第146話 送別
それから残り2日、ソフィア王女、ステラさん、エルーちゃんと僕の4人で迷宮を周回した。
毎度ソフィア王女の送り迎えをしていたんだけど、迎えにいくたびにファルス王とリリアンナ王妃に「お借りします」と告げていたためにソフィア王女は「子供の遠足じゃないのですから」とふてくされていた。
まあでも報連相は大事だ。
……いや、僕が言えた義理ではないんだけれども。
今日はステラさんとのお別れの日だ。
「忘れ物はありませんか?お弁当は持ちましたか?」
「もうっ!子供じゃないんですよっ!」
ぽんぽんと肩を叩いたあと、抱きつく。
「……心配で仕方ないんですよ、諦めて抱かれてください、ステラさん」
「師匠……もう弟子なんですから、さん付けはやめてくださいっ」
「じゃあ、ステラちゃんで」
「はいっ!」
しばらく抱擁を交わしたあと、僕はアイテムボックスからアイテムをいくつか分け与えることにした。
「まずはアイテム袋。この中に初級薬から最上級薬までと秘薬が入れられるだけ入れておいたから。使ってね」
「なっ!?そんなに貰えませんよっ!」
「弟子なんだから遠慮しないの!ステラちゃんが倒れたら悲しいし、私の代わりにこれで守れるのなら守ってあげて」
「は、はいっ!」
そして次に出すのは『患グラス』。
「こ、これはっ……!?」
「この『患グラス』をかけると、人の病気や状態異常が分かるの。それだけじゃなく、疫病が発生しているかどうかまでわかるよ」
「疫病っ……」
「今のあなたならもう大丈夫。今度はあなたが守る番」
「は、はいっ!」
とびきりの笑顔を見せてくれた。
「あと、聖印をつけたベレー帽を渡しておくね。これで私の弟子である証になると思うから」
「わあぁ!素敵な帽子ですっ!」
「そして最後に、ワープ陣」
「わ、ワープ陣までっ……」
「もしステラちゃんだけじゃどうしようもなくなったら、気軽に呼んでね」
「そんな、ソラ様を気軽に呼べるわけ……」
「弟子だからいいの!もう、遠慮するなってさっき言ったでしょう?ステラちゃんに会えるだけで私は嬉しいんだから、気軽にワープ陣で会いに来て、私に近況を聞かせてよね。たいてい聖女院か聖女学園の朱雀寮にいると思うから。あ、でもソラがシエラ・シュライヒなことは寮の人達以外には隠しているから、そこだけは気をつけてね」
「し、師匠ぉ~っ!」
ステラちゃんの方から先に泣いてしまわれると、こっちが泣けないじゃないか。
「それじゃあ、元気でね!」
「師匠もお気をつけてっ!」
「ワープ陣から迷宮の入口に行けるから、定期的に回るんだよ?さもないと今度抜き打ちチェックするからね」
「も、もう迷宮は勘弁してくださいぃ~!」
ステラちゃんは逃げるように去っていった。
「また、会えるかな?」
「ええ。ですからそんなに悲しい顔なさらないでください」
こうして僕の初めての北の国遠征は幕を閉じたのだった。




