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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第37章 疑心暗鬼
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第292話 元祖

「実は私、ステラさんの前にソラ様に弟子入りしているの。ソフィアより早い二番弟子なのよ」

「知ってますよ。たった2日だけ教えていただいたくらいで、調子に乗らないでください」

「まあ!見ない間に汚い言葉を覚えちゃって……。小さい頃、『ルシアお姉ちゃん』って呼んでいた時は綺麗なソフィアだったのに……」

「い・つ・の・は・な・し・で・す・か!い・つ・の!」


 ソフィア王女が言葉でプロレスしてる姿なんて初めて見た……。

 ソフィア王女が「ルシアお姉さま」と呼んでいたのは知っていたけど、あの二人、そんなに仲が良かったんだ……。


「どうしてあいつらが私達の味方をしているんだ……?」

「わからん……しかし、ソラ様の弟子と言っていなかったか?」

「それなら勝てるのではないか……?」

「ハイエルフの意地を見せてやるんだ、二人とも!」


 自分達が追い出したというのに虫のいい話だ。

 最早プライドがあるのかないのか分からないが、ハイエルフの皆さんはソフィア王女とルシアさんを応援することに決めたようだ。


「どうして二人に出張らせたのでしょうか?私には、教えてくださいます?」

「わ、分かりましたから……そんなイソギンチャクみたいにくっつかないでください」


 リリアンナ王妃、絶対わざとやってるでしょ……。

 いろんなところがむにむにしてて困るんだってば……。


「とはいっても、別に強制したわけじゃないですよ。今回の騒動はソフィア王女は恋人であるハーフエルフのサンドラさんがハイエルフに迫害されていることから始まりました。そしてルシア元前王女はダークエルフのオフィーリアさんと駆け落ちしたのですが、駆け落ちしなくてはならなかったのはダークエルフがエルフやハイエルフに忌み嫌われていたからです。お二人の胸の内にはこの差別をなんとかしたいという意志が少なからずあるのではないかと思ったんです」


 ルシアさんにはサンドラさんとの修行に入る前、『ハイエルフの差別意識を変えるチャンスである』と手紙で伝えておいた。

 悪役まがいのことをさせてしまっているが、ルシアさんは既に王家から勘当されており、一般人だ。

 だからルシアさんがハイエルフ側に付いて負けたとしても元々王家でも貴族でもないので降格のデメリットはないようなものだ。


 ソフィア王女もそうだ。

 たとえ負けたとしても、そもそもサンドラさん側が勝ったら女王の資格が得られるので、降格は関係なくなる。


「それでお二人を焚き付けたのですね……」


 僕は『全てのハイエルフに勝てるようにする』と明言した。

 それは弟子であるソフィア王女も、ルシアさんも含めて、だ。

 

「ソラ様の弟子である二人のハイエルフでさえも勝てないと分かれば、『ハーフエルフがハイエルフに劣る』というのが幻想だと信じるしかなくなる……」

「ですがソラ様、相手もソラ様の弟子……。勝算はあるのですか?」

「問題ありません。それにまだ聖棍ユグドラシルの真髄を見せていないですからね」

大嵐の(ディザスター・)大災害(テンペスト)!」


 ルシアさんが放った巨大な突風の渦を見て、ちゃんとあの後も自分を磨いていたことに感心する。

 だがサンドラさんは素早い動きで回り道をして避け、また右腕を黒曜石のような岩の塊に変えて飛びかかり、上からルシアさんに殴りかかる。


「今よ!」

煉獄炎(インフェルノ)!」


 殴り始めの瞬間、隙だとばかりにソフィア王女が巨大なバーナーを放つ。


巨大岩(ギガントロック)!」


 サンドラさんは左手に持っていた聖棍で自分とソフィア王女との間に長方形の大きな岩の壁を作ってその炎防ぐと、そのままルシアさんを殴り飛ばした。


「ぐぅっ……!?」

「ルシアお姉さま!?きゃあっ!」


 そして巨大岩がソフィア王女の方に倒れてドシンと押し潰した。


「な、なんて破壊力……」

「それに、隙が無さすぎる……」

「片手で拳、もう片方で杖。あれが元祖・物理と魔法の二刀流。一武器でのオールラウンドスタイルです」

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