第274話 傷物
「おや、ソラ様にソフィア王女!お久しぶりです」
「ルークさんにカーラさん、それにシルク君!」
「ご無沙汰しております、ソラ様。お初にお目にかかります、ソフィア様」
「もう、シルク君堅すぎだよ」
「ですが」
「いいの、家族なんだから。私との会話でマナーは気にしないで」
「ソラ様、これから御二人にマナーについての講義を行う予定なのですから、先に例外中の例外を教え込まないでくださいますか?」
「す、すみません……」
カーラさんに叱られてしまった……。
「って、二人……。そちらのお方は?」
一人はシルク君として、もう一人はその後ろに隠れているウサギ獣人の女の子だろうか?
「だ、大聖女様に、ハインリヒ王女様っ……!?あわわわわわわ……!」
あわてふためく姿は申し訳ないけど少し可愛らしいと思ってしまった。
「慌てていないで、早く自己紹介なさい」
「は、はいぃ……!わ、わたわた私はっ……セリーヌとももも申しましゅっ……!!」
あ、噛んだ。
「噛みましたね」
「や、やっちゃった……あわわわわ……!これじゃあ私きっと、斬首刑です……!」
「落ち着いて、セリーヌちゃん。そんなことで罰則していたら聖女院に誰も残らなくなっちゃうから……」
「そ、そうですよね……。そんなことも分からないなんて、本当に私はダメダメのダメのすけです……!」
ネガティブ思考に走りがちな子のようだ。
「大丈夫。私からのお墨付きではあまり意味がないかもしれませんが、セリーヌちゃんは私なんかよりずっとかわいいですから」
「……!」
僕達の言葉に一喜一憂する姿が小動物みたいでかわいい。
「ソラ様、セリーヌは真桜様が将来手込めにする予定なのですから、傷物にするのはお控えくださいませ」
いや、何言ってんの……?
確かに真桜ちゃんが自分で専属メイドを決めるって話はエリス様から聞いてたけど、まさか生涯のパートナーにするつもりなの?
「いや、そういう意味で言ったんじゃないですから……」
セリーヌさんだって、まさか生まれる前の子からプロポーズされているだなんて夢にも思わないだろう。
「あわわわわ……!わ、私なんかのことで争わないでください……!」
必死に止めようとするもビクビクして腰が引けている。
サクラさんや葵さんもそうだけど、こういう何気ないところでその聖女の趣味や嗜好が分かってしまうの、本当に事故だよね……。
真桜ちゃん……もとい真さんの趣味が生まれる前から露呈してしまっているんだもん。
黒歴史確定の未来っていうのも、それはそれで開き直れるかもしれないけど……。
真桜ちゃんがグレたらきっと僕達のせいだ……。
「引き留めてしまってすみません。どちらにご用でしょうか?」
「ええと、サンドラさんに用事があるのですが」
「でしたらシルク、ご案内を」
「かしこまりました」




