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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第32章 百花繚乱
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閑話70 余所見

【エルーシア視点】

「ん……」


 ここは……?


「目が覚めたか」

「っ!?シ、シルヴィア様っ!?」


 ここは……聖女院の医務室……。

 私、どうしてここにいるのでしょうか?


 確か、四天王インキュバスと闘っていて、それから――どうしたのでしょうか……?


「なんだか、とても不思議な夢を見ていました……」

「大方、奥方様が貴様に愛の言葉でも囁きかけていたのだろう?」

「っ!?」


 ど、どうして夢の内容を……!?


 ですが、シルヴィア様が思っているよりずっと過激な夢でした。

 ソラ様があられもない姿で、私に言い寄ってこられて、そのうえ……までするという……とても不思議な夢でした。

 わ、私……え、えっちになってしまったのでしょうか……?


「全く、羨ましいことだな……」


 そこで下半身がもぞもぞっとすると、被っていた毛布から、小さな存在が顔を出しました。


「エルーシアさんっ!大丈夫ですかっ!」

「きゃあっ!」


 不思議な夢のせいで、また変な気分になって下半身がむずむずしだしたのかと勘違いしまいました……。

 とても恥ずかしいです……。


「わ、私は大丈夫ですよ……」

「よ、よかったぁ……!エルーシアさん、インキュバスの暗黒催淫(ダーク・ヒプノシス)によって、操られていたんですよぉっ!」

「そ、そうです!私……」


 私はインキュバスに操られて……。

 一瞬意識が戻ったとき、私の目の前には手が氷漬けになったソラ様が私の頬を撫で微笑みかけてくださっていたのを思い出しました。

 それは私が操られ、それをソラ様が身を挺して止めてくださったということに他なりません。


「わ、私は……なんてことをっ……!?」


 よりによって、一番敬愛する御方を殺そうとするなんて……!


 隣のベッドを見ると、ソラ様が横になっておられました。


「ソラ様っ!」


 そのお手を取ると、とても冷たくなっていることに気がつきました。


「そ、そんなっ……!」


 まだ、いただいた恩の感謝も伝えられていないのに……。

 まだ、いただいた恩の一割も返せていないのに……。

 まだ、想いも伝えられていないのに……!


「こんな……こんなお別れなんてっ……!」


 私のせいです……。

 私が操られたせいで、きっとソラ様を……。


「何か勘違いしているようだが、奥方様はご健在だ」

「勝手に殺さないでくださいよぉ……」

「……へぇっ!?」


 びっくりしすぎて、とてつもなく情けない声を出してしまいました……。

 でもソラ様のご無事に比べれば、こんなもの些細なものです。


「す、すみません……」


 溢れてきた涙を拭い、私はまだこの御方に仕えることができるのだと、嬉しくなりました。


「奥方様は、梛の国全土に広がってしまった暗黒催淫(ダーク・ヒプノシス)を全て浄化し、魔力を使い果たして倒れたそうだ」

「……そう、だったのですね……」


 またソラ様は、御身を投げ出して私達を助けてくださいました。


 私はソラ様に「強くなったね」なんて褒められて、調子に乗っていたのかもしれません……。

 「どこまでもついていく」などと大層なことを掲げておいて、やっていることはソラ様の足を引っ張ることばかり。


「私達は、弱いな……」

「はい……」

「はいぃ……」


 ソラ様は、魔法防御が高ければインキュバスの催婬にはかからないと仰っていました。

 中途半端に強くなったことが、かえってソラ様の足を引っ張ってしまうことになるなんて……。


「もっと、強く……なりたいです……」


 誰よりも強く、誰よりも可憐で、誰よりも優しくて、誰よりも聡明で、颯爽と人々を救う姿は誰よりも格好いい。

 この御方の"お隣に立つ"ということが、どれだけ大変なことなのか、よく分かりました。


 私はそのささやかな願いを叶えるべく、もう余所見はしないと誓うのでした。

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