第242話 招集
「魔王、四天王……!?」
「まだ可能性があるというだけですよ。仮に本当に四天王だったとしても、具体的に四天王のだれかということはわからないですし……」
正直四天王のいずれかがやっていてもおかしくはない。
消去法でそのうちの一体では絶対にないとわかるけど、残りの三体のうちのどれかはわからない。
読みはあるけど、正直まだ不確定要素が多すぎる。
「勘違いならそれでいいですが、そうでなかった場合、あなたたちをかばって戦うのは少し難しいです」
正直僕が一人で倒しに行くなら死ぬことはまずないけど、二人が一緒だとそうはいかない。
「足手まとい、なのですね……」
「こういうことはあまり言いたくはないですが、迷宮の魔物と違って相手は悪意のある魔物ですから」
「……」
しゅんとする神流さん。
真っ直ぐなだけに、表情にも出やすい質なのだろう。
「でしたら、私はいいので神流だけでも連れて行ってください」
「し、忍……!?」
「神流の家族は父親も含めほぼ全員がまだ梛の国にいます。心配する気持ちに関しては私たちより強いはずなので、そちらを優先していただきたいです」
「なっ!?そんなこと言ったら杏さんと忍だって、一族の一部は梛の国にいるじゃないっ!」
あんなに仲の悪そうな二人だったのに、こういう時には相手のことを尊重できるあたり、やっぱりこちらの人たちは人が出来ていると実感する。
「いや別に、連れて行かないとは言っていませんよ?」
「「……えっ?」」
「二人とも連れていくつもりです」
「本当ですか!?」
「ですが、足手まといになるのでしたら……」
「情報は必要ですしね。但し、今回は戦わないことがついていく条件です。ですので、私の信用のおける人を二人、追加で連れていきます」
そう言って一人目に会いに行ったのは、エルーちゃん。
エルーちゃんは寮の共有スペースでフローリアさんとセフィーと談笑していた。
「わ、私……ですか?」
首をかしげるエルーちゃんも可愛らしい。
「うん。単純に強い人じゃないと、四天王だったときに対処できないなんてことになりかねないからね」
レベルはカンストしているし、能力としては申し分ない。
それに、もう一人のサポートには適任だろう。
「お義母様、私もついていっては駄目でしょうか?」
「……おかあさま」
今更そこに突っ込む人がいなかったから感覚が麻痺していたよ……。
忍さんが何か物申したそうだったけど、表情からしてしょうもなさそうだったので無視した。
なんというか、メルヴィナさんみがあるんだよな、忍さんって……。
これでも僕の親族基準だと、大分まともな方なんだよね……。
「うーん……まあ、セフィーなら大丈夫か。確かに四天王なら経験値多いだろうし。でも、危なくなったら真っ先に逃げるんだよ」
「お義母様を差し置いて逃亡なんて……」
「守らなかったら連れていかないよ」
「わ、わかりました!守りますから……」
多少鍛えたとはいえ危険な場所。
嫌われようともここは心を鬼にしなければ。
「それで、残りのお一方は?」
「うーんと……多分、そろそろですかね」
「そろそろ……?」
僕はおもむろにアイテムボックスからワープ陣を取り出すと、地面に敷く。
「それは、ワープ陣……。約束でもしていらっしゃるのですか?」
「まあ見てて」
しばらく待っていると、やがて陣が光り輝く。
そこから出てきたのは、聖印がついていないベレー帽を被った少女の姿だった。
「師匠っ!!お久しぶりですっ!」




