第244話 帰属
ワープ陣を抜けた先は、瓦屋根の建ち並ぶまさに都といった街並み。
別に京の都に住んでいたわけではないというのに、実際にこの「日本らしさ」を目の当たりにすると「懐かしくて、落ち着く」という感情に到るのは、帰属意識の一種なのだろうか?
日本に住んでいれば、修学旅行などで一度は行くだろう。
この帰属意識は、そのときに植え付けられでもしているのだろうか?
それとも僕たちの祖先が体験していたことが先祖返りして懐かしがっているからなのだろうか?
都に住んでいた人からしたら、他の地域の人から勝手に「日本らしさ」という曖昧な雰囲気を地元と結びつけられ勝手に懐かしまれているのだから、きっと呆れかえられているのかもしれない。
でもそんな謎の帰属意識のおかげで、僕はこの世界に来て初めて来た場所の景色を、何事もなく受け入れることが出来る。
もちろんゲームでは俯瞰視点で何度も見ているけど、実際に見るのは決してゲームのような俯瞰視点ではなく下からの視点だからね。
ゲームはエリス様が作っていると聞いていたけど、なるほど。
ゲームの視点がいつも空からみるような俯瞰視点になっているのは、エリス様視点でみていたこの世界をゲームの世界に投影したからだったんだ。
僕は一応変装のためにシエラの金髪ウィッグを被って、召喚しておいた獏に全員『一体化』をかけ透明にしてもらう。
「ここからは隠密行動です。言葉は極力発さず、音も出さないようにしてください。お二人は場所の案内を」
「はい。こちらです」
神流さんに続いて裏道を抜けていく。
聖国はレンガ造り、北国は石造りの家が多いので、やはり木造で瓦屋根の家は前世ぶりで新鮮だ。
「こちらです」
宮殿へと辿り着いた僕たちは、中門前まで来ることが出来た。
「ここからは厳重な警備がなされており、穴をつくのは厳しいです。どうなさいますか?」
警備は端に二人。
「強行突破しかないね。道を作るから、先に入って」
「道を作るって……」
僕はみんなから離れて門に向かってディバインレーザーを放つ。
「っ!?貴様!何者だっ!?」
魔法を放つ間、一体化は解除されてしまう。
木っ端微塵になった門を見つつ、光の束縛で二人を拘束する。
「すみません。少しの間、失礼します」
「ぐっ……」
昏倒を放とうとしたとき、映像魔法の投影がされ、僕の顔が目の前に写る。
「っ……!昏倒」
しまった、順番が逆だった……。
一仕事させてしまった。
慌てて昏倒させるが、もう遅かった。
「外門番が倒された!侵入者だ!」
「閉じるぞ!」
内側にいた二人の門番が膝をついて地に両手を付ける。
「「石城門!」」
二人の土属性の合成魔法はまるで飛び出す絵本のような動きで、地面から這い出てくる二つの石の扉が起き上がりながら閉じていく。
「シエラ様、早くっ!!」
閉じていく扉に身体強化で滑り込もうとしたが、とてもじゃないけど間に合いそうにない。
「ディバインレーザー」
僕はそのど真ん中を極太レーザーでそれを貫き、そのまま中に侵入する。
その際にまた映像魔法の投影がされた。
侵入者である僕の目の前にも投影されていることを見ると、おそらくこの近辺一体の無差別な人に映像の内容が共有されているということだ。
いわばこれは、指名手配のようなもの。
「我等の城壁が……!?」
「ごめんなさい……昏倒」
内側にいた二人も気絶させる。
「どこにいった!?」
「クソッ!見失ったぞ!」
「だが、一瞬犯人のうちの一人は割れている!」
「探し出せ!」




