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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第34章 堅忍不抜
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第271話 敬愛

「シエラさんが、ソラ様……!?」

「……し、失礼とは存じますが、何か聖女であることの証明をしていただけませんか?」

「まだ疑っているのか!?」

「いいんです、ミカエラ先生。これは今まで皆さんを騙してきた私の責任ですから」


 僕はマリエッタ先生の前でしゃがむ。


「ソラ様っ……私っ……不敬なことをっ……」

「いいえ。マリエッタ先生はいつも生徒のことを思ってくださる素敵な先生です。私はあなたの生徒でいられることが凄く嬉しいんです」

「ソラ様っ……」

「ですから、これは御近づきの印。私はいつも生徒に一生懸命なマリエッタ先生をとても敬愛しております」


 僕はその額に軽くキスをすると、ポウッと魔力の火種が灯り虹色に輝く。


「こ、これは……聖印!?」

「ほ、ほわぁっ!」

「ふふ、そうしていると本当にステラちゃんそっくりですね」

「い、妹をっ、ご存じなのですかっ!?」

「ご存じもなにも、ステラちゃんは私の二番弟子ですよ」

「ええっ!?た、確かにあの子は光魔法使いですがっ……って、二番弟子っ……?」

「一番弟子はエルーちゃんですから」

「ほ、ほぇぇっ……」


 エルーちゃんの名声を広める会の仕事もしないとね。

 ……会員僕一人だけだけど。


「マリエッタ先生、日頃の感謝をしたいのですが、なにか欲しいものはありませんか?」

「ええっ!?ええとっ……そのっ……愛称で呼んで欲しいなっ、なんてぇっ……」

「か、かわっ……!!」


 もじもじしながらそんな破壊力のあるお願いをされるとは思わず、きゅうんという効果音でもなりそうなくらいにマリエッタ先生で胸がいっぱいになった。

 もし先生方が見ていなかったら、今頃とてもだらしない顔をしていたと思う。


「で、では……マリちゃん先生」

「は、はいっ!」


 ああ、もう死んでもいいかも。


「ご満悦のところ申し訳ありませんが……」

「あ、ああ、ごめんなさい……」


 僕は再びウィッグを被ると、杖を取り出して唱える。


『――霖雨蒼生(りんうそうせい)の慈悲深き女神よ、今ひと度(われ)に力を貸し与えたまえ――』


 部屋全体を覆い尽くす魔法陣が、そのまま先生方を包み込む。


『――広範囲の(ワイドスプレッド・)特級治癒(エクストラヒール)――』


「す、すごいわ……!」

「疲れが、どんどん取れて行きます」

「先生方も、遅くまでお疲れさまです。今まで騙してしまっていたことへのお詫びにはならないかもしれませんが、どうかこれで矛を納めてはいただけませんでしょうか」


 僕は丁寧に頭を下げお願いをする。


「そ、そんな……頭をおあげください!」

「わ、私達の未熟さ故です!」

「それで、臨時教師の件ですが……」

「お任せください!私達がサポートさせていただきます!」


 この変わりようを見ると、"肩書きのない僕"というものが、いかに甘く見られるかということをよく物語っている。


「……ありがとうございます」


 にこやかに取り繕ったが、内心は少し複雑な気持ちだった。

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