表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男の大聖女さま!?  作者: たなか
第32章 百花繚乱
323/1285

第254話 逆心

「エルーシアさんっ!!正気に戻ってくださいっ!!」

「駄目だよ、操られてる」

「それならあなたにっ!ディバインレーザーっ!」

「……アイスバリア」


 ステラちゃんが操っている本体であるインキュバスを攻撃すると、エルーちゃんがインキュバスの盾となって防いできた。


「そ、そんなぁっ!?」


 レベルがカンストしたエルーちゃん相手となると、さすがの僕も気が抜けない……。


「来るよ!」

凍てつく恐怖(フローズン・フィアー)!」

「きゃぁっ!?」

聖なる壁(ホーリーウォール)!」


 向かってくる暗黒の吹雪を厚い光の壁で防ぐ。

 当たり前のように闇属性と水属性の合成上級魔法を放ってくる。

 闇魔法で操られている影響で、操られている間は闇魔法が使える。

 つまり、いつものエルーちゃんより使える魔法の幅が増えているということだ。


『ど、どうしてワタクシの暗黒催淫(ダーク・ヒプノシス)が効かないのです……!?「乙女の秘密」、アナタは一体何者ですかッ……!?』


 なるほど、闇商人を通じて外界の情報を得ていたんだ……。

 僕たちの冒険者としての情報はばれていると思っておいていいだろう。


 驚いているようだが、それよりもエルーちゃんが先だ。

 傷つけるわけにもいかないから、攻撃魔法はまずい。

 でも回復や付与魔法を撃つにも、まずは近づかないと当てようがない。




 僕は俊歩で近づくと、エルーちゃんは『暗黒濁流(ダーク・ウォーターズ)』『凍てつく恐怖(フローズン・フィアー)』を交互に連打してくる。


「私もっ!聖なる壁(ホーリーウォール)っ!」


 ステラちゃんが聖なる壁で防いでくれた。


 ん……?

 何かがおかしい。


 僕はその違和感の理由に気付いた時、ステラちゃんの聖なる壁が破れ、僕たちは吹き飛んだ。


「きゃあっ!?」

「くっ!?」


 僕は吹き飛ばされたステラちゃんのクッションになるように抱えて、衝撃を和らげるべく地面を転がってから受け身をとる。


「エルーシアさんっ!……そんな……どうしちゃったんですかぁっ……!」

『クハハハハッ!全員を操れなかったのは残念ですが、運はワタクシに味方してくれたようですねッ!まさか、『水の賢者』を拾えるとは!これは思わぬ収穫です!さあ、やってしまえ!』

「ど、どうするんですかっ、師匠ぉっ!!」

「大丈夫。今のエルーちゃんならどうにかなるよ」

「何を呑気なっ……」


 『水の賢者』とは決して一人歩きした二つ名ではない。

 将来エルーちゃんは僕と同じステータスまで到達したとき、僕を超える天才魔法使いになると僕は確信している。

 でもそれは、エルーちゃんが水の現象について詳しく、そして魔法を使いこなす才能が僕よりもあるからだ。


「どうやら、催淫は操っている人の思考を奪ってしまうせいで、操っている人の戦闘スタイルまでは真似できず、単調な攻撃になっている。今のエルーちゃんは操られているだけのただの強い魔法使いというわけだよ」


 僕は飛び上がり天井まで跳躍すると、斜めにリフレクトバリアを張り、それを強く蹴飛ばす。

 すると天井からレーザー光線のようなスピードでエルーちゃんに向かう。

 これが俊敏999の跳躍を二倍にしたスピードだ。


「っ!?氷の大礫(アイス・グラベル)!」


 とっさの異常事態には対応できないのも、操っているインキュバスがその思考を奪ってしまっているからだ。

 普段のエルーちゃんなら、これくらい対処できないわけがない。


 僕は霊刀鬼丸を取り出す。


「――霊気解放――、霊刀六の舞――月殺し――」


 一点突きで大礫をその魔法陣ごと破壊すると、僕はそのままエルーちゃんに突っ込んでその頭をつかむ。


「ハイヒール!」

「グヴヴッ!?」

「目を覚まして、エルーちゃん」

凍てつく恐怖(フローズン・フィアー)……」


 僕はピキピキピキと音を立てて、僕の右腕が黒く凍っていく。


 操られて少し時間が経ったせいで、インキュバスの魔力が全身に回ってしまっているようだ。


 威力が高いせいか、冷たくて痛い。

 今にも凍え死んでしまいそうだ。

 でも、操られているエルーちゃんだって辛いはずだ。

 こんなことで弱音を吐いているわけにはいかない!


「ぐぅっ……もうちょいっ!」

暗黒濁(ダーク・ウォー)っ……」


 その時、魔法陣は途中で瓦解し、エルーちゃんはふっと力が抜けて倒れこむ。

 僕はそれを凍り付いた右腕で支えた。


「ソラ……様……わ、たし……」

「おかえり、エルーちゃん」


 僕が大丈夫という風に微笑みかけると、エルーちゃんは僕の腕の中で意識を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ