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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第27章 鸞翔鳳集
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第211話 弱味

「ソラ様!」


 続いてやってきたのは、フィストリア王家だ。


「先程ぶりですね」

「ええ。サクラ様もごきげんよう」

「「!?」」

「貴女が噂の天才王女ね」


「……」

「な、何……?」

「エレノアさんが猫被ってる……」


 こんなの、フィストリア王城に侵入したとき以来だ……。


「なっ、ソラ()まで!?全く、みんなして失礼だな……!」


 家族にも言われたのだろうか。

 今日は外向きの顔のようだ。


「そうしているほうがらしいですよ、エレノアさんは」

「随分と親しそうじゃない……?」

「ええ、親友ですから」

「そうなのね」


 エレノアさんがそう言ってくれるのは嬉しいが、弱みがある手前、僕のほうから親友と言うのには少し躊躇いがあった。


「アレクシアさんもお久しぶりです。あれからいかがですか?」

「リタの余罪は多く、貴族の中には協力者もいたらしく……。王家としてはまだまだ課題も残しています。……これまで5年間も野ざらしにしてしまった罰でしょう」

「私も気付けなくて申し訳なかったわ」

「そんな、もったいなきお言葉……」


 アレクシアさんの反応を見たサクラさんが思わずぎょっとした。


「どうしたんです、サクラさん?」

「……なんだかアレクシア、変わった?」

「そうなんですか?」


 僕はもう会ったときからこうだった気がするけど……。


「以前はこんなに聖女信仰強くなかったというか、むしろ私には内心敵意向き出しだったはずだけど……」

「申し訳ございません。あの時は身内(リタ)のことで手一杯でしたから。リタは当時リタの娘だと思っていたエレノアを擁立し、上皇になる腹積もりでした。私はちっぽけな理由で我が子を隠し通してきたのですよ……」

「リタと切り離す名目だったとはいえ、僕を聖女学園に通わせようとしたことには感謝しているよ」

「全く、そういう後ろ楯こそ、私達を頼ればいいのに……」


 サクラさんに僕も完全に同意だ。


「聖女と鋏は使いよう、ですよ」

「……流石に聖女を馬鹿に例えるのはどうかと思いますよ、ソラ様」

「いや、ソラ様なら本気でそう思ってると思う……」


 そりゃあそうだ。

 こんなの、使ってなんぼだもん。


「そういえばソラ様、お耳にいれておきたいことが」


 そう言うと、アレクシアさんは僕の耳元でぼそりと息を吹き掛けるように呟く。


「……今年の会議、東の国にはお気をつけください」

「ふぁあんっ!?」


 どうして僕はいつもこうなんだ……。


「耳はやめてぇっ……」


 へたりこむ僕に呆気に取られる皆。


「ちょっと!ソラ君は耳が超絶弱いんだから気をつけたまえよ!」

「そ、そうでしたか!大変失礼しました……」


 ヤバイヤバイヤバイ。

 一番見つかってはいけない人に見つかってしまった……。


「ふぅん……」


 サクラさんなんかに見つかったら、弄られるに決まってるっ……!




 断罪の時を待ち身構えていたが、なぜか音沙汰がない。


「って、何してるんですか?」


 目を開けると、何故かサクラさんはアレンさんの手首をつねっていた。


「牽制」

「牽制って……。流石にアレンさんは私に欲情したりはしないでしょう?」

「…………」

「…………」


 えっ、なんで無言なの?


「ソラ様、少しは自分の魅力に気付くべきだよ」


 イヤイヤ、アレンサンハコモチノダンセイ。

 ボクトオナジセイベツ……。

 ソンナコトハアリエナイ……。


 ……ナイヨネ?


 一向に首を縦に振ってくれないアレンさんに、一層と手首をつねる力を強めるサクラさん。


 もう僕には収拾をつけられないよ……。

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