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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第100章 晴耕雨讀
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閑話282 ダメ男

【柊凛視点】

「だー!」

『はいエルナ、良い子でちゅねぇ~~!』


 およそ美人が使うとは思えない声域を使って甘やかしている。

 エリちゃんは新たに生まれた双子の娘の(すい)ちゃんと(めい)ちゃんも含め、順番に可愛がる。


「もう、デレデレして。美人が台無しだよ……」


 思わず()から不満も出る。


「天先輩的には、残念美人ってタイプとしてどうなんですか?」

「ソラ様は守備範囲広すぎますからね」

「そ、そんなことないと思うけど……」


 否定しながらもスポブラを外してスカイ君と天花ちゃんにおっぱいをあげてる先輩にママみを感じてしまう。

 雄っぱい授乳だけでもレベル高いのに、ダブル授乳とか異次元の光景すぎて、脳がバグってくる。

 天先輩はもうほぼ女の子だ。


「でもどんなに残念でも美人だし、それに私の命の恩人であることには変わりないから……」

「うわぁ……なんだか、ダメ男に引っ掛かってそのままズルズルと諦められない彼女みたい……」

「『私がいないと駄目なんだから!』って思うまでがセットなんですよね、こういうのって」

「どうして私が彼女側なのさ……?」


 母乳が出るようになっておいて、何を今更……。


『聞こえているわよ?残念美人で悪かったわね……でも美人って言われちゃった……きゃ~!』


 ポジティブが服を着て歩いている。

 無敵か、この女神。


「エリス様もエリス様ですっ!私の子に誰でも彼でも加護を渡すものだから、メイドさん達が最近子供達のお世話が大変だって言ってたよ?」

『誰でも彼でもじゃないわよ!私はソラ君の子供に与えているのよ!……何よ、文句あるの?』

「うーん、まるで金は家に入れているから好きにしていいだろと言うダメ男みたいというか……」

『ちょっ、さっきからどうして私がダメ男側なのよ!』

「……今までの行い?」

「リン様の仰有るように、子種を求めたのは我々ですからね……」

「もう、失礼しちゃうわっ!ねー、スイっ!」

「……」

「ちょっとぉ、何か言いなさいよ~!」


 相変わらず賑やかだ。

 いや、先輩がいるだけで、場の雰囲気が賑やかになる。


「でも、姉以外なら落ち着くのは事実かな……」


 先輩の守備範囲が広いのは、姉という呪物を見ているからか。


「私も将来、子を産むのかな……?」

「不安ですか?」


 ぼそりと話した内容が東子ちゃんにだけ聞かれており、恥ずかしくなる。


「う、うん。ちょっとね……。ちゃんと母親できるのかなって」

「心の持ちようは先人に聞いてみてはいかがですか?」




 ◆◆◆◆◆




「リンっち!どしたのどしたのー!?」

「うぉぅ……陽キャこわい……」


 こういった悩みは一夫多妻では訊ける人が沢山いるのは有難い。

 ソーニャさんを訪ねにテラスまで来ると、アヴリルさんとお茶をしていたらしい。


吸血鬼(ヴァンパイア)ってトマトジュース飲むんじゃないんですか?」

「何その偏見……まぁトマトは好きだケド、別にそればっかりなわけじゃないよ?」

「じゃ、じゃあにんにくが嫌いとか……」

「にんにく料理は美味しいケド、口臭くなるのがちょっとイヤかな~?」

「どちらかというと、一般人の悩みですね……」


 この人と話してると、吸血鬼という概念が崩壊していく……。


「それでそれで?」

「いや、私が用があったのはその、ソーニャさんで……」

「私……?」

「いいからいいから、話しちゃいなよ!」


 話訊いてくれるのか、聞いてくれないのか……。

 陽キャこわい。


「ちゃんと母親できるのかなって、不安になることはないですか?」

「……作りたくなったらで、いい」

「そうですよ。どのみち長生きすることになるのですから。すぐに決めなくても」

「覚悟ができてからでいいんじゃない?」

「ソーニャさんの心の持ちようは、どうなのですか?」

「できるなら、今すぐ襲って、既成事実を作る」

「じゃあ、どうしてしないんですか?」

「ソーニャちゃんはエレノアちゃんの方がプロポーズが先だったから、子ができるまで待ってるんだよ。アタシはもっと後ろだから、待ってるの楽しみなんだよねー」

「エレノア様は永遠の命を手に入れても子作りよりも研究に没頭してそうですからね。このままではずっと待つことになるのでは?」

「エレノア様、先にしていいって。だから次の発情期に、キメる」

「キ、キメるて……」


 皆すごい、私は立派な母親になれるか不安なのに。


「リン様は、何が不安?」

「わ、私はその……母親は私を捨てて、父親からは暴力を受けてきたから……いつか子供が出来たときに同じことをしないか不安なんです」


 ソーニャさんは角砂糖を紅茶に入れて浮かせる遊びをしながら聞いていたが、それをやめると真面目な顔をしてこちらを見つめてきた。


「私は孤児。親の顔を知らない」

「は、はい」

「でも、いい親になれるかは、親は関係ない」

「そーそー!毒親だったのなら、反面教師にするだけでいーの!だって、『アタシなら絶対そんな育て方はしない!』でしょ?」


 その言葉を聞いて、少しだけ心が軽くなった気がした。

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