第279話 二世
「それで、私は何をしたらいいの?」
「今回は急を要するので結構あくどいことをします」
「あくどいこと……?」
「それより、ソフィア王女は付いてくる必要ないですよ?」
「……つれないこと言わないでください。サンドラちゃんのピンチなのですから、手伝わせてください」
「ソラ様、ソフィアは私の心の支えだから、必要よ」
「サンドラちゃん……」
「ソフィア……」
……そういうことか。
「いちゃこらするためなら邪魔ですから帰ってください……」
みんな僕を前にすると気にせずいちゃいちゃするの何なの……?
「付いてくるのは自由ですが、着いたら別行動ですからね」
「そ、そんな……」
「一週間で誰にも負けない戦闘力を身につけるには、やることが沢山ありますから。まず移動中は常に食べられるだけグミを食べてください」
アイテムボックスから取り出した魔力アップのグミを取り出してアイテム袋に移し替え、サンドラさんに渡す。
「こ、こんなにも……」
「こんなのはまだ序の口です。まだまだありますから、なくなったらまた言ってください」
「私たちは迷宮で取ったものをいただいておりましたが、今回はソラ様のお持ちのグミなのですね」
「まあ、私はもう不要ですからね」
「おひとついただいても?」
「他人の努力を奪って矜持が保てるのなら、いくらでも構いませんよ」
その言葉がちくりとしたのか、ソフィア王女は手を伸ばすのをやめた。
「……すみません、私が浅はかでした。ですが、どうしてサンドラちゃんにはお許しになられたのですか?」
「今回はサンドラさんだけの問題ではなく、ハーフエルフの皆さんの問題ですから。ハーフエルフの問題解決の第一歩への投資のようなものです」
「それなら、サンドラちゃんはとても運が良かったのですね」
確かに、ソフィア王女と仲が良くなければこんな話もなかったのだと思うと、運が良かったのかも。
「まあできることなら、ここで培った技術や知識を一世で終わらせないようにしていただきたいですけどね」
「……ほ、ほれはつまり、はっ……早く子供を作れってこと!?」
「まぁっ……!」
サンドラさんは顔を真っ赤にして頬張ったグミを落としそうになっていた。
ソフィア王女は口に手を当てて頬を赤らめている。
「いや、そういう意味じゃなくて……他のハーフエルフの人達に伝えていって、差別が起こる原因を取り除いていってほしいって話ですよ」
「大丈夫ですよ!子供は二人作る予定ですから!」
誰も聞いてないから、そんなこと……。
ワープ陣から移動した先は北の国フィストリアのとある迷宮。
僕がそのうち必要になると思い、休みの日にあらかじめワープ陣を敷いておいた場所だ。
「ここまでワープすれば、追っ手は来ないでしょう。一応私が聖女結界で周りを見ておきますから、私と共に行動している間は安心してください」
「ソラ様、この迷宮は初めて来ますが、ここに来た理由は?」
「まずサンドラさんにとって、ステータスを上げることが最重要課題となります。でもグミは既に用意されていますので、今サンドラさんが効率良くステータスを上げるには、グミを食べつつレベルを最速で上げることをすればいいことになります」
「つまりここは、レベル上げ最大効率の迷宮ということですか?」
「正確には少し違いますが……。まあひとまず中に入りましょう」




