第273話 雑食
「すみません、一週間留守にします」
僕が決めた猶予はそれだった。
僕はフローリアさんに申請を出した。
「学園はどうするの?」
「休むことにします。エルーちゃん、明日マリちゃん先生に伝えておいてもらえる?」
「学園長でなくてよろしいのですか?」
「ああ、今日先生方に私がソラだって話したから大丈夫……」
「ソラ様、呼び方」
「あっ……」
ソーニャさんに指摘され、しまったと思いつつ、愛称呼びになったことにほっこりしてしまう。
「ふふふ」
「ついにロリコンを認めたか」
「事実無根です」
「大方、頬に口付けでもしたのだろう?」
「失礼なっ!額に、ですよ……」
「いや、部位の問題ではないんだが……。ボクはそのうちソラ君が小人族の唇にキスするようにならないか心配だよ……」
マリちゃん先生も乙女なのだから、僕が唇やその近くにするのは流石にまずいでしょ……。
頬にしようとして事故が起きて口にしてしまったら大変どころの騒ぎではなくなる。
そう、あの演劇でのリリエラさんのように……。
そう思ったとき、同時にこの間のリリエラさんとのキスが頭の中の思考をロックしてしまった。
「ソラ君、顔が赤いがまさか本当に……!?」
「いや、そんなわけ……」
そこに、タイミング悪く二階からシェリーとセフィーが降りて来ていたことに気付く。
「うふふ、お義母様はこの間リリエラ様とマウスtoマウスでのキスをなされたのですよ!」
「シェ、シェリー!?」
「な、なんだってぇええっ!?」
「な、なんですってええっ!?」
二人の王女様の今日一番の驚きは、いつもけたたましく鳴る目覚ましくらい響いていた。
「お義母様もリリエラ様も、初めてだったそうです……」
「セ、セフィーまで……」
「まさかリリエラ君という伏兵がいたとは……。ルーク様だけでなく、その義妹まで食らう雑食だったのか……」
リリエラさんをなんだと思ってるのさ……?
「というかどうして、ソラ君のことを先生達に明かすようなことになっているんだい?」
「ええと、それは……」
僕は臨時講師の話を寮のみんなにすることにした。
「なるほど、そんなことが……」
「ノー勉でまだ習っていない二年生の範囲を当たり前のように900点以上出すなんて……」
「それ、エレノアさんにだけは言われたくないですよ」
「失礼な!ボクだって授業を受けていなければ流石に900点台は出せないさ」
……エレノアさんならやってのけそうだけどな……。
今回もほぼ満点だったらしいし。
「でしたらなおのこと、今はお忙しいのでは?それに学園を休まれるなんて、何もそこまでしなくても……」
「私、弟子の窮地に黙っていられるほど、人間できていませんので」
「ソラ様……」
「ソフィア王女、サンドラさんは今どちらに?」
「未だ聖女院から動けずにいます。私がご案内いたします」




