第216話 旧姓
「嶺……」
それはお祖母ちゃんの名字。
そしてお父さんの旧姓。
……いや、大丈夫。
「私と……血が繋がっているということですか?」
「半分は、そうだと思います」
「半分は……?」
さっきも半分はって言っていたけど、ここでも半分なの?
「まったく、少しは労ってほしいわ……」
「サクラさん!」
カーラさんが車椅子に乗せたサクラさんとともにやってきた。
「サクラ、すまない。これ以上は隠すのは無理だったから話してしまった……」
「いいわ。ソラちゃんには親戚と合わせるのを来年の楽しみにしてほしかったのだけれど」
「えぇ……」
まあサクラさんだもんね……。
サプライズ好きなのはもう慣れてはきたけどさ……。
出会い方としては最悪だよ、本当に。
「ひとまず、その連中を連れて私の部屋に来て貰える?」
僕はサクラさんを押すカーラさんについてサクラさんの部屋へ向かった。
せっせと運ぶのも大変なので、ワープ陣を置いて一気に転送することにした。
「それで、どういうことなんですか?」
「聞きたいのはこっちもなんだけどね……」
「まず、さっき『半分は血が繋がっている』と言ったことから説明してもらえませんか?」
僕はアレンさんに訊ねる。
「初代聖女様と繋がりがあるのは両家とも同じです。初代嶺楓様はこの世界で実子を持たれませんでした。しかし、楓様は偶然出会った獣人の孤児たちを見て、それを救うために彼らを当時の聖女院に招き入れ、食事をふるまい教育をさせたのです。そしてその子供たちに養子として同じ名字をお与えになりました」
「養子……」
半分って、そういうこと……?
いや、血自体は繋がっているわけじゃないよね。
神流さんは顔を確認すると、確かに獣人だった。
「嶺神流さん含む彼女達は自らのことを初代様から助けられた『本家』の血筋だと主張するようになります」
本家……?
「分家が出てくるということですか?」
「それから幾代も過ぎ第92代、事態は大きく変わります」
ええと……92代って誰だっけ……?
70代以降はまだ予習もしてないから分かんないんだよな……。
後ろに歴代名前一覧とか、索引くらい載せて欲しいよね。
今度学園長に提案してみようかな……?
「本家の血筋は永らく一つの流派として大きくなりましたが、この代を境に流派が二つに分かれてしまったのです」
「ど、どうしてですか?」
「ええと……ソラ様のご親戚が聖女になりましたよね?」
「………………へっ?」
だ、誰……?
まさか、姉ではないだろうし……。
「第92代聖女、嶺梓様。ソラ様の従姉にあたるお方です」
「梓……お姉ちゃん……!?」




