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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第37章 疑心暗鬼
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第289話 降爵

「準備はいいですか?」

「ええ!」


 僕はサンドラさんとソフィア王女と王城にワープした。


 約束していたのは王城裏の森。

 ハイエルフが住まい、ヴァイスが管理している精霊の森だ。


「おいソフィア!まだ来ないのか!」


 二人に比べて背の低く隠れている僕はともかく、サンドラさんまでも見失うとは思わなかった。

 それに、魔力視のあるハイエルフ達が、だ。

 それはサンドラさんの魔力がソフィア王女と同等以上にまで到達したということだ。


「無礼者!大聖女様の御前です!」


 二人が道を開けて僕が前に出ると、皆が頭を下げる。

 時代劇のような展開だけれども、これっぽっちもそんな雰囲気ではないのはここが梛の国ではなく精霊の森だからだろう。


「約束通り、皆様集まってくださいましたね」

「して、ハーフエルフは……?」

「え……?隣にいるじゃないですか」

「は……?」


 ハイエルフの人達は今、カンストした魔力を魔力視で見ているのだろう。

 ハーフエルフ=魔力が乏しいという等式の例外が今の今まで一度もなかった。

 それだけ根の深さを表しているということだ。


「そんな、まさか……」

「ご冗談を!」

「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。大方、魔力視で見たことが受け入れられんのじゃろう」


 奥から現れたのは、オラフさん。

 数千年生きているというハイエルフの長老だ。


「お久しゅうございます、ソラ様」

「オラフさん、お久しぶりです。ヴァイスに会いに来た時以来でしょうか?」

「ええ。この度は我が種族のことでお手を煩わせてしまい申し訳ございません。しかし、我々にも今まで公家を務めていたというそのプライドがございます。それを簡単に明け渡すことに納得するというのは難しいのです」


 それはそうだ。

 僕だって、ソフィア王女のように総辞職をさせるのは流石にやりすぎだと思う。


「どうでしょう、ソラ様?ソフィアを除けば、私は我々の種族で一番強いという自負がございます。私とサンドラ嬢が一騎討ちして決めるというのは?」

「……一見良い案のように聞こえますが、たとえ一番強いのが事実だとしても、代表が一人で戦っても『私なら勝てた』と疑いを持つ人が出るのではないですか」

「では、何か良い案が?」


 僕はステッキを持つサンドラさんを一瞥してから、オラフさんに向き戻る。


「今回私とソフィアさんはサンドラさん側には参加しませんし、私はどちらの味方にもつきません。サンドラさん側はサンドラさん一人、対してハイエルフの皆さんはオラフさんのほかに参加したければいくらでも参加して良いです」

「「!?」」

「今回の騒動に不満がある人、ハイエルフがハーフエルフに努力で上回れるなんてありえないと思う人は全員参加してください。ただし今回の戦いで私は静観をしますが、この決闘の後日に後出しで文句があり暗殺などを目論む人が現れたとき、私が決して容赦をしないと覚えておいてください」


 お互いにチャンスは今回だけだということを事前に伝える。

 そしてちゃっかり後日は僕も出張れるようにしておく。


「決着がついたとき、皆さんの怪我は私が責任をもって治します。ですから思う存分戦ってください。そしてサンドラさんが負けたとき、ソフィア王女もサンドラさんも次期王とはならず王家から立ち退いていただきます。その場合王の席が不在となるため、この戦闘に参加した人の中から次の王を決めることにします」

「なんですって!?」

「参加したら王になれるかもしれないのですか!?」


 僕がこくりと頷くと、ざわざわとしだすハイエルフの皆さん。

 この中には、公爵家の人達もいる。

 急に来た王家への邁進のチャンス、これには公爵家の皆さんも黙っていないだろう。

 そして勿論、王家も黙ってはいられない。

 

「相手は一人だぞ……?」

「明らかに参加をした方が得ではないか……?」

「ソラ様、もし我々ハイエルフが負けた場合は、いかがなさるおつもりですか?」

「サンドラさんが参加した全員を倒したとき、ソフィア王女とサンドラさんの二人の中で次期王を決めてください。あとはそうですね……参加した人達は次期王に謀叛を起こしたことになりますから、今の爵位を一つ下げていただきます」

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