閑話71 影とは
【セラフィー視点】
「神流……!無事かっ!」
「はい、お父様……」
私は、助かったのだろうか……?
何かとてつもなくひどいことを考えていたような気がする。
「あなた……」
「皆操られていたのだ。大事ないか?」
そうだ。
私は迦流羅様を助けて、それから……。
段々と鮮明になる
お、お義母様をこ、殺そうだなんて考えるなんて……!
乗っ取られていたとはいえ、おぞましい……。
お義母様は「セフィーなら、何にでもなれるよ!」と太鼓判を押してくれたが、「何にでもなれる」という状態にまでなるには、とても険しい道のりだということは分かっている。
お義母様のお言葉を思い出す。
『催婬には異性であることの他にもう二つ対策方法があるんです。ひとつはステータスの魔法防御が相手の知力を上回っていることです。インキュバスの知力は750。これ以上の魔法防御を持っていれば、そもそも催婬は効きません』
本来、もっと私が強ければ操られることもなかった。
忍様と神流様に追い付いて強くなれたと思ったが、まだまだ私は弱いということをすぐに思い知らされることになるのだった。
あれから樹村様が意識を戻し、王家はお帰りになったそうだ。
お義母様は元凶であるインキュバスを討伐したどころか、国全部を丸ごと浄化なさったらしい。
その結果魔力が尽き、お義母様は倒れてしまった。
「私が、お義母様に付いていくだなんて言わなければ……」
「お言葉ですが」
忍様が私の言葉を遮る。
「聖女様にとって、私たち民は粒ほどの存在です。ですから、迷惑だなんて思っておられません。むしろ、前に進もうとするセラフィー様を応援しようとしていたのだと思います」
「それでも、守られるだけの関係なのは嫌なんです……」
「セラフィー様、これは提案なのですが、今度私達影とともに訓練に行きませんか?」
聞けば、聖影はお義母様によって提言された迷宮によるレベルアップを知り、予てよりやろうとはしていたが危険だということもあり渋っていたらしい。
勝手に知り得たお義母様のお知恵を勝手に共有するのは、いかがなものだろうか……?
「迷宮の危険さをご存じであらせられるセラフィー様がいらっしゃるのは心強いですから。何より、それはセラフィー様ご自身のお望みでもあるかと存じますが」
「……?」
「獏様の一体化を臨画なさるためにレベルをお上げになられているのでしょう?」
「……っ、どうしてそれを……」
「それを知りたければ、影になることです」
「……。訓練の件は、分かりました」
この人は、どこまで私のことを知っているのだろうか?
私は「影」を魅力的な組織だと思っていたのだが、実はとんでもない集団なのかもしれないと感じるのだった。




