第268話 教師
「特待生……?」
「はい。今年から950点以上を取った優秀な生徒には特待生試験を受ける権利を与えることになりました。特待生試験は次年度の学年の中間、期末考査を行い、各教科7割以上を取れていれば無事特待生となります。特待生の特典として、次年度の授業を全て免除いたします」
「め、免除……」
「もちろん学校行事等には来ていただきますが、授業に関しては出ても出なくても学園の成績に支障を与えなくなります」
「……」
そうするのには何かしらの理由があるはず。
「免除する代わりに、して欲しいことがあるんですか?」
「お察しの通りです。シエラさんには3年生の魔法学の臨時教師をしていただきたいのです」
「り、臨時教師っ!?しかも、3年生って……」
僕、来年から2年生なんだけど……。
「3年生の魔法学は教材がソラ様監修のものなのですが、お恥ずかしながらはじめての内容でして……今年度は教えられる教師が用意できませんでした」
「なるほど……」
それもそうか……。
如何せん、本を作るのが遅すぎたらしい。
「そこで一番弟子であるシエラさんが教えるというのが一番良いと思いまして。来年度からは通常通り教師を間に合わせる予定ですので、お願いできませんか?勿論、お給金は用意いたします」
「……お金は要らないですけれど、それよりも大事なことが……」
「何でしょう?」
「私、新三年生には嫌われているんですよ」
僕は少し俯き、自分の踵を見ていた。
「……理由を伺っても?」
「副会長同士なこともあり、涼花様とはよくご一緒させていただくのですが、そのせいであまりよく思っていないファンの方々がいるようで……」
「涼花さんっ、人気ですからねっ……」
「それなら教師という一歩離れた立ち位置に行くことで、仲良くなれるかもしれませんよ?」
「……そのせいで孤立するって考えはないんですか……?」
そう聞くと、二人して「どうして?」というような顔をしてくる。
だめだこりゃ……。
「教師になると、今まで同じクラスだった人達と一緒に行動をしなくなるんですから、段々と疎遠になっていくのでは?」
「あっ……」
マリエッタ先生は察したようだ。
「別に馴れ合いのためだけに学園にいるつもりはありませんけど、私の場合は学力向上というよりも仲間を作ったり社会適応能力を養うことなどに重きを置いています。ですから、それが奪われるという環境を危惧するのは当然ですよ」
僕は一拍置き、牽制する。
「言いたくはありませんが、あまりにも学園からそれを邪魔されるようでしたら自主退学、ということをするかもしれません」
「シ、シエラさんっ……」




