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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第14章 報恩謝徳
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第104話 成果

「……フレイマーオークキング75体、フレイムオークの256体の討伐を確認しました……」


 昨日と同じようにギルドマスターのフォードさんの部屋へ案内されて報告をする。

 僕達の秘匿を守って毎回こうしてもらえることには感謝している。


「計75回の迷宮攻略だって?嘘じゃないんだよな……?」

「は、はい……。水晶の討伐記録は誤魔化せませんから……」

「……」


 フォードさんはそれを聞くと頭を抱えて黙り込んでしまった。


「いくらエクストラランクの付き添いとはいえ、Sランクの依頼を75回も達成するような冒険者に何も与えないのはギルドとしての外聞に関わる……」

「や、ややこしくさせてすみません……」


 僕のせいでめんどくさくさせてしまった……。


「よしメイドの嬢ちゃん、俺と勝負しろ!」

「「え、えええええ!?」」





 ギルドの奥には訓練場がいくつもあり、僕達はその中でも要人用の部屋に案内された。

 大きな斧を持つフォードさん。


「いいか?ルールは単純だ。お互いにこの円から出るか、降参するか戦闘不能になったら敗けだ。おまえさんが勝ったら俺の権限でお前さんをSランク冒険者にする」

「ギルマスは現役Sランク冒険者なんですよ」

「そ、そんな!?む、無理ですよ……Aランクの先生ですらやっとのことで勝ったのですから……」

「いや、エルーちゃんはやるべきだと思う」

「ソラ様まで!?」


 今のエルーちゃんは急に成長したから、自分の実力を知ることができていない。

 ()()()を覚えるためにも、やらせておくべきだと思う。


「今のエルーちゃんはレベルが大幅に上がったから、自分の感覚を身に付けるためにもやった方がいいよ。お互いに怪我しても治すから……」

「そいつぁありがてぇ。じゃ、いくぞ!」


 強く地面を蹴ると一直線にエルーちゃんの胴を狙う。

 エルーちゃんが障壁を張る。


「ふん!」

「くっ……」


 強化された斧がぶつかって弾いたが、障壁も剥がれてしまう。

 フォードさんが弾かれた斧を振り下ろすと、エルーちゃんはよけてかわした。


「これがSランク……どうしたら……っ!」


 またしても踏み込んでくるフォードさんを障壁で防ぐも、また割られてしまう。


「どうした!?防戦一方か?」

「……はい、……はい!」


 ……なるほど。

 ティスから作戦……もとい水魔法を教えてもらっているようだ。


 次の攻撃に合わせて、エルーちゃんが動きを変え始めた。


氷の盾(アイス・シールド)!」


 今度は斧をがっちりと止めた。

 エルーちゃんの魔力の障壁を壊せても、テティスの加護で水属性の威力が二倍になった氷の盾は簡単には壊れない。


氷の床(フローズン・フロア)


 そしてきちんと()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことに気づいて、対策を立ててくる。


「うおおっと!」


 円内の床を全てツルツルに凍らせ、地面を蹴ることを許さない。


氷の槍(アイス・ニードル)!」


 そのまま攻撃に転じる。


「じゃかあしい!」


 斧に雷を纏わせて氷の槍を弾き返すと、そのまま氷の張った地面をその下の地面もろとも雷の斧で叩き割った。


「なんという脳筋スタイル……」


 だがエルーちゃんは先回りして考えていたようだ。


大洪水(グレート・フラッド)!」


 フォードさんが叩き割った穴を水で埋めつくし、身動きを取れなくすると、そのまま大寒波(コールド・ウェーブ)で水を凍らせてしまった。


「……降参だ。うぇっくしっ!」


 氷で身動きの取れなくなったフォードさんが手を上げた。





「さ、手をかざして」




 名前:エルーシア ランク:S

 種族:人間族 性別:女

 ジョブ:魔法使い LV.55/100

 体力:205/205 魔力:576/620

 攻撃:148

 防御:165

 知力:282

 魔防:230

 器用:282

 俊敏:176


 加護

  聖獣テティスの加護




「こ、これは……!?」


 魔力が爆上がりしているのはグミのせいだ。


「Sランクに上がったからには、二つ名が必要だな」

「そうなんですか?」

「いや、慣習みたいなもんだ。ほら、アレンが『剣聖』と呼ばれているのもそれだ」


 アレンさん、Sランク冒険者だったんだ……。


「ギルマスは『雷斧(らいふ)』と呼ばれているんですよ」

「……そうだな……『水の賢者』にしよう」

「えええええ!?だ、だめです!か、考え直してください!」

「いいや!あんなもん見せられて、弱っちい名前なんてつけらんねぇよ。それに二つ名は名前を隠すための隠れ蓑になってくれるだろう。おまえさん達は名前を隠したいんだろう?ならおとなしく受け入れるこったな!」

「そんなぁ……」




「なんだかさんざんな目に逢った気がします……」


 ギルドを出て聖女院へ歩いて帰る。


「お疲れ様。でもまだまだエルーちゃんは、これから伸びるよ」

「ま、まだ伸ばすおつもりですか……?」

「勿論!なんたって、私の自慢の一番弟子だから!」


 僕の『最強のメイドさん育成計画』はまだ始まったばかりだ。

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