第248話 落下
「侵入者を探せ!」
外は衛兵がたくさん蔓延っていた。
「見つかったか?」
「まだだ……。侵入者はおろか、樹村卿すら見つからないぞ!状況はどうなっている!?」
宮殿を出てから、僕は裏道に隠れる。
「動きづらいですね……」
「私が諫めてきます。私は足手まといなので、一人で大丈夫です」
幸い守衛は男性が多いためインキュバスの支配は効いていないようだ。
僕たちが指名手配されているのは、おそらく操られていた樹村さんが誰の侵入も許すなと指示していたからだろう。
「……わかりました。絶対に、生きていてくださいね、樹村さん。簡易ワープスクロールと聖印を渡しておきますから」
「ふっ……過保護ですね、ソラ様は。皆に好かれるのも頷けます」
そういうと、樹村さんは表に出てくる。
「待ちなさい、そこの者達!私はここにいます!」
「樹村卿!!探しましたよ!」
「皆さん、これを見てください」
「それはっ!?せ、聖印!?」
「聖女様の命により、貴殿たちにお願いがある。今しがた指名手配されていたシエラ殿の指名手配を解除せよ。彼女は聖女様の味方である」
「な、なんと!?おい、急ぎ指名手配を解除せよ!」
「「はっ!」」
……もう大丈夫そうか。
僕は一応拘束される可能性もないとはいえなかったので、その場を離れておいた。
「それで、インキュバスはどちらに……?」
「ああ、この下だよ」
「し、下……ですか?」
「うん。闇魔法の糸は下に伸びていた。この地下に何かあるはず……」
「ということはまずは、地下を探さないと、ですねっ!」
「いや、それには及ばないよ」
位置については大体おおよそわかっているから、直接行くだけだ。
『――現し世の万物を覆滅せし神よ、今ひと度吾に力を貸し与えたまえ――』
取り出した「大精霊の大杖」の翡翠の水晶が光を解き放つ。
『――ホーリーデリート――』
細く天から地の底まで一直線に縦に伸びる光が、すべての土壌を消し去る。
そして足元がなくなった僕たちは、そのまま真っ逆さまに地の底へと落ちてゆく。
「「きゃあああああああああああっ!?!?」」
『――妖精の森を照らす壮麗なる聖獣よ、今ひと度吾に力を貸し与えたまえ――』
地下がどれくらいのところにあるか分からないし、身体強化した僕ならこの自由落下でも死なないかもしれないけど、流石に重症だろう。
『――顕現せよ、聖獣プシュケー――』
空中で詠唱をし、地に突く前にプシーを召喚する。
プシーは風のクッションをつくってふわりふわりと浮かせてくれた。
「あふんっ!」
無事地下洞窟まで堀り抜けたようだ。
「ありがとう、プシー」
僕はプシーを撫でると、パサパサと僕の周りを飛び回る。
「はあっ、はあっ、シエラ様っ!だから事前に説明をとっ!」
「し、師匠が頭おかしいことをすっかり忘れていました……」
僕の弟子になるとみんな毒を吐いてくるようになるのは悲しいけど、今はそんなことを言っている場合ではない。
「みんなの命がかかってるんだ。ほら休んでいる暇はないからね、行くよ」




