表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男の大聖女さま!?  作者: たなか
第33章 暗雲低迷
337/1285

閑話73 ご指名

【セリーヌ視点】

「次の方、どうぞ」

「は、はい……」


 わ、私の番です……。

 人の字を書いて飲んだり、ありとあらゆる願掛けも虚しく、私はあるがままを受け入れるしかないようです……。


「し、失礼します……」


 あれがルーク様……。

 聖女院の実質トップ……。

 私なんかとは全然違う、雲の上の存在です……。


「ウサギ獣人の、セ、セリーヌと、申しましゅ……」


 ああ、初っ端から噛んでしまいました……。

 もうダメダメのダメのすけです……。

 へたりと耳が垂れます……。


「大丈夫ですよセリーヌさん。緊張したくらいでは落としたりしません。それなら前年度のメイドも受かっていませんからね」


 もうにこやかさが陽の者です……。

 こんな素敵な人しかいない聖女院になんか入れるわけがありません……。


 でもそういえば、前年度……ソラ様の専属メイド様はどなたなのでしょうか……?

 いくら調べても分かりませんでした……。

 サクラ様の専属メイドのカーラ様やアオイ様の亡き専属メイドのレミ様のように毎度知らされるはずなのに、どうしてなのでしょうか……?


「まずはゆっくりでいいので、メイドを志望した理由を教えてください」

「は、はい……。わ、私は()()()、西国でサクラ様にお救いしていただきました……」

「っ……!」


 その言葉で、ぴくりと面接官の皆様が反応するのが見えました……。

 きっと、()()()()()()()に気付いたのでしょう……。


「やっぱり、私なんかがサクラ様の前に現れるのは、まずいですよね……。()()()()()()()()()()()()()()私なんかが……」

「……!やはりあなたは、6年前の魔王襲来の時の……」

「はい。当時セイクラッドで疫病の発生源になったのが私でした……。私から両親に伝染し、そこで両親は自らを隔離しました。それから手紙を出し、聖国のサクラ様に助けを求めたのです……。サクラ様は急いで駆けつけてくださいましたが、そのせいで離ればなれになったところを魔王に漬け込まれたのです……」


 今回も、魔王はソラ様が聖国を離れた瞬間を狙ってやってきています……。

 サクラ様ご自身も今回の襲来でそういうご見解を述べていることから、「魔王は聖女様同士が離ればなれになったタイミングを狙ってやってくる」ということは事実になりつつあります……。


「私達が代わりに死んでいれば、サクラ様がいらっしゃる必要もなかった……。私達が、アオイ様とメイドのレミ様を……こ、殺……」

「それ以上の発言は謹みなさい。たとえそれが事実であろうとそうでなかろうと、あなたを牢に入れなければならなくなります」


 隣の女性政務官、クリス様が私を止めてくださいました……。


「それに、今の発言はサクラ様の救ったその命を軽んじる発言になります」

「も、申し訳ありませんでした……」


 やっぱり、私がいると場を暗くしてしまいます……。

 ダメダメダメのすけです……。


「やっぱり、私ではダメなんです……。聖メイド中等学校の同級生の皆さんがオススメしてくださいましたが、私なんてサクラ様の前に立つだけで、サクラ様のお顔を暗くさせてしまうと思います……」


 学校の成績がいいからと先生から推薦され、かわいいからという理由だけで同級生からオススメされなし崩し的に受けたはいいものの、やはり私はここに来るべきではなかったのです……。

 そのせいかなぜか筆記試験に通ってしまい、今こうして面接を受けているのですが、それもやはり通りませんでした……。


「それを決めるのは今回は私ではありませんから、私の顔色を伺わなくても大丈夫ですよ」

「……?」


 ルーク様がよく分からないことを仰ると、左の誰も居ない方を向かれました……。

 すると、誰も居ないはずのところからすうっと現れたのは、天使の羽、そして美しい女性のお姿でした……。


「シ、シルヴィア様……!?」

「『初っ端から噛んだところが百点満点』」

「えっ……?」


 今、なんと仰ったのでしょうか……?


「『そして反省して耳が垂れているところが最の高。可愛すぎる。もふもふしたい。吸いたい。幸せにしてあげたい』」

「ひ、ひいっ……!?」


 人種族や聖女様の中には一部熱狂的な獣人のファンがいると聞いたことがあります……。

 だ、大天使様は所謂「ウサギ派」だったのでしょうか……?


「『それから、()()()()()()()()()ところがとても共感できる』」

「えっ……?」

「『絶対にこの子がいい』と、真桜様ご本人は仰っている」


 これは真桜様専属メイドの試験……。

 まだ真桜様はサクラ様のお腹のなかにいらっしゃるはずです……。

 その真桜様が、仰っている……?


 い、いったい……どういうことなのでしょうか……?


「主のお力で魂である真桜様ご本人に見せている。ご本人のご希望で専属メイドを決めたいそうなのでな」

「へ……?」


 私はへたりとその場に座り込んでしまいました……。

 もはや面接ではあり得ない失態です……。


「真桜様は『絶対にあなたを幸せにしてみせる』と仰っているそうだ。大層お気に召しているようで、よかったな」


 そんな人生で一度は言われてみたい格好いい台詞を、まだ生まれてすらいない御方から言われるなんて、誰が想像できたでしょうか……?


「えっ……?ということは私は……」

「真桜様ご本人のご指名です。明日から聖女院にいらしてください。明日から一週間で完璧な専属メイドになるための教育を行いますので」


 ム、ムリムリムリのすけですっ……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ