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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第39章 十人十色
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閑話82 お呪い

【ハナ視点】

 おかしいです。


「お、おかしいのです……!!」

「なにが?」

「ネル様が……起こす前に起きているのですっ!!」




 ――それは、ある晩のことでした。

 シエラ様からいただいた首飾りで一命を取り留めたネル様でしたが、相変わらず眠気は来るようでした。


「むにゃむにゃ……」

「ほら、ネル様!まだ帰ってきたばかりなのですから、寝ないでください!」

「今日は戦闘実技あったから……。ここまで我慢しただけ褒め……ぐう」


 『魔法を使う』、『いただいた首飾りをはずす』。

 シエラ様は眠くなる原因を明確に示してくださいました。

 付けるだけで魔力が回復していく首飾りと伺いましたが、いったいこちらはおいくらするのでしょうか……?

 それを「タダであげる」と仰るなんて、聖国の侯爵家様はそんなに儲かっておられるのでしょうか?

 懐の深さが、尋常じゃないのです……!


「話の途中で寝ないでくださいよっ!ほ、ほら……シエラ様からいただいたおまじないがあるでしょう?」


 ネル様のような所謂聖霊族は、私達のようなお食事は必要としません。

 ネル様のお身体を構成するのは氷。

 そのお身体を維持するために必要なのは水分です。


 ですがお屋敷ではお体が弱いネル様のため、氷にしやすい冷たい水をお飲みいただくようにしていました。

 よく熱を出すネル様に、一番具合が良くなるものは何かを探っていった結果、冷や水に行き着いたのです。

 氷だと駄目で、お身体とくっつけるには水からである必要がありました。


 シエラ様にもお聞きしましたが、その対処は間違っていなかったそうで、私は安心しました。


「氷にするのに魔力を使うから、その労力を減らすには氷に近い、冷たい水が最適だと思う」


 的確にそう仰る姿は、まるでお医者様のようでした。




 ネル様はこれまたタダでいただいた『アイテム袋』を取り出しました。

 魔法の力で異空間に仕舞えるという不思議な袋です。

 公爵家に仕える身として『アイテム袋』のことは流石に知っていますが、貴族様でさえ持っておられるのはほとんどおられないという品です。

 いただいた後にその値を調べたのですが、なななんと、最低でも白金貨100枚だというのですっ……!

 いったい、私のお給金の何年分でしょうか……?

 シエラ様は「気にしなくていいよ」などと仰られましたが、流石にそういうわけにも行かず、調べたその日に旦那様にお手紙をお送りいたしました……。

 お返事はまだ来ていませんが、恐らく公爵家からその分のお金をお支払するか、旦那様か国王様から御礼・褒賞のある案件になると思います……。


「もぐもぐ」


 ネル様は『アイテム袋』から取り出した"おまじないのグミ"を大量に口に入れ、頬張られました。


「って、そんな一気に食べないでくださいよぉっ!!」

「もっちゃもっちゃ……わはし(わたし)は今、ほれあけ(それだけ)ねむい」

「眠さの分だけ食べるって話じゃなかったと思うのです……」


 時すでに遅し。

 でももっちゃもっちゃと美味しそうに頬張るネル様はなんだか可愛らしくて憎めないのです……。


「もう、夜に目が冴えちゃっても知りませんよ……?」


 きっと、コーヒーや紅茶などに含まれている眠気を覚ますものが多く含まれているグミか何かなのです。


「ハナ」

「いかがなさいましたか?」

「どうしよう?目、ギンギン……」

「ほら、いわんこっちゃないのです……。それに仮にもお嬢様が『ギンギン』なんて使っちゃ駄目なのです」




 その日は普通に寝ていただけたのですが、その翌日、事件は起きたのです。


「わ、私が起こす前に起きているなんて……!おかしいのです!偽物のネル様なのですっ!本物はどこで寝ているのですかっ!?」

「私、本物」

「では、証拠を示すのですっ!」

「ハナがおねしょしてたのは初等部の5年生のときま……」

「わ、わあーっ!!な、なんてこと言うのですかっ!」


 ち、違うのです!

 夜、お手洗いに行くのが怖くて行けなかっただけなのです……!


「ほ、本当にネル様……?」


 真贋の見極めができてしまったところで、私はそれを信じることができませんでした。


「寝すぎて頭痛くなって起きた」


 毎朝の目覚めなんて相当悪いネル様が、私より先に起きているなんて、あり得ないのです!


 でもいつもと違うことなんて、前日にあの"おまじないのグミ"を大量に頬張ったことくらいしかないのです。


 まさか……あの"おまじないのグミ"、実は相当高い高級グミなのですか……?

 旦那様、シュライヒ侯爵令嬢は、とんだお人好しなのです……!

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