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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第39章 十人十色
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第306話 権化

「さて、本日集まってもらったのは他でもない。新入生から二名、聖徒会に入ってもらった。まずは自己紹介してくれるかい?」

「一年Sクラス特待生、嶺忍と申します」

「一年Sクラス、嶺神流と申します」

「「えっ……?」」


 僕とリリエラさんが二人して驚く。


「忍ちゃん、特待生で入ったんですか?」

「流石シエラ様。普通は一年生の点数も好奇心で見てしまうものですが、それすらされないとは……」


 単に見てる暇がなかっただけだよ……。


「橘会長、そもそも特待生とは何でしょうか?」

「ああ、その説明が必要だね。今年から入試や期末の試験で950点を取った人たちに、特待生試験を受ける資格を与えているんだ。特待生になると、すべての授業を免除される。出席しなくてもテストを受けなくても進級できるし、3年の特待生ならそのまま卒業ができる」


 僕は2年生だから聞かされていなかったけど、3年生だと事前に卒業まで保証されるんだね……。

 なんというかすごい仕組みだ。

 卒業前に退学案件のやらかしをしたらどうなるんだろうか……?


「いいなぁ……私も特待生になりたい」

「ミアのはただ怠けたいだけだろう」

「でもでも、羨ましいのは羨ましいじゃん!」

「だが、その分特待生試験は厳しいんだ。例えば忍君なら、一年生の中間と期末の問題を解かせて両方とも7割以上の点数を取らなければ特待生にはなれないのさ」

「習ってもいない次年度のテストで7割……私には到底無理だよ……」


 普通は習ってもいない次年度の内容ができる人なんて、ほぼいないだろう。


「忍ちゃんは、どうやって試験にクリアできたのですか?」

「忍は、昔から天才でしたから……」

「いや、天才でも習う機会がなければ答えられないような……」


 そう言うと、何故かにっこりと微笑む忍ちゃん。


「……ま、まさか……!?」


 ぼ、僕の授業まで覗いてたんじゃ……!?


「一度見たり聞いたりすれば大体覚えられますから」


 天才の無駄遣い……!


「忍ちゃんのえっち!へんたいっ!」

「はぅあっ……!」


 何故か身悶えている変態の権化(忍ちゃん)はもう手遅れだ。

 僕なんか見ていて、何が楽しいのやら……。


「特待生試験……。つまり、シエラさんも?」

「はい、一応……特待生になりました」

「一応なんて、謙遜もいいところだ。二年生の一位である私の成績を抜いて特待生になったと聞いているよ」

「やっぱり、シエラさんには程遠いですね……」


 そんなことないと思うけどな……。


「早速入学初日から欠席するなんて、やっぱり頭おかしいわ……」

「欠席……ってまさか、忍ちゃん……」


 僕がジト目になると、答え合わせかのようににこりと微笑む。

 ほ、本当に授業中でも僕を覗くために特待生になったの……?


「では改めて在校生の自己紹介といこう。3年Sクラス、新聖徒会会長の橘涼花だ。まだまだ未熟者だが、よろしく頼む」


 涼花さんが未熟なら、この世のみんなが未熟者だと思うよ……?


「3年Sクラス、広報委員長のミアだよ。よろしくね」

「2年Sクラス、副会長のシエラ・シュライヒです」

「2年Sクラス、風紀委員長のリリエラ・マクラレンです」

「2年Sクラス、書記のエルーシアと申します」

「改めて、聖徒会へようこそ」




「さて、新入生二人のポストだが、ミアが今年で最後となるため、一人は引き継ぎのため広報委員をしてもらいたい。もう一人は希望があれば聞くが、なければ書記をおすすめしておくよ」


 すると忍ちゃんが手を気持ちいいくらい真っ直ぐに上げた。


「広報志望です。パパラッチのごとく努めて参ります」

「では忍君は広報委員にて補佐をお願いするよ」

「忍ちゃん、よろしくね」


 なんかとんでもないペアが出来てしまったような……。


「神流君はどうしたい?」

「私は学園の風紀を正したいです」


 神流ちゃんは忍ちゃんを睨み付けてそう言った。


「とても殊勝で嬉しいよ。では神流君には風紀委員をお願いする。詳しいことはリリエラ君から教えてもらいたまえ」


 頼む神流ちゃん。

 未来の聖女学園は、多分君にかかっている……。

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