき)侯爵家の三枝木蜜柑(みかん)鏑木(かぶらぎ)侯爵家の鏑木牡丹(ぼたん)です」

「侯爵家……」

「シエラ様から面識は……?」

「ううん、ないです」


 名前からして梛の国出身の貴族かな……?

 でも梛の国は四天王のインキュバスを倒すために一度しか行っていないし、その後は魔力を使いきってぶっ倒れたところをシルヴィアさんに運んでもらったため観光もろくにしていない。


 王家や宰相や親衛隊を除けば、面識のある人なんてほぼいない。

 だから僕を憎む理由なんて……。


「ん……?」


 待てよ、梛の国……犯罪者……。


「あっ……!」


 僕、そういえば梛の国でシエラとして一時的に犯罪者扱いされてたじゃん……!

 梛の国で宰相をしている樹村さんをインキュバスから救いに行った時、門番の人たちに映像魔法で指名手配として共有されてたんだった……。


「どうしたんだ、シエラ君?」

「い、いえ……なんでも……」


 シエラとして指名手配されていたことを話すのは話をややこしくするし、何より指名手配を解除された理由を説明してしまうと僕の正体が明かされることになる。


 ただ心当たりはあったけれど、あれは樹下さんから後日勘違いだったって国内でお触れが出回っていたはずだよね……?


「しかし、あれでは露骨すぎてバレバレですね。どうにも大人の命令ではなく、お粗末な子供の計画のように思います」

「そうですか?デモで煽って回る行為はほんの一部の勢力でも声の大きな集団が全体の声のように聞こえる錯覚を起こしやすく、少ない勢力で不信を抱かせるには効果的な方法だと思いますが……」

「いえ、そうではなく……」

「……?」

「三枝木家と鏑木家にはよくつるんでいるボスがいるんですよ」

「……そうなんですか?」

「……私がいうのも何だけれど、シエラ君はシュライヒ家のことを助けたいと思っているのなら、もう少し貴族としてそういう貴族同士の関係を知っておいた方がいいと思うよ」

「う……すみません」


 そ、そうだよね……。


「鏑木と三枝木とよくつるむ……ああ、檜葉公爵家ですね」


 流石リリエラさんは僕なんかと違ってなんちゃって侯爵令嬢じゃないから詳しい……。


「檜葉公爵家……」


 確か、第49代の檜葉雅さんの子孫の人達だったかな?

 今は公爵家なんだね。


「恐らくこの騒動を裏で操っている人間は、1-Aの檜葉胡桃でしょう」

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