第304話 歓迎
新しい2年Sクラスはシェリーとセフィーが仲間に入った。
「シェリー、セフィー!」
「リリエラ様っ!」
「リリエラ様と同じクラスだなんて、嬉しいです」
手を取り合う姿は、見ていて癒される。
「私もよ!これからもよろしくお願いね」
「シェリル嬢、セラフィー嬢、久しいな」
「お元気そうで、何よりですわ」
「お久しぶりです、ノエル様、イザベラ様」
そうか、元々貴族だった彼女たちは面識があるのか。
僕、存外二人のこと知らないな……。
「ソラ様の養子の子よね?リリエラさんのお友達だったのね」
クラスメイトも興味深々のようだ。
「はい。シェリルと申します」
「セラフィーです」
「Sクラスにようこそ。歓迎するわ」
ホームルーム前の時間に打ち解け合うクラスメイト達。
この様子なら、何も心配はいらなそうだ。
と思っていた僕が浅はかだった。
「あの、クラスメイトになる前に、皆さまに聞いていただきたいことがあるんです」
「ど、どうしたの?二人とも……」
「私達二人とも、一年前のシエラ様に嫌がらせをしていた張本人です」
「ちょっ、セフィーっ!?」
「えっ……?」
ど、どうして急にそんなことを言おうと……!?
「ほ、本当ですか……?」
「シエラ様の机の上に落書きをしたのも、下駄箱に画鋲を埋め込んだのも、シエラ様に毒をかけたのも……全部私たちのしてきたことです」
「シェリーまで……!それは内緒だって……」
「内緒……ということは、シエラ嬢も知っていたということか」
「し、しまっ……」
僕の馬鹿っ!
リリエラさんは目を見開いていたが、その心境は僕には読み取れなかった。
「そういえば、あの件は当事者と話し合って解決したとおっしゃっていましたね……」
そして怪訝な顔をするリリエラさん。
無理もない。
友達と思っていた人たちのよくない面を見てしまったのだから。
こんな結末にしたくなかったから、今まで隠してきたのに……。
「二人は、両親から虐待を受けていたんです。とくに母親からはひどくて、さんざん追い出すと脅して私をいじめさせようと……してて……」
周りの冷たい空気を少しでも緩和するため、僕にはもはや起こった出来事を正直に話すしか手段が残っていなかった。
「あなたという人は……!また独りで我慢しようとして……!」
「ひひえらはん、いはいえふ……」
「その上、この期に及んでまさか二人をかばうなんて……!」
「だって……仲の良かった三人が私なんかのことで仲違いしてほしくなかったから……」
「このお人よし!」
「うぅっ……」
「いいですか!私の人付き合いは、私自身で決めますから。勝手に決めないでくださいまし」
「ご、ごめんなさい……」
「そうではありません、そうではありませんわ……!」
少しパニック状態になっているリリエラさんがそこにはいた。
涙がこぼれており、完全に感情のコントロールがきいていない。
必死に自分自身を制御させるよう言い聞かせているようだった。
「……」
「……」
当時、リリエラさんは僕のことをひどく心配してくれていた。
その上、演劇で僕のトラウマを引き出してしまったときから、なおのことこの件で心配してくれていたんだ。
それを、三人がかりで黙っていたのだ。
これは裏切りと言っても過言ではない。
やがて、その沈黙を解いたのは、時間だった。
「はあーいっ!ホームルームをはじめますよおおおっ!」
「……あっ」
マリちゃん先生、タイミング悪すぎるよ……。




