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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第23章 奇策妙計
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閑話51 御台臨

(たちばな)涼花(りょうか)視点】

<またもや涼花選手の勝利!!今年も『紺碧(こんぺき)刀姫(かたなひめ)』が優勝を勝ち取ってしまうのでしょうか!?>


 ミアの実況をよそに、私は敗者の言葉に耳を傾ける。


「負けた……。涼花様、強い」

「ソーニャ君もな。ダガーは刀とは相性が悪いというのに、それを俊敏さで補う戦闘スタイルは流石冒険者といったところか」

「そっくりそのまま返す」


 最近冒険者家業にはご無沙汰だったから、忘れてしまっていた。


「すまない。気に障ったか?」

「平気」


 握手をした後、舞台を捌けるとソラ様が待っている。


 透明で何も見えないが、きっとそこにいらっしゃる。

 この大会を台無しにしようとした輩には同情の余地はないが、ソラ様が迎えてくださるこの状況には、凄く感謝していた。


 ご尊顔が見えてしまえば、また私はだらしない顔になってしまうだろう。

 だから私には、「向こうから一方的に見られている」今の関係くらいがちょうどいい。


「ご苦労」


 しかし、透明な空間から聞こえてきた声は、予想していたよりももっと低い声だった。

 顔の透明化が解除されると、そこに現れた天使の輪っかに、私は思わずぞっとしてしまう。


「ど、どうしてあなた様が……」


 いや、大天使様が動かれる理由なんてひとつしかないだろう。

 それは主であるエリス様がお決めになること。


「『大きくなったわね、涼花……』」


 急にお淑やかな女性の声がシルヴィア様と重なって聞こえる。

 シルヴィア様とは母上が生前の時に数回会ったことがあるが、これほど高い声ではなかった。


 私は思わず片膝をつき、頭を垂れる。


「お初にお目にかかります、エリス様」

「『アオイを助けられなかったこと、申し訳なく思っているわ……』」

「そんな、勿体なきお言葉……」


 否定しなかったということは、そういうことのようだ。

 それを察したソーニャ君も隣で頭を垂れる。

 まさか生きているうちに神様の玉音(お声)を拝聴できるとは思わなかった。


「『ああ、そういうのはやめて頂戴』。今は奥方様の代わりを勤めているに過ぎない。我々のことより、試合のことに集中したまえ」


 奥方様……。

 そうだ。

 ソラ様は本来、エリス様が恋に落ちたお相手。

 私なんかがどうこうしていい相手ではないのだ。


「畏まりました」


 この想いだけは、このお方に悟られるわけにはいかない……。

 神様との初対面は、心臓がバクバクとしていてはち切れそうだった。

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